割れた仮面
割れた仮面
「レン・スティノール!」
なっぴは身長ほどにキューをのばした。そしてそれを左右に振り『ガラム』の牙を避けながら左右の肩を打突する。両肩には防御用の肩当てがあったが次第にそれを通して衝撃が加わっていく。
「こいつ、何故こんな真似ができる。しかもこの刀の本来の使いではないのに、俺には到底理解できん……」
ヨミの戦士には、もともと武器はない。しかしラグナの力とともに彼が手に入れたのは、毒の霧だ。赤ムカデは短く舌打ちして体中の毒を噴霧した。
「わずかでも吸い込めば数秒と持つまい。後味の悪い戦いだが。ヨミ族の首長をたぶらかした罰は受けなければならないのだ。ご先祖様をあの世で恨みな、小娘」
その瞬間、なっぴの左右のコンバーターから『マウスガード』が現れ中央でぴたりと閉じた。水色の『ゴーグル』が下り、それと一体化して新しいタイプの強化ヘルメットに変わった。しかし、自分はいいとしても、セイレやミコに毒を吸わせるわけにはいかない。
「テンテン、『レッド・ジャイロ』また使える?」
「もちろん、アイテムは全てコマンドスーツにセット済みよ」
なっぴはそれを聞くと、肩のコマンダーに手をかざし赤い虹のかけらを取り出した。そして二人に向って投げつける。
「レッド・ジャイロ。霧なんて吹き飛ばせっ」
風を起こすレッド・ジャイロは毒霧を彼方へ吹き飛ばした。
「こしゃくな奴め、これでも食らえっ!」
いきなりなっぴの横腹をガラムの真っ赤なしっぽが横殴りに払った。
「グッ……」
なっぴは数メートルも飛ばされ、岩にたたきつけられた。
ほらほら、お仲間もそろそろ危ないよ、助けにいかないのかね」
カタビラアゲハの両足に巻きついたぶんだけ、ストゥールの浮力を失ったアゲハは少しずつ落下を始めた。しかしブルー・ストゥールは足首から太もも腰そして胸と順にカタビラアゲハを締め付けていく。地上が近づいて来た。由美子の目に大きな布団のようなジルの背に乗った娘が見えた。
「あれは、そんなはずがない。オロシアーナの娘なのか」
「どうやら、人間界にもなっぴの仲間がいるみたいね。さあ、ラグナ、シルティを返しなさい。ブルー・ストゥール、コンプレッション(圧縮)」
カタビラアゲハの体を包んだ青い布が由美子の言葉で締め付け始めた、しかし締め上げるのではない。顔をのぞきすっぽり青い繭が出来上がった。そしてシルティの体内に青い光が放出された。それはラグナの触手のすべてを包んだ。そして今度はその光が縮まっていく。ラグナを引きはがしにかかったのだ。幼体のラグナは光の来ない一点に移動するしかない。それが大きな複眼の着いたシルティの仮面に集まった。由美子は『緑龍刀』を使いその仮面をまっぷたつに割った。
「ゴルギュュン……」
地上の紫外線にさらされたラグナの幼体は瞬く間にひからびて消滅した。
「何という事、本当に武器もなしでラグナを倒すなんて事が」
「青龍刀は立派な武器、それをブルー・ストゥールに変えたのは、母『スカーレット』私はそれを受け継ぐ『サフラン』。シルティ、あなたの事はセブリアの『フランヌ』様から聞いていました、必ずどこかで生きていると」
「フランヌは助かったの、じゃあ眠り病も大雨も」
「なっぴが王国の闇を祓い、復興しました。ただ、死んでしまったものを全てよみがえらせるだけの力はない、なっぴは『ギラファ』をよみがえらせるのが精一杯だったのです。フランタイヤンマは」
「分かっています、戦の理由はともかくとして死んだものは生き返ってはならない。それがマンジュリカーナの教えです。フローラの三姉妹、トレニアーナの姉妹とともに、私もあのとき立ち上がるべきでした」
正気に戻ったシルティは、巫女の心を取り戻し、由美子に優しく言葉をかけた。
「ガラムは強い、さあ、あの娘ともに戦いなさい。サフラン」
由美子は小さくうなずくとシルティを残し、なっぴの前に飛び出した。




