ヨミの血
ヨミの血
「たとえまっぷたつにされようと、ヨミの戦士は死なん。大ムカデ、その女を食い殺してしまえ」
由美子の首を大ムカデの牙がついに捉えた。血しぶきが上がりそれが大ムカデの額を赤く染めた。
「よくやった、大ムカデ」
しかし仰向けに倒れたのは、額のただれた大ムカデの方だった。由美子のえぐられた首はたちまち塞がった。一番驚いたのは当の由美子だった。
「なにが起こったの?」
「おのれ、そうか、お前にもヨミの血が流れているのだったな、黒龍刀はヨミを守る剣、その力でラグナを倒したというのか」
体を斬られるたびにラグナは移動していく。切り口から流れ込む黒龍刀の力はラグナに乗っ取られたヨミの細胞を守るために働く。半身、四つ身、次第にラグナの居場所が無くなっていく。それはシルティと同じだ。最後の力をその牙に込め、大ムカデは由美子の細い首を再び狙った。
「ギュルルン……」
ラグナの断末魔が聞こえた。『黒いラペ』は大ムカデの首とともにラグナ・マルマの体を削ぎ取った。ラグナは消え去った。
大グモは、なっぴのブルー・メランにより再び苦しむ、その動きが鈍くなった。
「まただ、これにはきっと何か理由がある……」
なっぴは色を失いながらも戻って来たブルー・メランをつかむとその理由を推理するのだった。
「クククッ、なるほど、ラグナを浄化する事を知ったか。確かにその通り、黒龍刀も白龍刀もそれができる、しかしお前は異界の巫女。この星の龍刀など使えはしない。どれ、お前だけでも殺しておかねば、ダーマに会わす顔がない」
さすがに力尽きたのか、由美子とミーシャもすぐには動けそうにない。それを見てゴラムは大グモに命じた。
「ふふふっ、こいつには浄化などできん。やれっ、かみ殺してしまえ」
その戦いは、遥かレムレアの王宮でも映し出されていた。ようやく息を吹き返したラベンデュラが言った。
「七龍刀に納めた虹の宝玉は宇宙の真理、不可能な事などない。なっぴはそれに必ず気が付く、マンジュリカーナはマナとヨミの力を持つ、レムリアの希望だから」
しかし、まだその先にあるアガルタにはギバ、ダーマ、そしてインセクトロイド『シュラ』が待っているのだ。
その時、王宮に息を切らして駆け込んで来た者があった。
「母上、いえ女王、ただ今戻りました」
「お帰り、カブト、その様子では見つかったのですか?」
「はい、ようやく見つけました」
「まったく、こいつの執念はとうとう掘り出した。黄金のカブトを再び……」
ドルクが角に付いた泥をテンテンに拭ってもらいながらそう言って笑った。その報告を受け、ラベンデュラは安心してこう皆に言った。
「なっぴはもうそろそろ大グモを浄化する方法に気が付いているはず」




