燃え落ちた水車小屋
燃え落ちた水車小屋
「ふん、なるほどな水車小屋に隠れたか。ザラムよ、ひと思いに焼き払え!」
「おやおや、ヨミの戦士にしちゃあ子供相手にそんな事までするとは落ちたものだねえ。見ちゃいられない」
「シルティ、余計な事を言うな、ダーマの命令は絶対だ。お前も知っているだろう」
そう言うとゴラムはミナに巻き付けた糸を器用に交差させ一気に左右に引き絞った。
辺り一面に血しぶきが飛び散り、ミナの体が幾筋も深く切り刻まれた。血だらけの巫女は声も上げず倒れた。ゴラムはしかし冷淡に白装束のアゲハに言った。
「所詮、覚醒もしていない巫女など、こんなものだ。シルティ、残りの生気はお前にやろう。少ししか残っていないがな。お前の術は次にとっておけ、俺はガラムのところへ行こう」
「さて、巫女たちの生気をいただこうかね」
ラナに近づき口吻を伸ばそうとしたシルティはその巫女が持っていた刀が粗末な事に気付いた。ガラムを切ったのは刀ではなくラナの持つ『ヒメカの力』だったのだ。力は戻っていた、それをなぜ使わなかったのだろう。ラナに呪力のかけらも残ってはいなかった。傍らのミナの体はあまりにも惨かった。ラナの上着をとりミナにかけようとした時シルティはミナの『最期の術』にかかった。彼女は暫くそこにいたが、どこかへ立ち去っていった。親子二代のオロスの巫女はヨミの戦士により最期を迎えた。時を待たずに、大きな音とともに裏の水車小屋が崩れ落ちた。
「どうだ、ゴラム。娘は死んだか?」
「とっくに娘の反応はない、帰るぞ。次はシルラそしてマンジュリカーナだ」
水車小屋の中では、気を失った娘の上に焼けた屋根材が次々と崩れ落ちていった。その胸には『守り刀』が光り輝いていた。
その頃なっぴはまだそんなことは知らなかった、まだ香奈も普段通りの優しい母だった。
「あっしまった!」
陶器の割れる音とともに香奈は夫のお気に入りのコーヒーカップを落とした。彼女の目に涙が浮かんだ、オロスの巫女の最期をそのとき香奈は知ったのだった。
「そうかそれでいい、オロシアーナの最後は見届けたのだな」
アガルタの洞窟でオロスの巫女の最期を聞き、ダーマは上機嫌だった。それは黒衣の下のダーマの体がさらに成長している事にも関係していた。
「ムシビトに寄生したわしの分身がこうして養分を送ってくる。かつての様に……」
ゴラムが黒衣から出た触手を横目で見ながら小声で聞いた。
「シルラ王の方は片付くのか? ダーマ」
「ああ、シュラへの実験失敗で意外と簡単にな、ククククッ」




