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序章

 はぁ・・・はぁ・・・

 ―――昨日の魔法少女くるみちゃん、かわいかったなぁ。そういやフィギアまだ買ってないじゃん!でも3000円と500円玉一枚と小銭が四枚くらいしかないし、どう使おう・・・。

 はぁ・・・はぁ・・・

 時代遅れの八百屋、魚屋、肉屋、学校帰りに立ち寄るたい焼き店を右手に走り抜けて、突き当りを右に曲がりまた突き当りを・・・彼は立ち止まる。5尺ほど先のアスファルトの壁の上から黒猫がこっちを見ていた。気にしないではしりだす。だって今は遅刻ギリギリなのだから。


 ―――なんかいい方法ないか。あんまり損しない方法・・・。

 にもかかわらず昨日一番の幸せを思い返しながら走る。右、左 左、右・・・。

 ―――なんでこうも俺の通学路って曲がりが多いんだ。

 こういう時だからこそ考えてしまうことがある。

 ―――あぁ遅刻するぅー。そうだ! 結束ゆうきにお金借りて・・・。

 学校のこと、アニメのことどっちかに頭を働かせようとして、結局絡み合う。

ここまで走ってきたという行為の結果といえよう乱れた頭髪や制服、太陽、顔から首に滴る汗が彼を蝕む。それでも走るわけにはいかない。

 ―――突き当りを右に曲がれば道幅が広がり、十字路にさしかかるはず・・・。


「はぁ・・・はぁ・・・・・・えっ?・・・」


「・・・えっ!?・・・」


「・・・え!!」

 一度、二度、と見直し三度目でやっと我に帰った。三度も自分の目を疑ってしまった。それほど目の前の光景が信じられなかったのである。

 信じられなかったのは、

 目の前をこの世界のものなのかわからないほどの美しい、かわいらしい、黒いマントを着た、まるで妖精のような少女が走っていたとか、

 その少女の耳がこの世ではありえないと思っていたエルフ耳であったとか、

 その横にいた黒猫がさっきみた黒猫にそっくりだったとか、

 そしてその黒猫が小学校、年長くらいの少女の姿になったとか、

 確かにそのすべてが信じられないもののはずなんだが。そうじゃない。自分の目を疑った。いやちがう、目が奪われたのだ。エルフ耳の少女のしていた髪飾りに。


 少女を見た瞬間、あるいはその前から目の前が、自分の見ている景色が尋常じゃないほどスローモーションになったのだ。録画を0.5倍速で再生するかのように。こんな状況でほかの表現が見つからず正しいかわからないが、〈研ぎ澄まされた視覚であのかみかざりをしっかりとらえた〉ことは確かだとおもえる。


 そこからは、本来自分のものであるはずの身体、精神までもが反抗できないまま髪飾りに引っ張られていった。

 引っ張られた先はもちろん少女。彼女に彼は思い切りぶつかってしまったのである。


 ドンッ!!


「きゃあっ」「うわぁっ」


 両者ともに短い悲鳴を上げた。


 ぶつかっただけなのに、それだけのはずなのに、俺は意識を保てなった。つまり彼は倒れた。

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