13.5
自分で何とかすると言い張るロスと、本来ならば一緒に行きたかった。
だが抜けられない用事がある。
そもそもその為に学院を出て来たのだ。
高級店が並ぶ商業ストリートを歩きながら、ホノリアは迷うことなく目的の店へとやって来た。
白と赤の庇がお洒落な、レンガ造りのお店。
大きな窓から明るい日差しが注ぐ店内には、丸いテーブルと椅子が幾つも並び、甘い物好き達が美味しい紅茶と共に舌鼓を打っている。
金のフレームが美しいガラス戸を開けると、爽やかなベルの音が響いた。
外に出る時は、学院の制服は脱ぐ。
結い上げた豪奢な金髪には、宝石をちりばめたベルトを飾り、赤いドレスの胸元には真っ白なレースが飾られていた。
こつこつとヒールの音を響かせながら店内に入ったホノリアは、奥から出て来た黒のエプロンに白いシャツの男性に優雅に頷いて見せた。
彼はにこりと微笑むと、ホノリアの手を取って店の奥に案内する。
通路を行き、厨房を通り過ぎ、赤と金色を基調とした応接室に案内される。
「それで、首尾はいかが?」
ベルベッドのクッションが幾つも並ぶソファに腰を下ろしたホノリアが、後ろに手を組んで立つ男を見上げた。
「上々です、ホーリー」
その呼び名に、ホノリアの青い瞳にちらりと光が過った。
不意に光彩が赤く染まる。
「そう」
彼女の視線が、宙を彷徨い、入って来たのとは反対側にある扉に注がれた。
「…………ジャスティンは見つかった?」
しばしの沈黙の後、彼女は低い声で問うた。
男はそれに首を振った。
「いいえ、まだです」
「そ」
ふう、と息を吐く。それは安堵か……それとも失望か。
「早くしないと……終わっちゃうわよ」
掠れた声で呟いた後、ホノリアはすっくと立ち上がった。それからふわりと美しい笑みを見せた。
「では、どんな感じが見せてもらいましょうか」