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翳り行く街の光と影  作者: いしかわがる
17/42

【商店街】 ーー蛹化ーー


 夏休みも残り一週間を切り、輝男も連日のプール通いで見事なまでに焼けた褐色を友達同士自慢し合っている今日この頃。

 愛猫ウォッカは晴男が臨時収入でもって買い与えたネコタワーの天辺で快適な暮らしをエンジョイし、セキセイインコの〝テキーラちゃん〟も艶やかな藤色の羽毛の手入れに余念がない。

 悩み多きティーンネイジャーのボーイズアンドガールズは此の頃を境に蛹が羽化するかのごとく各々内なる己に覚醒してゆくものであるが、ここにも一人、漸く蛹に変貌を遂げようとする青春小僧がいた。

 南ビルのテナント、美容室『空』では、不意に飛び込んできたゲストに不知火流時とアシスタント風間忍カザマシノブは些か困惑していた。

「あら、トシ坊じゃないの、アンタ、その落ち武者みたいな髪の毛バッサリきって男らしくして貰いなさい」

 その美しい髪の毛を不知火に委ねながら、輝世は息子の友達に気さくに声をかける。

「あ、ハルちゃんのママ、こんにちは」近藤俊彦は微かに顔を赤らめながら会釈し、そして流時に向かい、「え、と、パーマをかけたいんですけど」と些か照れ気味。

「パ、パーマ? カットはどうするの?」

「渋みの効いたリーゼントにしたいっす」

 日頃頼りなげなガリ勉君の、いつになくキッパリとした物言いに少々違和感を覚えながらも、「じゃ、ちょっと待ってね。そちらに腰掛けて」といいながら、風間にアイコンタクトをとる不知火。

 アシスタントの風間に促され待ち合いのソファに腰掛ける近藤。

 優しくて気の弱い俊彦の突然の変化になにか懸念するところ有りといった面持ちの輝世。

 しかし、まぁ、トシ坊だってお年頃なのだから、あんまりイヂっちゃカワイソウ。と、捨て置く事とする。

 シルクのような輝世の髪の毛が不知火の手に因って芸術的なアールそしてアングルでまとめ上げられて行くシークエンスを羨望の眼差しで見つめる近藤少年であった。

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