エピソード2 ザラムとダゴス
ヨミの戦士、黒サソリのザラムとダゴスの戦いは次元の谷で果てしなく続いた。それはヨミ族の暗い歴史を明らかにする。そして同時に初代女王『リカーナ』と『ラグナ』の長い戦いの幕開けにもなっていく。
一騎打ち
「クククッ、ヨミ族一の残虐な戦士と恐れられたお前が、今ではムシビトの肩を持つまでに落ちぶれたか」
ザラムは次元の谷から消えたなっぴたちを追おうともせずダゴスに近づいた。
「ザラム、黒騎士の腕を今一度、このわしに見せてみよ」
ダゴスはそう言って、オニグモの姿のまま牙を剥く。次元の谷は二人の因縁の戦いには似合いすぎていた。
突如として異界から現れた宇宙船は、広い平原に着陸した。そして『レムリア』という宇宙船の名でこの地を呼び、そこで暮らし始めた。『ヨミ族』の存在は随分のちになって彼らは知った。ヨミ族の多くは暗がりや地中をすみかとしていた、それにヨミの花園に咲く花だけでハチ族には十分だった。弱肉強食のこの地ではそれほど多くの虫人たちがいた訳でもなかったのだ。ダゴスを首長としてヨミの戦士はまとまって行動をしていた。それは共通の敵から身を守るために……。
「何故再び、ラグナを使う。あれほど手こずった闇の力を何故?」
ダゴスが聞いた。
「何故? 教えてやるさ、この勝負にお前が勝てばな、いやあーっ!」
問答無用とザラムは巨大なはさみを振った。そのはさみを二対の手で受け止め、一対の手の爪でザラムの腹を引き裂いた。ドス黒い血が噴き出しダゴスの体も黒く染まった。勝負はあった、ダゴスはそう思った。しかしその傷口はすぐ塞がり、ザラムの背後から二股の尾がしなった。それは次の瞬間にはダゴスの下に入り込んだ。かぎ爪の先には毒針がある。しかしそれもダゴスは受け止めた。ダゴスが『人型』で戦わないのはザラムが恐るべき相手だったからだ。
「クククッ、無駄だ、ダゴス。今のわしにはこんな事ができるのだ」
頭上のサソリが、まるでザラムから飛び出す様に分離した。ラグナが大サソリとして動き始めたのだった。
大サソリがダゴスに飛びかかり、ザラムがはさみを振り下ろした時だった。
「ギガッ」
ダゴスは迷わず、ザラムのはさみを渾身の力で引きちぎった。しかし大サソリのはさみはそのお返しにとばかり、ダゴスの腕を奪った。
「ぐはっ」
ダゴスはバランスを崩しよろけた。それを見てザラムはもう片方のはさみを振り、ダゴスを殴り倒した。
「クククッ、お前も馬鹿な奴だ。俺のヨミの力、再生の力を知らぬ訳でもあるまい。俺よりラグナを倒す方が先だろう」
ザラムはちぎれたはさみの傷口に力を込めた。次のはさみが再生するはずだった。
「何故だ、俺のはさみが再生しない。そんな馬鹿な事があるものか」
それはダゴスの腕も同じだった。
「馬鹿はお前の方だ、お前のはさみと俺のちぎれた腕をよく見てみろ」
それは白くまるで石の様になっていた。
「これはどういう事だ、ダゴス」
ダゴスは大サソリに向き直り身構えた。
「ラグナの餌なんだよ、俺たちは……」




