銀竜
銀竜
勝ち残ったのは黒龍の方だった。竜化を解き、こっちに向ってきた「ギバ」は、しかし片方の腕が肩からもぎ取られていた。
「相打ちでないだけましだな、ギバ」
「これほどの奴がアガルタにまだいたとは……」
「お前がカイリュウ族で最強になったところで、そろそろ預けておいたものを返してもらうか?」
ダーマがギバに近づき、肩の傷に触れた。
「預けたもの……」
そう言いながらギバは一本の棒の様になったまま床に転がった。
「俺の新しい寄り代をな、ギバハチ殿。くくくっ」
ギバの肩から真っ赤なラグナの幼体が這い出してきた。何処に隠していたのかダーマは香奈の入った真珠玉をなっぴに見せると、それを握りラグナに入っていった。完全に沈み込む前に、ダーマはなっぴにこう告げた。
「ノアはシュラには感知できない。この星の生き物が滅んだとしてもやがていつの日か再び『ノア』から新たな命が産まれる。『神の子』の仕事は終わった。『シュラ』はいつの間にかはびこっている邪魔なやつらを掃除してくれる。わしは地上の『亜硫酸ガス』から身を守るため、シュラの中に入るのだ。だからお前の母『香奈』の力が必要だったのさ。残念だな地上で『シュラ』を一目見たかったろうに、間もなくこの洞窟は崩れ落ちる。クククッ」
ダーマは手にいれた新たな体でシュラの水槽に近づくと、「赤いマユ」の海水を抜いた。そして水槽の後ろの「チモニー」に消えた。それはおそらく地上への出口に違いない。地震が洞窟を襲う、落下する岩盤をミーシャが結界で防ぐ、なっぴは回復の呪文をミコに唱え終わると、石化していくギバに駆け寄った。
「そうか、お前は『香奈』殿の娘か。こんな深海までな……」
「しゃべってはだめ、石化が進む」
ギバは傍らの「ミコ」を見た。
「まるで、自分と戦っていた様だ、俺は勝ったのか負けたのか分からない」
「……手加減したな、ギバ」
回復したミコがそう言った。ミコは気を失っただけだったのだ。そしてもう一人のカイリュウを見た。ギバはなつかしいその姿を見ながら、こう言った。
「タケル様、あなたのお顔は『シルラ』様にそっくりだ。このアガルタをお守りくだされ」
「ああ、必ず守る。わしの国じゃ、ギバハチ。偉大な叔父上」
「ふふふっ、もったいない。このわしを、叔父上と呼ぶか。そうだ,王子、叶うなら最後にそのお姿を見てみたい、あなたの竜化したお姿を」
「でも、カイリュウの力はすでに失せ、なによりギバの目は、もう……」
セイレはそう言いかけた。その口をそっと指で塞ぐとタケルは立ち上がった。
「そうか、見るがいい、竜化!」
なれるはずのない呪文。それに合わせる様に「ギバハチ」はタケルの折れた短剣でまだ石化していない自分の胸をえぐった。残ったカイリュウの力を彼にあたえ、ギバはついに息絶えた。呆然と立ち尽くす『銀龍』、タケルが受け取った「その姿」をギバハチは見る事もなく冷たくなっていった。
「もう、これ以上は持たない。早く『amato2』まで戻らなければ」
ミーシャがみんなにそう言って結界を解いた。岩盤とともに大量の海水が流れ込んできた。その勢いは凄まじく、入り口まで行けそうもなかった。セイレはともかく、ミーシャとなっぴは溺れるか水圧で押しつぶされるしかない。
その時何かが近づいて来た。




