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なっぴの昆虫王国 シュラ編  作者: 黒瀬新吉
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オロシアーナ

オロシアーナ


「ミーナ、よく戻ってきてくれたわね。まあ、この娘がミーシャ。あなたの小さい頃と同じ青い綺麗な目をしているわね」

「母さんたら、美沙よ美沙。いい加減、古いオロスの言葉なんて忘れなさいよ」

「いやよ、キリトのことまで忘れちゃいそうで。いい、オロスの巫女としてあなたがあるのは、レムリアやアガルタのおかげなのよ、第一、オロスの巫女の役目はね……」

「わかった、わかった。アガルタと天界のレムリアをつなぐ役目でしょう。でもね、今時人魚を信じているのは『イノウエ』くらいのモノよ。美沙に会いたいならきっと追いかけてくるわ、おばあちゃんにはその時お父さんを紹介しましょうね、美沙」


しかし彼が美沙の祖母『ラナ・ポポノーラ』の前に現れたのは、彼女を引き取りに行ったときが最初で最後だった。

オロスの巫女『オロシアーナ』もまた、伝承された術は覚醒と共に身につく。しかし『ラナ』は、それをなぜか残りの生涯ほとんど使っていない、ただその分、予知だけは研ぎすまされていた。


「……何かとてつもない事がこの星に起こる……」


長い放浪の果て母星に戻り、この星の虫人を守るため『サクヤ』を作り上げた科学者『カグマ』、タオに捨てられた『ラグナ』

そして深海に眠るインセクトロイド『シュラ』それらが『アガルタ』に集まるのは、『マンジュリカーナ』と『エスメラーダ』のもつ運命なのかも知れない。それにいち早く気が付いたのが『オロシアーナ』としての『ラナ・ポポノーラ』だったのだ。しかしその危機を知らせるべき相手『里香』は既にこの世にはいなかった。


同世代の巫女同士は念波で情報を共有出来る、『カルナ』も『里香』もこの世にいなくなって久しい。しかしそれを望んだのも彼女たちだった、『ラナ』は娘のミーナにその危機を伝えた。


「母さん、今はね衛星通信で世界中話しが出来るのよ。もう『香奈』には連絡したから心配しないでいいわ。きっとアガルタにも伝わっているはずよ」

だが遠くはなれたルノクスから飛来する飛行物体が『シュラ』を破壊するために新たに作られた『インセクトロイド』である事までは、『ラナ』は感知出来なかった。


セイレの記憶


午後3時『セイレ』の眠る時間が来た。彼女は毎日決まった時間になるとまるで気を失うように深い眠りにつく。そのそばでミーシャは驚いて声を上げた。


「あなたは……、誰?」

ミーシャの見つめる先には何もない、いやなっぴもマイもタイスケにも『見えない』のだ。ミコは黙ってミーシャを見た。

(この娘には何か見えるのか)


ミーシャにはその美しい女性を見るのは初めてではないような気がした。記憶を辿るより早く、その女性は答えた。

「ミーシャ、きれいになったわね」

「か、母さんなの?」

「私が見えるということは、オロシアーナとして覚醒してきているということね。よかった、これも香奈のおかげね」

「香奈、なっぴの母さんのことね」


母の名を聞くと、いてもたってもいられずなっぴは見えない闇に叫んだ。

「教えて、母さんのこと」


「新しい宝玉をそのプローチに納めなさい、なっぴ」

『ミーシャ』が母の言葉を伝えた。

なっぴはすぐにマイから受け取った緑の宝玉を『ナナ』に納めた。そうすることによってようやく皆が『ミーナ』を目の当たりにした。

「香奈のおかげであなたたちに会えました。この星は救われるかもしれない」


「『ラナ・オロシアーナ』と『リカ・マンジュリカーナ』の二人の伝承者には巫女が産まれました。しかし『カルナ』には人魚は産まれなかった。王子『シルラ』を産むと『カルナ』は死んでしまったのです。再誕の力をなくした以上、エスメラーダはもう産まれない。アガルタの王『メイフ』も誰もがそう思っていました」

「じゃあ『セイレ』はいったい?」

なっぴが口を挟んだ。


「わたしの母『ラナ』は最後のエスメラーダ『ラミナ』の娘でもありました。『ラミナ』がオロチとの戦いの前に自ら『マナト』の『ミドリアコヤガイ』に入っていったのを思い出したのです」

「じゃあ『セイレ』は『ラミナ』の生れ変わりってこと?」

『ミーナ』は頭を横に振った。

「いいえ、再誕は叶いませんでした。なぜならその人魚の卵には、無くてはならないものが欠けていたのです」


「無くてはならないものですって?」

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