【ネタバレ】第二節あらすじ【復習用】
引き続き第二節も。
使っていただければ幸いです。
「怪我が治らない知り合いを見てほしい」。
アイネミア病が突然の終息を見せた数週間後。友人クレイの頼みに応じ、椋は彼が指導役をしているという騎士見習い、ジュペスのもとを訪ねる。訪ね、状態を見て愕然とする。彼の右腕は広範囲に壊死し、壊疽(傷口から侵入した細菌により、体組織が死んで腐ってしまう状態)となっていたのだ。
ここ最近神霊術を避けるようになっていたというジュペス。アイネミア病の一連で神霊術が「免疫機能の活性化/循環体液量の正常化/代謝の活性化」の3つの効能を組み合わせたものだということを突き止めていた椋は「そうだろう」とつい口に出してしまい、運悪くその言をメルヴェリト、神霊術絶対主義者の少女マリアに聞かれてしまう。
「治らない」「どうすれば彼が治るのか治療プランを示してくれ」。何とか会話をしようとする椋の言葉に暴走したマリアは強制的にジュペスに神霊術を使用。壊疽により大量の毒素が腕に貯留していた状態から、循環血液量が増加すればどうなるか——とっさの機転を効かせたクレイが、創生術の使い手にして椋の知己ヨルド・ヘイルを呼び寄せたことにより、かろうじてジュペスは一命をとりとめた。
異常事態に愕然としながら、それでも椋はジュペスを治すことを決意する。
この急転の場に祈道士として居合わせていたクレイの妹ピアと弟分リベルトの協力を得て、ジュペスの身柄をピアの実家ルルド家へと移し、椋は「治療」に入っていくことになった。
その道もまた、この国の国教メルヴェ教に逆らう、異質のものだった。
ジュペスが敗血症(全身に細菌がめぐり入り込むことにより重篤な炎症を起こす病態)一歩手前であると考えた椋は、彼を治療するためにはその腕を切断するしかないという結論に至る。それはメルヴェの教え、神から与えられた五体の満足を重要としみだりな損壊を禁ずるそれに反しうる治療法だった。
しかしジュペスは治療を、自らの生を椋に願う。かくして異世界の治療法は実行され、ジュペスは右腕を引き換えに命をつなぐ。
だが困難はこれでは終わらなかった。四肢、身体の損壊が厭われるこの世界には「義手」がない。作ろうとする物好きもいない。伝手をあたってみるもののことごとくフラれてしまっていた椋は、街はずれで非常に精巧な人形を売っていた女性リーと知り合う。
ほかの誰もが首を横に振った依頼を、リーはあっさりと承諾した。裏で何が起きているのかも知らず、自分が何を巻き込み何に巻き込まれているのかも知らず、椋はただひたすらに義手づくりに没頭する。
己の命が狙われていることなど、椋には知る由もなかった。
順調に思えた中、ある雨の日、ひとりの貴族が殺される。
この現場に居合わせたのはジュペスの一件で自宅謹慎処分になっていたはずのマリアだった。「黒い人影」が目の前の人物を殺害するのを目撃した彼女は、その憎しみのままに椋の名を高らかに口にする。
無実の罪の容疑者としてとらえられてしまう椋。連続殺人事件を、そしてこのエクストリー王国に流れ込み始めた禁忌の品、人をどこまでも完璧に模すことのできる人形、レジュナ【傀儡】とその作成者レジュナリア【傀儡師】を追いながら、椋に魔の手が近づいていることを知りながら、彼がとらわれることを止められなかったカリアは、苦しみながら椋に「次」を願うことしかできなかった。
そして椋の軟禁を聞き、治療によって回復したジュペスは騎士団に復帰。クレイとともに椋の無実を証明すべく動き出す。
同時期ヘイとリーは依頼を受ける。受けざるを得なくなる。
それは「彼女」の密入国を証明するための、短くつまらない血まみれの旅だった。
徐々に事実が明らかになっていく中、軟禁の日々を送る椋の前に一人の男性が現れる。ライゼルと名乗ったその男は、なぜここから出ようとしないのかと椋に問う。
椋は答える。信じているから。椋の無茶を友人たちが信じてくれるように、椋が何もしていないことを彼女が、彼が証明してくれると信じているからだと。
それは正しく相手の望んだものではなかった。気絶させられた椋は王都の端、使用されなくなって久しい地下神殿に囚われる。
男は正しい名をグライゼル・シェンディーリフ・ユヴェントといった。
以前はグライゼル・アイゼンシュレイム・ラピリシアという名だったらしい、カリアの叔父だった。カリアを単独で呼び寄せた彼は、周囲にこの国にあるすべてのレジュナ【傀儡】を置いたうえで、1か100かの選択をカリアに静かに迫る。
椋を救うか、椋ごとレジュナ【傀儡】をすべて焼き払うことでアンブルトリアを救うか。
しかしカリアは彼の望み通りには動かなかった。彼女は欲張った。100でも1でもなく、101を願い、その欲張りを椋も信じた。
かくて術は成功する。すべてのレジュナ【傀儡】は失われ、椋は救出される。あとに残ったのは、明かさなければならないそれの「出元」、謎の人形師リーについてのことだけだった。
誘滅の狂踏師リシア・プロシェス。それが義手づくりを可能とした人物、リーの本当の名前だった。
「彼ら」の計画に使いつぶされるはずだった彼女は、すべてを明かした後に椋へ己の死を願う。生きるために奔走する椋に対する正反対の願いに、椋は頷いた。
さらに今回の騒ぎも受け、国王アノイは椋に表舞台に上がる決断を迫る。このままではいられない。医療者であるため、自分に嘘をつかないための選択肢は、たったひとつだけだった。
後世にまで長く語り継がれる異質の「劒」が、誕生した瞬間であった。
こうして椋は、歴史の表舞台に大々的に上がることになる。
待ち受ける闇についてはまだ、やはり知らない。




