第五章 タケルの腹
なっぴの昆虫王国 シュラ編 第五章 タケルの腹
タケルの腹の中でなっぴは低い声を聞いた。念波で話すその声はこういった。
「お前はマンジュリカーナの末裔か。アガルタを再び救ってくれてわしからも礼を言うぞ」
「あなたは誰? カイリュウではないのね」
「わしは『アマオロス』の子『マオ』。『カイリュウ』とは、わしとクシナとの間に生まれた子たちを言う。お前は「香奈」の娘であろう、見ればまだ見習いのマンジュリカーナか」
「万寿小夏、みんなは私のことをなっぴと呼びます」
「ふおっふおっ、ところでなっぴ『神の子』について知っているか?」
「はい『タオ』の子として『マナ』『ヨミ』に続いて生まれた『ラグナ』の事です」
「ふむ、すこし違う、『ラグナ』は『マナ』『ヨミ』に先んじて産まれたのだ。不完全な体ではあったがタオの最初の子だった。『マルマ』というのが元の名だ。『ルノクス』お前たちの祖先、リカーナが育った星に捨てられたのだ。そしてその星の奥深く隠れる様に住んでいた」
なっぴは黙って聞いていた。
「その後に生まれた『マナ』『ヨミ』と違い不完全だが『マルマ』は何故『体』をもっていたと思う? なっぴ」
「そんなこと私には解らない……」
「それは本当に『神の子』だったからなのだ」
「シュラは生命体を全て殲滅するためこの星に送り込まれた。その力は圧倒的だ、この星の生命体が滅び去るのにそう時間はかからないだろう。その時この星に何が残ると思う? なっぴ」
「きっと『ラグナ・ノア』と『シュラ』……」
「その通り、ダーマは『シュラ』のコマンドを覗いたはずだ。そしてその最後のコマンドまで知ったはずだ」
「最後のコマンド?」
「それにはこう、書かれている。ミッションが終了した場合は、AI(人工知能)とともに、自己再生装置を破壊して沈黙せよとな」
「何故、あなたはそんなことを知っているの?」
なっぴは不思議そうに尋ねた。しかし「マオ」はそれには何も触れずにこう言った。
「この地上に「シュラ」の攻撃に耐えられる生き物は存在しない。おそかれはやかれ、殲滅するしかない」
「でも、もし『ラグナ・ノア』の中の生命体が活動したら、きっと壊されてしまう」
「そうとも。それを恐れていたダーマは。シュラの弱点の塩水溢れる『深海』に分厚い殻を使ってマユをこしらえたのさ」
「でもそれだって見つかるかも知れない。そうか、だから……」
「だからなっぴたちとあえて戦わなかったのだ」
「それって? ひょっとして私たちに」
「そう、地上で『シュラ』を倒してもらうためさ」
「じゃあ、母さんは?」
「ダーマは卑怯者になる必要があった、おまえはやさしいからな」
「そんな……」
「ダーマは知っていたのだ、『ヨミ族』を救った『リカーナ』も『レムリア』の戦いも、そして『アガルタ』を巻き込んだ『ヤマタノオロチ』を倒した『三女神』の子孫、つまりお前たちのこともな」
マオの念波は最後にこういい残して消えた。
「ダーマはシュラとともにこの星から消え去るつもりなのだ 」




