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行方知れずの例のアレ1


「あっかーねーちゃあああああん!」


 疾風の部屋の扉が勢いよく開き、弾丸の如く那由が飛び込んでくる。

 雑誌を読んでいた茜は飛びつかれた拍子に体勢を崩しそうになって慌てて床に片手をついた。


「な、那由ちゃん!」

「……那由てめえ……」


 目をぱちくりさせる茜をぎゅーっと抱きしめてすり寄る那由を、ベッドの上の部屋の主は眉を吊り上げて睨んでいる。その手は倒れかけた体を支えるように肩に添えられていて、茜としてはそちらの方が気になって仕方ない。

 すったもんだの末二人の関係性に変化があって一か月ほど、まだまだ疾風にされることにいちいち反応してしまう。だが彼は最大の恥を晒してしまったせいか、これ以上はないとばかりに開き直ってしまっていて限度はありつつも欲望のまま、という感じだ。悔しい。


「お前は毎度毎度毎度っ! 邪魔すんじゃねえっ!」


 二人が放課後を一緒に過ごそうとすると、だいたい那由と遭遇する。あいつの嗅覚化け物だろ……と疾風が文句を言っていたのは彼女には内緒である。


「えー、いいじゃん、どうせお部屋デートとかなっさけないあれでしょー? ね、茜ちゃーん!」

「え、あ、あの……?」

「情けないとか言うなっ!」


 軽快な口喧嘩が繰り広げられる真ん中に挟まれた茜はおろおろとするばかりだ。

 普段は茜が那由の位置にいて夕紀が仲介してくれるのでわからなかったが、仲介役というのは結構に困るポジションだ。正直どう宥めていいかわからない。


「というか自分は柔らかいベッドで、茜ちゃんが固い床の上ってなに? 気遣いできなさすぎじゃない?」

「えっ!? いやこれは私が床がいいって言ったから!」

「茜がこっちは絶対床じゃなきゃ嫌だって言うから仕方ねぇだろ!」


 茜は、ひっそりと頬を赤く染める。名を呼ばれることにも、まだまだ慣れていない。


「ああ、疾風のベッドなんて嫌だよね! ごめんね、茜ちゃん!」

「どういう意味だっ!」

「信頼されてないってことじゃなぁい?」

「し……っ! なんもしねぇよ! とにかく今すぐ出てけ! 邪魔だっ!」

「茜ちゃんと仲良くしたいだけなのにぃ」


 疾風は立ち上がって今にも掴み出しそうな迫力がある。やりすぎると本当に実力行使に出られるので、口を尖らせた那由は大人しく茜の腰に回していた腕を外した。ただし、彼女の傍からは離れなかったけれど。



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