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去り行く嵐


「茜、お前駅行くだろ? 送ってく」

「え!? いや、悪いし!」

「茜ちゃんってば控えめ! でもそんなとこもかわいー!」

「那由黙れ。こっから駅までの道、どうせわかんねぇだろ」

「ナビアプリ使うからいいって!」


 申し出自体は嬉しいのだけど、それだと疾風はなんの用もないのに家を出なければいけないことになってしまう。それが申し訳なくて遠慮する茜を、ようやく茜から離れた那由が引っ張る。


「疾風が送ってくれるって言ってるんだから、素直に甘えちゃえばいいんだよ? 使ってなんぼだよ?」

「つ、使う?」

「那由ホント黙れ! 茜も! 俺が送りたいからいいんだよ! 素直に送られろ!」

「ぁ、う……」


 送りたいなんて、疾風の口からそんな言葉が聞ける日が来るとは思わなかった。本当にそろそろ心臓がやばそう。

 赤い顔で固まった茜の手を疾風が那由から奪い、強引に引く。


「やーん、疾風ってば大胆」

「うっせえな! ついてくんなっ!」

「えー、私だって帰るもん! 茜ちゃんと一緒に帰る!」

「一人で帰れ!」

「疾風ひどいっ! 茜ちゃん、こんなやつ彼氏になんてしちゃダメだよ!」


 疾風に握られた手とは逆の腕に那由がしがみつき、ベッと舌を出した。


「心のせまぁい疾風になんか言ってやって、茜ちゃん! 私はただ茜ちゃんと仲良くなりたいだけなんだから!」

「茜を巻き込むなっつってんだろ!?」

「あ、あのっ! 私も那由ちゃんともっと話してみたいな、なんて……?」


 そろそろ本格的に喧嘩を始めそうな雰囲気になるのを仲介しようとして口を挟んでみたものの、疾風の顔がまた険しくなり逆効果だったかと焦る。

 だが彼はそれ以上の反応を見せなかった。むしろ「茜が言うなら」とそう言って、折れてくれた。

 口喧嘩ばかりで折れるところなんて見たことのなかったと驚く茜の腕を那由にそっと引かれる。彼女は疾風に聞こえないように茜の耳元でこっそりと言葉を紡いだ。


「心配しないでね。茜ちゃんは疾風に愛されてるし、私は他に好きな人がちゃーんといるから」


 応援してくれると嬉しいなっ! そう言って笑う那由に、茜は本心から頷いた。



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