表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

1


 色とりどりの煙と雲が漂う王都上空。


 紫とピンクの雲の間に目を凝らし、『ユノの端』の観察をしていたロスは、よれよれとした何かが視界を横切って行くのに気付いた。首からぶら下げていた金色の双眼鏡を取り上げ覗く。


「―――トリか?」


 なんとなしに独り言を呟き、薄い水色の瞳を凝らしてじっとその軌跡を見詰める。

 途端、明るいグリーンの煙がふわりと漂い視界を遮ってしまった。

 ち、と舌打ちし双眼鏡を下ろす。

 もう一度目を凝らしてじっと眺めていると、ゆっくりとグリーンの煙が晴れ、その向こうに再び、へろへろと飛ぶ何かが見えた。


「精霊か?」


 再び双眼鏡を構えて目を凝らす。


 ロスは精霊が好む『魅力』が高く、現代において『古代魔法使い』並に精霊の姿を眺めることが出来た。

 だがその精霊を使役するだけの力は無い為、やはり魔導学院在学中の他の生徒と同じように『コクーン』と『キャンディ』を使った『保存魔法』を主に使っていた。


 だが彼は良く、他の学生には見えない自分に力を貸してくれている精霊達を見た。


 今ゆっくりと……でも確実にオカシナ軌道を描いて飛ぶ『何か』もその精霊なのかとじっと見詰めるが…………どうやら違うらしい。


 第一に精霊はあんな風に『よれよれ』飛ばない。

 第二に彼は主に、キャンディに寄って来る精霊を見るのであって、あんなに離れた上空を飛ぶ存在を見たことが無い。


 となると。


「…………人か?」


 結果、出て来たのはその単語で。


「――空飛ぶ……人?」


 ―――なわけあるか。


 自分の突拍子も無さに鼻で笑い、双眼鏡を下ろそうとした瞬間。

 彼はぎょっとして目を見張った。


 何故なら双眼鏡の向こう、よれよれした軌跡を描くものの『実態』を、彼の氷のような瞳が捉えたからだ。


 それはまごう事なき……人だった。


 そう。


 黒のマントをはためかせ、濃い青のドレスを着、箒に跨って飛ぶあれは、れっきとした人間だったのである。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ