神の子
神の子
アロマの孫娘たちがその洞窟を見つけたのは、移住から十年目のことだった。彼女の名は「フローラル・スカーレット」と言う。姉のロゼ、妹のメイメイと彼女は後に『フローラ(ル)の三姉妹』と言われるほどの美しい娘たちだった。故郷のルノクスと似ているこの星は、まだまだ未開の地が多く、毎日ムシビトは開墾をつづけている。その中心になっているのは。先年に王ビートラを亡くした『リカーナ』女王と『ナチュズン(ルノクスの三騎士)』そして先日異界から戻って来たマンジュとカブトだった。祖母アロマに代わり三姉妹は女王リカーナに助けられながら美しく成長していた。そんなある日のことだった。
「お姉様、この辺りも随分と花が咲いていますね、でも不思議とムシビトがいないこと」
妹が首を傾げるのも無理は無い、三姉妹が見つけたその洞窟は中央の天井から差し込む日の光で花こそ咲いてはいたが、ほとんどのムシビトは『ヨミの花園』でひっそりと暮らしていたのだ。
ムシビトは『神の子』という『悪魔』を恐れていた。彼らの救世主が現れるまで、長い間その運命をずっと受け入れていた。その運命がダゴスの言う『ラグナの餌』というヨミ族の存在だった。以前の事は解らない、しかしダゴスはこう言った。
「あるとき、『神の子』と名乗る奇妙なものがここへ現れた。そしてひれ伏す我々にこう言った」
「わしをあがめよ、奉れ。創造主タオの第三の子にして、お前たちにも見ることのできる神だ」
ラグナはタオに追放されて以来、偏在する星々を巡っていたのだ。
「なるほどその『神の子』はムシビトの幼子にも見えた。しかしその眼光は赤くこの世のものではなかった『神の子』が乗り移ったムシビトは、その力が体内にあふれた。しかし肝心な体がついて行かない。ムシビトは次々と死んで行く。ラグナはその度に次の宿主を捜す、ラグナの本当の姿はムシビトに寄生する悪魔だった。その正体に気付いたムシビトはやがて次の宿主になるのを恐れ始めた」
そう言うダゴスにザラムはこう反論した。
「ラグナが寄生しても、暫くは体に変化が無い、しかも再生能力が高まり、死ぬ事も無い奴さえいたではないか? 体が屈強ならラグナを扱える、それこそが最強の戦士になれる近道だと信じていたはず」
その『力』を手に入れるために、ダゴス、ザラム、ガラム、ゴラムはヨミ族の頂点を目指し、限りなくムシビトを殺した。そしてついにそれはダゴスが首長となり、決着した。敗れたザラムたちはヨミの戦士として『次元の谷』に葬られたのである。
「それはまやかしだったんだよ、ザラム。お前たちは知るまい、その後に移住してきたたムシビトの話を」
二人の隙をうかがい、大サソリが飛びかかった。しかしダゴスは人型『キュラウエア』となりそのはさみをかわしつつ、話を続けた。




