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知りたかった、本音


「……それ、本気で言ってんの?」


 驚きと怒りをはらんだその声は予想外で、顔を上げた疾風の眼光があまりにもまっすぐに茜を射貫くから、びくりと涙が止まる。


「俺がお前を好きじゃない? んなわけねえだろ馬鹿かっ!?」

「なっ!?」


 反射的に怒鳴り返そうとしたらぎろりと睨まれ、怯んで口を閉じた隙に疾風が言葉を叩きつけてくる。


「好きじゃなかったら、なんで毎日毎日同じことで悩まなきゃなんねえんだよ!」

「……え?」

「なにすりゃ喜んでくれんのとか、どうすりゃ笑ってくれんのとか、付き合うってなんなんだとかっ」

「え? ……? あ、あの……?」

「結局怒らせて喧嘩してばっかだし、むしろ付き合う前より会話減るし、那由に相談したら馬鹿にされて大爆笑されっしっ」


 戸惑う茜の声も聞こえていないようだった。


「それなのに俺がお前を好きじゃないだとっ!? 好き過ぎてどうにかなりそうだっつのっ!」

「!?」

「だいたいな! お前が図書委員じゃなかったらあんな面倒な委員会入らねえんだよ!」

「え、と、図書委員!? なんの話?」

「一目惚れしたんだよなんか悪いかっ!?」


 怒りなどすっかり霧散して、ただただ困惑する。図書委員はじゃんけんに負けたと聞いていたし、一目惚れなんて、それこそ寝耳に水だ。疾風と一目惚れという単語が結びつかなさすぎて、……一目惚れってなんだっけ。

 眉を八の字に寄せて戸惑った茜の顔に、疾風はようやく我に返ったようだった。口を手で覆ってヤバい、という表情をして、どんどんどんどんその顔が赤く染まっていく。見たことのない、顔だ。


「は、はやて……?」

「こっち見んなっ!」


 ふわりと、言葉の勢いとは裏腹に優しく疾風の額が茜の肩と触れる。


「……疾風、今のどういうこと?」

「聞くなっ!」

「疾風」

「うるせぇ!」

「疾風! ……お願い、」


 信じたい。信じさせてほしい。

 しつこく食い下がる茜に根負けした疾風が顔を上げて、また茜を睨む。だけど耳まで赤いせいで、怖さはまったくない。


「ああもうっ、そのままの意味だっつの!」

「一目惚れって、なに?」

「一目惚れは一目惚れだろ!? 必死で接点探してたんだよっ!」

「じゃんけんで負けたっていうのは、嘘……?」

「本当はなんの委員会も入ってなかったのに、お前のクラスのやつからお前が図書だって聞いたから代わってもらったなんて馬鹿正直に言えるわけねえだろっ!?」

「……私、自惚れていいの? 疾風も私が好きだって、自惚れても、いいの?」

「自惚れもなにもっ、さっきから好きだって言ってるだろ!? いい加減に信じろっ!」


 絶対言うつもりなかったのにと悪態をつく真っ赤な疾風に、自然と口角が緩んだ。



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