【診察室】 ーー師弟ーー
……静かな覚醒だった。ハッチがサーボ音の唸りと共にゆっくり滑らかに開く。各種デヴァイスはナーススミレの手によって瞬く間に解除され、晴男は優しく介助されながら起き上がる。
頸部をさすりながらスミレに一瞥をくれるも彼女はまったく意に介してはいない。
全てとまではいかないが、生まれてこのかた、いや、『帰還』してからこのかたと言った方が適切か、……まぁ、ずっと長いこと、引っかかっていたものがスゥーっと腹の底に落ちて行った。
しかし、込み上げる罪悪感はどうあがいても払拭出来そうも無い。
「なんてこった……俺達が、俺達の着地が、勢い良過ぎて……」
自責の念に浸る晴男にスピーカー越しに天地が語りかける。
「おはよう晴男よ。気分はどうじゃ?」
「……最悪っ。」
「ウヒョヒョヒョ、そうフてるな。こっち来て羊羹くわんか? 栗蒸しじゃぞ。」
「師匠、どんだけ⁉ もう、マジかんべんして!」
「なんじゃい! 地球を救うどころか瀕死の状態にまでしておいてよぅ。誰が尻拭いしたと思っとるんじゃい⁉」
なんということでしょう! 果心居士は、晴男たちが破滅に追い込んだこの星のこの世界の再生と復興を、富士山麓の地下1000M、世界中の科学者、化学者、物理学者からアスリートまで、その道のエリート達を招聘して秘密裡に建設されたジオフロントの『クライオ・チャンバー』の中でコールドスリープ状態となりながらも、じっと見守っていたのだった。
「此処に至るまで全部師匠の策略かよ!」
不貞腐れながら羊羹を頬張り、マキノ原の茶をすする。
「! (う、うめぇ‼)」
チラとスミレを見やる。
スミレはガン無視で自分の淹れた茶を静かに味わっている。
やはりこの女はタダ者ではないことを確認する。
「馬鹿言ってんじゃねぇ。全ては宇宙の必然のままじゃ。いくら儂でも異次元までは思念も及ばんよ、ましてや、おぬしらが惑星一個ぶっ壊すまでにパワーアップしてもどってくるとはな」
「…………どうだか……」
晴男は果心居士の言動、表情筋の動きから、何かまだ隠し事が亡いか探ろうとするも流石は師匠、その淀んだまなこは虚無しか映し出していないかのようだった。
「それはそうと、師匠、このホシが復興するまでの間どこでどうしてたの?」
この期に及んでまだそのようなメンドクサイ質問すんの? と果心居士は嫌悪の表情を浮かべる。
スミレが、啜っていた茶碗を静かにテーブルに置き晴男を見据える。
「おぉっと!」
晴男は、今度はバックをとらせまいと頸部を守りながら身構える。
スミレはフンっと鼻をならし、食器を片付ける。
「そんなことよりハルオよ、新しいミッション頼むぞぃ。なぁに、今回のミッションも、危険なことはチィっとしかないからよ! うひょひょひょひょひょ……」
「ブッ!」
お約束のように飲んでいたお茶吹き出す晴男であった。




