ラグナ・ノア
ラグナ・ノア
「まだ、強がるつもり。ダーマ、今のあなたに何が出来るというの?」
「うむ、強がりだと?」
「あれが、あなたの最終進化した姿でしょう」
ミーシャもセイレもなっぴを注視していた。
「なっぴ、あのラグナの正体が解ったの?」
ミーシャの問いかけに彼女は答えた。
「そうね、教えてあげましょう」
彼女は、こんな話をした。
「あれはラグナの卵、新しい命のつまっているもの、カオス(混沌)。『タオ』そのものと言ってもいいものよ、でしょう?」
「あれって蛹じゃないの、なっぴ?」
「蛹も卵も同じよ、中はドロドロに解けているじゃない、セイレ」
ミーシャがそう言ってセイレを黙らせた。
「そう、ダーマには蛹なんてない、『無変態』の生き物。ひろく知られているのは多足類『ムカデ』『サソリ』『クモ』に近い、まてよ逆か、その先祖だったわね」
「それは何度も言っていたぞ、わしはお前たちにな」
「そうね、でもあなたがラグナに取り込まれて消えたと思った私たちは、とうとう羽化するのだと勘違いした。あれをラグナの蛹だと思い込んでしまった。そうあなたがしむけたのね、ダーマ。そのか細い体を隠して何をするつもりだったの?」
なっぴはダーマに問いつめた。
「とてつもなく硬い殻、この中にあるのはお前の言う通り、この星の命の元だ。まだ生命体ではない、この卵の事をお前たちはようやくこう呼び始めた『マスター・シード』とな、これは『ラグナ・ノア』と言う、お前の言う通りラグナの最終段階は『卵』なのだ」
テンテンが何度スキャンしても生命反応がなかったのは、ラグナはこの中で分子にまで溶けていたからだった。この堅い殻と生命体の反応が消えた事からなっぴはこう推理したのだ。これは蛹ではない、では一体これは何のために?と。
「もうひとつテンテンが言った。ラグナにとって『亜硫酸ガス』はわずかでもかなりの弱点ってことだわね。それから卵を守るにはあまりにも分厚い殻ね」
「さっきも言ったろう、お前たちの攻撃から守るためだと、歯が立つまい」
「それはどうかしらね、私たちだけだと思うの、この星の巫女は?」
「その口ぶり。もったいぶるな、異界の『メシア』のことを言っているのだろう。しかし残念だが、とっくにシャングリラは塞いでおる。ここへは来れない」
「そうでもないのよ、ダーマ。じっとしている訳がないじゃない。ラグナ、あなたが守ろうとした『ムシビト』たちが」
「ムシビトたちを守るって? なっぴ」
今度はミーシャが驚いた、なっぴはくすりと笑った。
「まったく、ヨミもあなたも同じね。過保護ったらありやしない」
「過保護だと」
「きっと『シュラ』のコマンドはすでに書き変えられているはずよ……」
ダーマは笑った。そしてこう言った。
「おまえは恐ろしく、賢いな。『シュラ』のコマンドは俺がとっくに書き変えている。『異界の血を持つものは、その限りではない』とな。その時気付いたが、コマンドにはこうあった、『完了のために手段は選ばず、完了後は再生装置を破壊、速やかに自爆せよ』とな。まったく『シュラ』は念の入った破壊兵器だよ」
なっぴは話を再び続けた。
「あなたは、相当前から。きっと、この星に来たときから『シュラ』の存在を知っていたのに違いない。急いで自分の産んだ生命体を助けようとした。そのためシャングリラを使って異界に逃れたのね。シュラが目覚めた時のために、ムシビトたちの中からもっとも優れたヨミ族を選び寄生した。それは彼らに特殊な能力を与えるため。しかしその引き換えに彼らは命が短くなった。彼らの再誕を繰り返し強大な力を手にさせようとした。それは間違っているとは思えない。でも、生まれ出た命はその命が意思決定しなければならないはず」
「くくくっ、おまえも『ルノクス』の女王の言葉と同じことを言うものだ」
「ルノクス? あなたは『リカーナ』を知っているの」
「いやその母親『リリナ』のことだ」
「リリナ?」
「ああ、彼女は我々の『メシア』となった最初の巫女だからな」
大音響が二人の話を遮る、一体の龍がついに力尽き倒れた。それはミコ、緑龍の姿だった。




