覚醒のコマンド
覚醒のコマンド
炎のように真っ赤な体は、『黒サソリ』以上の妖気を放っている。それが『ガラム』の力なのか、それとも『ラグナ』の力によるものかは、なっぴには分からなかった。しかし、ダーマの前にこの敵を倒さなければならない。なっぴはコマンドスーツを初めて着た時のことを思い出した。
『メタモルフォーゼ』とは、人体の内部組織を融解してその後、強靭な体へ生まれ変わることなのだ。昆虫が蛹の内部で行っているように。また『メタモルフォーゼ』に要する時間は、一瞬のことだ。
なっぴが初めて『メタモルフォーゼ』をした時……。
「『テンテン』、目覚めなさい。召還、『テンテン』!」
虹色に輝く『テンテン』がなっぴの肩に止まった。
「『テンテン』、着装」
なっぴのシナプスに書き込んだ通り、召還された『テンテン』は分身してコマンダーに変わり、ヘルメットに固定された。それに連動し、『コマンドスーツ』が起動した。だが、それはなぜかだぶだぶだった……。
「『メタモルフォーゼ』も同時にしなきゃぁだめ。なっぴ、さあ叫んで」
由美子の言葉に、なっぴは慌てて教えられた通り叫んだ。
「メタモル……、メタモルフォーゼ・レインボー!」
なっぴは大切なことに気付いた。
「でも、今は『メタモルフォーゼ』のためのコマンダー、なにより『テンテン』がいない」
由美子がその様子を見て話を続けた。
「なっぴ、テンテンは信じていたわ。必ず自分を召還してくれるって、『マイ』あなたは『ヒドランジア』ナノリアの王女、さあ『ナナ』に最後のコマンドを書き込みなさい」
額を狙った『カタビラアゲハ』のラペを交差した二本の黄龍刀で受け、由美子が背中越しにデッキの『マイ』に命じた。マイがなっぴから預かり今まで持っていたブローチを手に取った。
「そう、それでいいのよ『マイ』。ナナの最後のコマンドはね……」
由美子がそれを言う前に、マイがその額にブローチを当て、高らかに叫んだ。
「七色のテントウ、ここに虹の精となれ!『ヒドランジアーレ、ナナテーレ、レムリアーナ』こうでしょう?」
ついに七色テントウが覚醒した。背伸びを一つすると『ナナ(?) 』はこう言って、飛び上がった。
「へーえ、さすがナノリアの王女、嘘じゃなかったな。どれ、僕もなっぴを手伝いにいくか、ムカデにかみ殺される前に……」
一瞬見えたその姿にデッキの三人は驚いた。
「ナナって……?」
「どうやら、あの娘はまだ半人前かい。じきにガラム様に捕まりまっぷたつだ、そら言わんこっちゃあない」
とうとうなっぴの胴体をその鋭い牙が捕らえた、強化されたコマンドスーツにはダメージはない。しかしその中身はメタモルフォーゼをしていない生身の体だ。スーツを通してもなお挟むその力でなっぴは息苦しくなって来た。『ガラム』の背後から長い尾が持ち上がり、なっぴののどをひと突きにしようと狙っていた。
「くくくっ、頑丈なスーツの中身は柔らかいだろう、楽にしてやろう」




