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なっぴの昆虫王国 シュラ編  作者: 黒瀬新吉
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赤いマユ

『赤いマユ』


「この場所は変わらない、あの頃のままだ」

そうつぶやき、彼はマナトの洞窟に入った。まだ数センチにも満たない人魚は、彼を見ると『ミドリアコヤガイ』の中に逃げ込む。その慌てように王家の三人は大笑いをした。

「おや、ギバハチどの、こんなところまでお越しいただくなんて。すっかりお体は回復された様ですね」

「お妃様、王女様の誕生、誠に嬉しゅうございます。タケル様のお世話には間に合いませんでしたが、その分も王女様にお仕えします」

「まあ、たのもしい。ならば今後よろしく頼みますよ。それから里奈、そうわたしの事を呼んでください。あなたは義父の片腕、それにわたしの父『シラト』からもあなたの事は聞いていました」

若い国王『シルラ』も頷いた。

「そうだ、わしに伝えたいことがあると言っていたな。ギバハチ、緊急なことだと聞いていたが。さあ、この場で申して構わぬ」

彼はその赤いマユについて報告した。


「それは随分古くから『アガルタ』のさらに奥底にあったというのか?」

「はい、我らカイリュウ族よりも以前から、最古の知的生命体がようやく現れた頃の事かと思われます」

「この星の最古の知的生命体、ヨミ族よりも古いのか、ギバハチ」

「はい、おそらく同じくらい古くから」

里奈が彼に尋ねた。


「その『赤いマユ』は生命体なのですか?」

「おそらくは。ただこの星の物ではありません、遠い宇宙で作られた物の様です。里奈どの、それは眠っているようにも思えました」

「では、それを作った誰かが、なにかの目的で『赤いマユ』をこの星に送り込んだ、そしてそれが偶然海底で眠ったままだと、そうとは知らずにやがてこの星に生命が溢れたのだと言う事か」

実は『ギバハチ』は『赤いマユ』が何故眠っているのか見当をつけていた。間近でそのマユを見たとき彼は不思議な光景を見ていたのだった。


そのマユはクジラの尾の衝撃で一部が割れていた。彼はそれに近づいた、彼とそう大きさも変わらない。そのひび割れたところから海水が浸水した時の事だ。その海水をマユは泡の様な薄い皮膜で包みマユから追い出したのだ。そして瞬く間にそのひび割れた箇所を内から修復したのだった。彼はそのマユをそっと押してみた。弾力のある皮膜だ、このマユは海水を防ぐために作られた物だと思った。


「この中には何かとてつもない物がある、そしてこうして永く守り続けられている……」

まだ一部透明なマユの中にはどうやら膝を抱えた状態の人型の物がある様だった。

「シュラ、塩水ノタメ活動停止。探査活動不可能。惑星ノ生命体未確認」

マユの中からそう機械音声がした。

(シュラ、そういう名前なのか、これは……)

彼は例えようの無い怖れを感じ、その場を逃げるように去った。そのときはまだ、彼は『シュラ』を使うなど考えもしなかった。


「『シュラ』に危険は無いのか、ギバハチ」

「はい、どうやら今は塩水に対して防御反応が働いているらしいのです。しかしひとたび動き始めたら、どのような力を持っているかはわかりません。あんな生命体を創り出し、この星へ送り込む科学力からしても、『シュラ』は恐るべき力を持つと充分想像出来ます」


彼は『シュラ』の眠る場所を『シルラ』に伝えると、『マオの洞窟』に戻った。これから先、不老不死として彼は限りない死を見続けるのだ。この洞窟でマオがしてきたように、永遠に……。無数のチムニーは彼の思いのように複雑に絡み合い、広がりそして地表にへと続いていた。


「このチムニーを一本づつ調べて回るかな、時間は幾らでもある事だし」

彼はようやく身体も再生し、新しいアガルタのために動き始めようとした。


石の棺桶


その石の棺桶は、かなり古い物だった。彼の新しい日課となった、チムニーの調査で見つけた物だ。そのチムニーは『レムリア』に続くものだったのだが、繋がるはずの『レムリア』がなっぴのマナの力により、シンクロナイズされたため、途中で次元の谷へ大きくねじ曲げられ、ここに繋がっていたのだった。


「これが次元の谷、異界との境界か。おや、そこに誰かいるのか?」

彼は、いざという時のため『竜化』すると、その気配に進んだ。その彼の前には三つの古い石の棺桶があった。重い石の蓋を、竜化した彼は渾身の力で開けた。彼の目には、既にからからにひからびた、人型の土塊が映った。それはかつてのヨミ族の戦いに敗れた戦士の棺桶だったのだ。

「戦士の棺桶か、墓暴きとは気持ちのいい物ではないな。おやこいつは何だ?」

彼はその土塊の中で奇妙な物を見つけた。


挿絵(By みてみん)


「それを持ち出してはならぬ、カイリュウ」

振り返った彼に近づいたのは、ヨミ族の首長『ダゴス』だった。彼はここに来るために『キュラウエラ』の姿になっていた。

「わしの事を知っているとは、お主はレムリアの王か?」

「レムリアの王ではない。ヨミ族の首長、ダゴスと申すもの、カイリュウ族は既に竜化の力を失ったと聞いたが……」

ギバハチは再び蓋を閉め、彼に自分がカイリュウ族の力を残している訳を話した。


「なるほど、リカ様は異界でその様な事をされていたのか、なっぴ様がレムリアのために立ち上がられたのもマンジュリカーナの力……」

「そのなっぴと言う娘がこの次元の谷を繋げたというのか、たったひとりで、まるでアマテラスじゃな、ぜひ一度会ってみたいものだ」

「……はははっ、今時の娘と変わらんよ。それより、そんなものが海底にあるというのは本当か?」

「確かだ。『探査不能ノタメ』にそれは深い海底で眠り続けているらしい」

「まてよシュラ、探査……。それは赤いマユに入っていると言ったな。そういえばヨミ族の記憶の中に似た事がある、調べてみよう」

ダゴスはそういうと、ギバハチと次に会う約束をすると、早々に次元の谷を抜けていった。


「……そうか、ヨミ族なら何か知っていてもおかしくない。ダゴス、なかなかの男だ。わしもああならねばならないな、新しいアガルタの首長として」


そのとき、彼はひとつの気配を感じた。

「ふふふっ、ヨミ族はダゴスたちだけではない、サソリ、ムカデ、クモ族のなかから奴に敵対したヨミ族『ヨミ族の戦士』の眠る場所がこの次元の谷だったのだ。それをこんな風に閉じ込めおって。いまいましい小娘、その名をなっぴと言うのか」

彼が振り返ると、ひとつの石棺の蓋がほんの少しずれていた。その中から黒い爪が蓋に引っ掛かり信じられないほどするりと軽く蓋が開いた。その中から、人型が現れ、ギバハチの前にゆっくりと姿を現した。

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