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なっぴの昆虫王国 シュラ編  作者: 黒瀬新吉
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核(コア)

(コア)


「緑の真珠となった人魚の卵は、アコヤガイの中でゆっくりと一本の糸にほどかれる。そして『(コア)』を包んでいくの。出来上がった人魚のコアにアコヤガイは長い年月をかけてアガルタの歴史を織り込んでいく。『人魚姫』はそうして過去の歴史も引き継ぐものなの。女王が産んだ卵からは『エスメラーダ』はたった一人しか産まれません。残った人魚の卵は、核を残してやがては溶けて消えてしまうのよ」


「コアが無かったということなのね……」


「そう、ラミナのコアは、やはりそこにはなかった。マナトにはエスメラーダになれなかった核を納めた『人魚塚』という場所があります。すべての人魚たちの記憶の集まる場所が、『マナトの玉座』。その玉座の水晶玉に『香奈』は閉じ込められているの」

「母さんがなぜそんなところへ?」

「セイレを逃がすために、捕まったのよ。香奈は自分から『人質』になったの、あなたを信じてね」

そのとき何度か見かけた影が姿を現した。それは母の姉、アガルタの女王『里奈』だった。


「セイレは玉座に納めていたエスメラーダのコアと人魚の卵から産まれた人魚なの。アガルタに人魚が産まれなかった場合、エスメラーダの産んだ人魚の卵が永い眠りから目覚めるという訳なのよ」

里奈がそう口を挟んだ。

「まあ、簡単に言っちゃって。死にそうな声で私たちを呼んどいて、まったく……」

ミーナが笑ってそう言った。

「もちろんそれは、三人の巫女がそろわないとできないけどね。ミーナと香奈のおかげよ」



女王の憂鬱


アガルタに王子『タケル』が産まれた。これはその時のことだ。『里奈』女王は母となった。しかし人魚の卵の方は、いっこうに孵化しなかったのだ。


「里奈、気にするな。姫無くとも、アガルタには人魚はいる。そのうち何とかなるかもしれん」

『シルラ』はそう言うと『タケル』を連れて父の元に行った。

(里奈は本当にアガルタを大切に考えている。だが、残念だが再誕の力はカイリュウの力とともに消えてしまったのだ……)


『シルラ』の言った通り、人魚はまだ健在だった。元々長寿の人魚は、見た目には年を感じさせない。中でもやはり『ルシナ』は美しかった。しかし、それでも命には限りがある。『エスメラーダ』にしか新しい人魚を産むこともできないのだった。里奈は今日久しぶりに、人魚たちに会っても心はすこしも晴れなかった。


「ねえ、ルシナ。お母様たちのしたことは正しかったのかしら?」

「人魚から再誕の力を抜き取ったことですか?」

『ルシナ』は時々ふと、女王の仕草に『里香』のことを思い出すことがある。彼女だけではない、久しぶりに集まった『ダルナ』も『マーラ』もそう思った。


「まずは、『タケル』様の成長を見守りましょう。元エスメラーダ人魚がこうして集まったのは『里奈』様にお伝えすることがあったからなのです」

『ルシナ』はそう言うとマナトの洞窟の巨大な紅珊瑚にそっと触れた。

「やはり『里香』様のおっしゃった通り、次のエスメラーダはそれまでとは違う誕生になるのですね」

「そう、『マーラ』。再誕の力を無くしたとはいえ、人魚姫は産まれるのです」

新女王『里奈』は『ルシナ』に尋ねた。


「母様はこうなることを知っていたの?」

新女王の母『里香』は『なっぴ』が産まれるとほどなく息を引き取ったのだった、もはや母に聞く術も無い。『ルシナ』が語り始めたのは先代の女王『カルナ』が『シルラ』を産んだ時のことだった。

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