【男同士】 ーー交流ーー
「おかえりぃ!」と嬉しそうにオヤジに飛び着く末っ子輝男。
「ただうぃまぁー」といいながら、唇を尖らせてチュウしようとするオヤジをいなし、フランケンシュタイナーの大技を繰り出す。
「て、テル坊……あんた、友達とかにこんな大技かけてないだろうね?」
「あったりまえでしょ。パパにだけ特別」
「あ、そう? パパにだけなら……って、いいわけあるかあぁあぁ! ヘタすりゃ首折れるっつーの!」
「パパにキスされたら僕が何かに感染してしまうよ。ヘタすりゃ死ぬ!」
「あぁ、そう、そんな事言ってパパに意地悪するんだね。じゃぁもう、パパと一緒じゃなくても寝れるんだね? フロも一人で入りなよね」
全くもって、大人げない。
「ダメだね! 絶対有り得ないし! ムリだから!」
末っ子輝男も父に負けず劣らず滅茶苦茶だ。
「つーか、なんでそっちが威張るワケ⁉ 頼みなさいよ! パパに。三つ指突いて!」
「わかったよ。パパ、お願いします!」
「のわぁああ! ! !」
晴男の額に、輝男の三本貫手がノーモーションで炸裂。首も折れよとのけ反る背骨。頸部から尾てい骨まで『パリパリパリ』っと軽快なサウンドが響く。
「あ、なんか猫背が治ったかも?」
「ハイハイ、輝男の勝ちぃ⁓。二人共、早くお風呂入っちゃってよ」
輝世の鶴の一声で、あっさり崩れるオヤジの権威。……あ、無いか、……初めからそんなもの………………
――今般のプロジェクト概要ーー
当面は南ビルを中心とした一極集中型のアトラクティブな要素を売りにしようというものである故、薄利多売の量販店は除外して、中山の提唱した構想に準拠するワケではないが、玄人好みの、付加価値を持つテナントを募ろうではないかと言う、些かハイソ感の否めない計画となった。先ずは、主に金と暇と教養を併せ持った富裕層にターゲットを絞り選民意識を喚起する、あくまでそれは、アトラクティブ要素の一環であり、街全体を排他的経済地域にしようとするものではない。それによって関係各位の利益と雇用を安定化させつつ、マニュファクチュアおよびクラフトマンシップに基づく天狗商売を大前提に、コングロマリットの利点を上手く抽出しつつ、アカデミックな街づくりを標榜する『製造と販売の高次元なシンクロによって訴求力を高めた商売屋の為の街づくり』がスローガン。
分かり易く言うと、『皆で一諸に楽しく金儲けしようぜ!』ってことだ。
晴男の根回しに因るメディアミックスと企業に因る後方支援、ひいては地方行政なども巻き込み、資本主義の恩恵を享受しながらも、準自治区化と、独立採算による自給率の向上とアンチテーゼを提唱する、一地方都市の片隅の商店街としては前代未聞の超ブっとんだ改革案なのである。
遊び人でヒマだらけ、且つ多方面に顔が効き、しがらみも外連味も無い南晴男を交渉の尖兵として、光も影も清濁併せて、利害各位の言質を取り、独自のコマーシャリズムに基づく資金調達の際の切り札を確保するのが当セクションでの元老院の目論見である。
江尻と山口、中山が地権者との交渉、地元金融機関との折衝、行政との連携と親好を着々と進める。猛田と桜井は、プロジェクトの代表者として各方面からの質疑応答が専らとなっていた。
急速に立ち上がったシャッター通りの復興計画は、今、地響きを上げ、着実に実現に向かい歩を進めていた。ーー
「ほうら、ちゃんと背中もこうやって、ゴシゴシしないと……。後でパパの背中もゴシゴシしてくれよな」
入浴タイムが父親と子供の主たるコミュニケーションの場なのは、長男の頃から変わらない。特に末っ子はパパとのお風呂が大好きなようである。
児童の可愛らしい声のトーンと入浴剤による蛍光グリーンの湯が1日の疲れを
じんわりと癒す。
「ところでパパはさ、何の実の能力者になりたい?」
「おぉっと、難しい質問だなぁ……そうさなぁ……ベロベロの実を食った妖怪人間かなぁ……」
「……ふぅん、僕はねぇ、……」
「ちょ、ちょっと待った! テル坊? 突っ込み処よ! ココ。 『それメリットあるの?』とか『ベロ限定かよ!』とか」
「ああ、もうウゼ。それって、メリットあんの」
棒読みでツッコむ輝男もまた可愛く、オヤジの回路にスイッチが入る。
「そうさなぁ、まず一人称『オイラ』になります」
「メリット? それ」
「そして、闇に隠れて生きる?」
「疑問符⁉ 考えフワフワ?!」
「そして心が清らかになるね」
「そりゃ、ヨカッタ……」
「一番のメリット! これ大事だぞ。良く聞けよボウズ。……一番のメリットは、死なねぇ……だ!」
「…………マンガだからね……つーか死ね! むしろ!」
輝男は手の水鉄砲でビュッと晴男のガンメンに攻撃をかける。
「あ! 親に対して死ねとか言っちゃいけないんだぞ!」
「パパマジ殺しても死ななそう。細胞一個からでも復活するでしょ!」
「ヒトをプラナリアみたいに……」
「ソコは『セル』っていうトコでしょ! 或いは『ブウ』」
「しかしよ、死なねぇのはメリットかね?」
「自分でいっといてナニそれ」
…… …… ……
この後、輝世に「早く出なさい! ゴハン冷める!」と叱られるまで、二人の間では悪魔の実を軸にした科学的な議論が展開されたのであった。




