訪問者
訪問者
「こんなになってしまったなんて……」
『青いかもめ』に到着したなっぴは、『シーラ2』を見て、落胆していた。一足先に着いたなっぴたちはまだ『amato2』の存在を知らない。と、そこになっぴの制服を見て、アカデミアの生徒と知り近づいてくる男がいた、研究所の男らしい。
「アカデミアで開発した新しい耐圧殻は既に出来上がっています。耐圧殻は理論上、海底二万メートルの水圧に耐える事が出来ます。新耐圧殻を使った小型のカプセルはまだ『シーラ2』に搭載されていなかったのです」
そこにはわずかだがまだ希望があった。
「シーラ2の修理にはあとどのくらいかかりますか?」
「三週間はかかります」
(だめだわ、そんなに待っていられない……)
「そのカプセルだけでも見てみますか?」
「……とりあえず明日にさせてください」
なっぴは、『ピッカー』にヨミ族が既に行動を開始している事を聞いた、居ても立ってもいられなかった。しかし明日、マイたちと合流する。焦りは禁物、二人の意見も聞こうとして、そう答えるとセンターを立ち去った。彼女らが見えなくなったのを確認すると、いつの間にか現れた黒い影が男にささやいた。
「ふふん、用心深い奴らだ。なかなかワナに引っ掛からない、お前たちに明日はもう二度と来ないというのにな、フフフッ」
「これはこれは『ザラム』様、こんなところまでお越し下さるとは」
白衣を脱いだ研究員は、巨大な眼を持つ虫人に変わった。
なっぴは『セイレ』の面倒を見ながら、食事を終えた。そして三人は、アカデミアの用意してくれたホテルの部屋に入った。明日の打ち合わせのためだ。
「なっぴ、明日はマイたちと合流し、アガルタへいく方法を考えようね」
「そうね、それにしてもピッカーが言っていた事が気になるわ」
それを聞いて、ナナがなっぴに尋ねた。
「ヨミ族の事か、それともレムリアの巫女たちの事かい?」
「どっちも。あーあ、あんたがテンテンならなぁ、まったく頼りになんないしね」
「いい事教えてやろうか、もうじき俺の約目は終わる。俺自身も覚醒するのさ、そうすればなっぴの力がもうひとつ戻ってくる」
そのときドアをノックする音が響いた。
「ルームサービスは断っているはずだが……」
ミコが入り口に向かった。
「明日が早いので、ルームサービスはお断りしているのですが」
返事はない、ミコはドアをそっと開けると外を見回した。外には誰もいない、低い声が響いた。
「おまえたちに明日はもう永遠に来ない、ゲフフフッ」
声は天井から聞こえた。天井を見上げたミコに襲いかかったのは、巨大な緑の眼をしたアブの虫人だった。
「グヘッ」
アブの針がミコに届く寸前、ミコの右フックが横っ面に決まった。物音になっぴが廊下に飛び出してきた。その虫人の顔を、『ピッカー』が見たらきっと驚いたろう。
「侍アブ、次元の谷に引きずり込め!」
「承知しました。ザラム様」
アブの虫人の後ろには、いつの間にか黒いコートの男が立ち、そう命じた。空間がねじ曲がり、三人は再び次元の谷に滑り落ちた。




