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翳り行く街の光と影  作者: いしかわがる
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【研究所】 ーー告知ーー

 ある日の食堂にて、黙々と栄養を摂る二人に東海林が話しかける。

「もうすっかり、現代に馴染まれたようですね」

「ああ、科学ってやつぁ、スゲーな。こうまで便利だと、ナマクラになっちまいそうだがな」

「いやいや、日々研ぎ澄まされてゆくお二人を見てますと、こちらまで血湧き肉踊りますよ。お食事が終わりましたらブリーフィングルームにお越し下さい。墨博士からお話があるようですので。」

「オーケー、もう食い終わるから、ちょい待ってて」

 ロースカツ一枚とキャベツ山盛りをガツガツとかっ込んで、ラーメンのスープで流し込むと晴男は西園寺を促し席を立つ。ーー


「おや、博士がまだのようですね。コーヒーでも入れましょうか」

 東海林はてきぱきと人数分のカップに注ぎ手渡す。

「実は、お二人の他にもう二名、時空を超えてこの時代に来た者がおりまして……」

「義経公だろ?」

 西園寺がカップのふちを齧りながら言う。

「ああ、そう言えば、お師匠が、そのうち会えるとか言ってたっけな」

「いえ、正確には、義経公の忘れ形見です」

「へぇ、そんなのいたんだ、……牛若Jr」

 興味津々の二人。

「義経公は果心居士殿の大のお気に入りだったようで、果心殿はかなり無理をして過去未来を往来しては元服なさるまで、お気に掛けていらしたようです」

 西園寺はすかさず問いただす。

「ちょっと待った! 所長さんが言ってたじゃない、時空移動は基本一方通行で。遡行は通念上も、ダイナミズム的にも不可能なはずだって」

「お前よっく言うよな!」

 ここぞとばかりにツっ込む晴男。

「俺のはチョロっと三秒ルールだろ!」

「程度問題かよ⁉」

「まぁ、難しいことは私にも分かりませんが、所長曰く、義経公の御嫡男、ここでの通り名は北大路紘慈さんですが。北大路さんと果心殿は特異点という存在らしいです」

「とくいてんン? ……どうも俺らの知識の範疇にそういった大事な要素が欠落してるようだな……師匠の意図的なプロテクトか? それとも……」

「もういいじゃねーかよ、要は、天が与えた才能があるかねえか、ただそれだけの事だろ?」

「お前はいいよな、能天気で」

「ふっ、いいだろ。ところで、もうひとりって……」

「それは君だ! 蜷川新右衛門親当改め、東海林公右衛門クン」

 西園寺は人差し指をのけ反らせ東海林を指差す。

「ええええ!」

 晴男は真剣に驚く。

 東海林もいささか驚きを孕むキョトンとした顔で

「いやぁ、流石のご洞察。別に隠してた訳ではないのですが、……なぜ分かりました?」

「あてずっぽう」

 胸を張って答える西園寺。

「マジッ⁉」

 二度ビックリの晴男。

 東海林も笑いを堪え切れない様子。

「いやぁ、っはっは……わたくし、こう見えましてわたくし、室町幕府では寺社奉行などという役職に就いておりました。生まれはお二人よりも100年程早いですが、いま現在、年齢はお二人よりも年下なので、どうぞお気軽にキミエモンと呼び捨ててください」

「そこまでヘリクダることもないんじゃない?」

「いやいや、おふたりのスペックが日々向上を続ける様を見るにつけ、拙者などとてもとても、取るに足りませぬ」

と、しまいには床に額ずく始末。

「大袈裟だって! 此処に居る時点であんただって、ジュウニブンにスーパーなマンじゃないの!」

「そうそう、めんどくせーから、五分の付き合いで行こうぜキミエモン!」

「ははっ! ありがたき幸せ」

「だぁから、面を上げい!」

 頑なな東海林に対し些か食傷し、隔靴掻痒の面持ちで言を放つ西園寺。

「ハハハ。忍のモンに頭を下げる奉行か、おもしれー」

 東海林のキャラに好感を抱く晴男の笑い声を掻き消すかのように、警報のサイレンがけたたましく鳴り響く。


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