【商店街】 ーー帰還ーー
四人は顔を見合わせる。
「こっから地元に戻るにあたり、俺とキミエモンは問題無ぇんだけど、おめーら、どーも心配なんだよね…………」
北大路の発言に少々カチンときたのは西園寺。
「ちょっと待てよキタちゃん。俺をこのお調子モンと同格に扱うのは許せねーな。訂正してもらおうか」
ここですかさず割って入る、東海林[ショックアブソーバー]公右衛門。
「まぁまぁ、ハジメさんも昨日戻られたばかりですし、キタさんの言い方もキツかったですけど、心配のあまりつい。ですよ、ね、キタさん」
北大路には、訂正する気は全くないようだ。
「大丈夫だって。あん時はさぁ、亜空間からの慣性モーメントの調節が上手く行かなかったからちょっと着地に失敗したけど、今回は余裕だって! な、ハジメ」
当然のように共犯意識で同意を求める晴男に憮然とする西園寺。
「フンッ! 俺ぁあん時だって大丈夫だったわ! オメェがヒトリ先走ってチョーシこいた結果が、あのザマだったんじゃねーか!」
「俺⁉ 俺ひとりのせいかよ! マジでいってんの? あーあ、やってらんねーぜ」
「とにかく、お前ェさえチョーシん乗んなきゃ万事オッケイなの! わかったか!」
北大路の言葉にも、素直にハイとは、当然言えよう筈も無い。
「よっくいうぜぇ。核燃料背負って、あんなバンで250km/hも出しヤガってよ! 核融合炉⁉ 殺す気かよ!」
自己弁護の儘ならぬ苛立ちに、今更な事柄で浅はかに抵抗を試みるも、
「俺のテクをおめぇレベルで考えてんじゃねぇよ」
全くもって泰然とした北大路の表情に返す言葉はもはや思いつかぬ浅はかな晴男。
「チッ!」
「ま、とにかく、モードチェンジしてみましょうよ。ね、晴男さんも。皆さんも」
東海林はまたしても『メンドクサイ状況回避スキル』のポイントが上がったようだ。
「おうよ。……変~身っ! ……トリャァアぁあ!」
晴男の気が研ぎ澄まされ、天地鳴動かと思う程の気魄の渦と甲高い金属音と共にヘヴィメタルな外骨格に覆われ完全変態完了。
「………どうよ? どんなもんだぃ!」
以前にもまして、よりモダーンな、腰高でウェストの引き絞られた、メタリックの紫がかったボディが、マニアックなヒト型決戦兵器的装いの晴男を見て、三人とも何故かしら悔しそうなカオ。
「……フンッ、まぁまぁなんじゃねーの? カッコばっかじゃねぇ事を祈るぜ」
流石に、ポーカーフェイスが微妙に崩れた北大路がチクリと刺す。
「チッ! なんかデザインだけはカッコいいんだよな! 実力は伴わねーけど」
西園寺も既に、昭和のヒーロー然とした変態を遂げていた。
「イマジネイションが豊かなんだよ、ロマンチストだからな、オ・レ・は!」
「そんなヨタこいてて、またシクじらねぇようにな」
「だから! 『また』ってなんだよ! ……ま、いいや、んじゃ帰ろうか、マイホームタウンへ」
「パラシュート部隊で呑みたい気分だな」
「お、いいね。じゃ、キタちゃんのオゴリで」
「なんでそうなるんだよ!」
「ま、いいじゃないですか。はやく帰りましょうよ」
東海林は飲み会モードで気もそぞろだ。
晴男に倣って現代的装いのメタルアーマーにモードチェンジした一同は諸島上空の乱気流をブチ破り、とりあえず晴男と西園寺の慣熟飛行を兼ね、一時間程かけて地球をふた周りほどする。
今回は重力下での通常超音速飛行(マッハ64)だったので、何の問題もなく彼等のホームへと帰還した。
――この模様をたまたま通りがかってコッソリ見ていたシ・メール人は。彼らのオーラに間近で触れたが為に、数日寝込んだ末、闘争心が削ぎ取られたように引き蘢り生活を送るようになったという。――
夕日に映える蓮華市常楽町の町並みは相も変わらずシミッタレた街であった。それでも、ドッコイ生きてるしたたかさが、晴男には愛おしくてたまらない。これからこの街がどう転がろうとも、「俺はこの街を愛し続けて行こう!」なんて、ちょっぴりおセンチになる厄年のオヤジであった。
パラシュート部隊のススけた電光看板が逢魔時の街に灯る。人知れず、地球の平和をひとまず守った四人を迎えるように。
「おう! 寛吉ィ‼ 今日はこの店ごと俺らが飲み干すからな! ジャンジャンもってこい!」
「おう、そうかい。……で、おめぇ、ゼニはちゃんともってんだろうなぁ。あぁん?」
相変わらず呑気な寛吉の、平和な表情が晴男には嬉しかった。
「馬っ鹿野郎! クダラネー事言ってねーで、酒だ酒! 酒もって来んかーい‼」




