オロスの巫女母娘
オロスの巫女母娘
「ミーシャ、ミーシャは何処? 母さん、ミーシャがいない」
近所の水車小屋まで麦を運びにいった、娘が戻らない。ミナはラナを見た。その『目くばせ』には意味があった。ラナは先日ルノクスからの飛行物体を感知した様に、敵の襲来を察知していたのだ。
「クククッ、往生際の悪いオロスの巫女。アガルタでその奥義を使い、ほとんど術は使えまい。余計な事をしなければもう少し長生きできたであろうに」
ガラムの赤い牙がついに『ラナ』の足首を捕らえた。
「うっ、赤ムカデめ!」
ラナは太刀を抜き、その頭を飛ばす。見事な居合いだ。しかし次の瞬間ガラムの新しい顔が笑った。
「無駄だ、『ラナ・ポポローナ』わしらは不死身なのだ」
「オローシャ・ピリリカ!」
新しい牙を剥き、ラナに襲いかかる赤ムカデを無数の雷針が貫いた。
「ウゲェアア」
ミナがオロスの雷針の呪文を唱える。しかしすぐにガラムの体から抜け落ちる。
「……だめだ、オロスの術では叶わない。ヒメカの術でなければ」
しかし、ミナはオロシアーナとして覚醒していない。それでも懸命に母を守ろうとしていた。吹雪の呪文を唱えようとした時だ。
「クククッ、お前の相手は俺だろう」
彼女に向けてゴラムの糸が放射状に放たれた。その糸はまるで1本づつ、意志を持つかの様にミナの剣をかいくぐりついに彼女の足に絡みついた。
「うっ、しまった」
「クククッ、人魚などに関わって力を使い過ぎた様だな、せっかく連れて来たあの闇の巫女もとうとう出番も無いままか」
「闇の、巫女……」
「そうさ、我ら先住民の『巫女アゲハ』だ」
今まで何処にいたのかその白いアゲハは初めてミナに口を開いた。
「マンジュリカーナは私の大事な人を奪った。決して許さない」
「……」
ラナは大きく肩で息をしていた、ゆっくり近づくガラムに刀を振り上げる力さえ残っていなかった。
「さあ、そろそろあの世に旅立ちな、キリトが待っているぜ」
そう言うと、ガラムは赤い牙をオロスの巫女の首に深く打ち込んだ。白い巫女装束は一瞬で紅に染まった。母が無惨に殺されるのを見て、ミナが叫んだ。
「母さん!」
「フフフッ、ついにくたばったか。さあ、確かお前には娘がいたはず。ダーマはその娘も殺して来いと言った。何処にいる?」
「一足違いだったわね、娘はここにはいないわ」
体中を大グモの糸に巻きつかれ、自由を奪われたミナはそうつい口走った、あわてて口をつむぐ。しかしその心の中はすでに操りグモに見破られてしまった。
「クククッ、言わずとも伝わる」
そうゴラムは笑った。




