地上へ
地上へ
「あれれ?『amato2』がこっちにやってくる。地震でアンカーが外れたのね」
なっぴがそう言うと、ミーシャが首を傾げた。
「変ね、しっかり固定させていたんだけれど?」
「おやおや、後ろから誰かが押しているぞ、あれはダイオウイカだ、『amato2』だけじゃない」
「誰か乗っている、あれってまさか?」
そのものがセイレに気付くといきなり立ち上がった。
「セイレ様ーっ!ご無事で、うぉっととと……」
「本当に、大丈夫なの?」
ダイオウイカは落盤する岩をかいくぐりながら狭い洞窟を脱出していた。その十本の足に抱えているのは、「amato2」。その中でセイレが「フクロウナギ」の介抱をしていた。彼は滑りやすいダイオウイカから落ちて腰を打ったのだ。やっと気付いた彼はこう言った。
「やはり、本物のセイレ様は、なっぴ様よりもさらにお美しい。まるでアキナ様を見ている様だ」
彼は泣き出してしまった。ひとしきり泣くと、彼はようやく話を始めた。
「私はセイレ様の子守りをしていた事もある。あのとき皆を鎮めるために現れたのはなっぴ様ですね。セイレ様はマナトに行かれると思い、その後を追っていったのです」
彼はまだ完全にセイレが女王として覚醒していない事に気付いたと言った。そしてさらに深海へ向う「amato2」を見た。この時彼はアガルタを救うために「ダーマ」と戦うと言った、なっぴを信じた。
「そして、こいつが逃げて来たのです。このダイオウイカはアガルタの主です。私が話をして、このカプセルを運ばせたのです。まさかダーマを倒していただいた「なっぴ様」たちに深海で泳げとは言いませんよ。あれっ?」
なっぴは「amato2」には乗っていなかった。セイレ、ミーシャ、ミコそして彼の他に搭乗者はいない。「amato2」は定員4人、フクロウナギは怪我をしていたからここに運ばれたのだ。
「何故、私を乗せたのですか? 私の役目は終わったのに……」
「それを言うな、心配はない。ほらあれを見ろ」
「フクロウナギ」の目に、ダイオウイカと併泳する若いクジラが映った。
「あれは?」
「あなたのお陰で元に戻ったカイリュウの新しい王」
「……タケル様」
「そう、その中でなっぴは次に備えているのよ」
ミーシャがそう言うと、「フクロウナギ」は小さくつぶやいた。
「ではまだ戦いは終わっていないのですか」
「って言うより、最悪ね。今度はあの『シュラ』が相手だから」
ミーシャがそう言うと、ミコが話を続けた。
「なっぴの母上、香奈様のカプセルもダーマの本体も『シュラ』の中だ。星ひとつ滅ぼした『インセクトロイド』、それが地上で待っている」
「そ、そんなぁ。今度は地上が大変な事になってしまう」
セイレが思いがけないことを言った。
「まあ何とかなるでしょう。力を合わせれば、きっと。じゃあわたし少し休むわ」
「なーんか、誰かに似て来たと思わない? ミコ」
そう言いながミーシャも横になった。外部の水圧がゆっくり下がっていく。連動してカプセル内の気圧も調整されていく。イノウエの言った通り、海上に浮かび上がるのにはたっぷり時間をかける必要があった。
タケルはなっぴをその腹にいれたまま、浮上していく。
「母さんは、何故、ダーマとまだ一緒にいるの?」
香奈の呪力が玉の封印を解く程度は残っている事に、なっぴは一瞬で気が付いた。しかし香奈の真意を知る事は出来ない。『神の子』として『ラグナ・ノア』を残したダーマを見た彼女は不思議な感情を覚えた。
「ひょっとして、ううん、間違いない。ダーマは知っているんだ。星ひとつ滅ぼす力を持った『シュラ』を私たちだけではまだ倒す事はできないことを……」
「なっぴ、母船が見えて来た。頑張れよ」
彼女は、そう励ます「シロナガスクジラ」に元気一杯に言った。
「任せといて、必ず『シュラ』は止めてみせるから」




