裏切り者
裏切り者
「いつまでも沈んでばかり入られない、タケルもセイレもアガルタの皆によってこうして生きている。シルラは『シュラ』の恐ろしさとともに私にその弱点を教えてくれた。メイフ様は『シュラ』をさらに海底深くへと、運び去ってくれた」
そう言い聞かせている『里奈』もやはりたった一人の妹がアガルタにくるのはうれしかった。
ダーマがギバに報告したほとんどには、ダーマの配下の者が関わっていた。それを指揮していたのは『ヨミの戦士』たちだった。
「どうぞこちらへ、女王はすぐいらっしゃいます」
案内された洞窟には質素なチョウチンアンコウの明かりひとつがあった。『香奈』はその洞窟の暗ささえも『シルラ』王の死に関係するのだろうと思っていた。王だけではない、メイフも行方が知れないという噂も聞いたのである。
「姉さんは、これからひとりで大丈夫かしら? 『ギバハチ』が助けてくれていると聞いたけれど」
「あのギバハチがねえ、わたしにはすぐには信じられないわ」
『香奈』のブローチに収まっていたのは『ラナ・ポポローナ』だった。既に『アガルタ』に自力で飛ぶことができない、そんな『ラナ』も『里奈』を元気づけようとしたのだった。もちろん、『里奈』には内緒だ。それに奥義を使ったオロシアーナは再び奥義を使えない。ラナは自分の寿命まで見えてしまうようになった。
「まあ、なんとか、キリトじいちゃんに孫の顔を教えてあげれそうだけど」
出産まで『ミーナ』は懐かしい『オロス』に里帰りをしていた。それは『日本アカデミア』を辞め、学界を追われた『イノウエ』が勧めたものだ。『新耐圧殻の開発』表向きはそうであったが、オロスの母娘は『新たな敵』から『ミーナ』と産まれる子供を守るためだと知っていた。
「それにしても、少し遅いわね」
明かりの色が紫色に変わった、それが合図だった。
「こちらです、女王様。さあ香奈様がお待ちかねですよ」
「まったく、私はもう大丈夫だって何度言わせるの?」
マツカサ魚がドアの前で叫んだ。
「女王様がいらっしゃいました」
「ようこそ、アガルタへ。香奈……」
扉を開けた女王は背後から口と鼻を押さえられ強烈な催眠ガスを吸わされた。意識とともにぼやけていく目の前を白黒のオルカが横切った。そしてこう吐き捨てるように言った。
「アガルタを裏切る女王はもはや不要だ」
「ギバ様、これで『香奈』が手に入ったのも同然です。きっと『シュラ』のコマンドを書き変えることができましょう」
(わし以外の全ての知的生命体を殲滅せよとコマンドを変えてな)
その計画は『香奈』が偶然にも『ラナ』と一緒に『アガルタ』に来たことにより阻止された。




