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ラストメール

作者: 桔夜読書

42×40−三行くらいで書かされた作品。

あれですね。短いなかで起承転結を意識するのはなかなか難しいですね。

何はともあれ長編の更新をはやくせねば…

部屋の隅で携帯を開く。そのまま慣れた手付きで受信メールの画面を開く。


『今日は楽しかったね』


彼からのメール。付き合ってから殆ど変らない、いつも通りのシンプルな文面。でも、本当のこと。送ってくれたことを感謝するメールを返すと、すぐに返事がきた。


『うん。次はどうする?空いてるなら今度の土曜日がいいんだけど・・』


彼にしては珍しいお願い。断る理由なんかあるわけないけど、少し気になったので訊いてみると、少し時間をかけて返信がきた。


『他の日は少し都合が悪くて・・』


珍しく歯切れが悪い。でも真面目な彼が嘘をつくことなど有りえない。いや、できない。なので、そこまで疑ってないけど少しだけいじわるで、困らせてやりたくてしつこく訊いてみた。さらに時間をかけてきたメールには言葉は少ないけど、困る彼の様子が伝わった。


『その日なら他の日より、凄く楽しくなるから、多分』


笑ってしまった。自信なさげで、でも精一杯なメール。大体のことは分かったし、これ以上は勘弁してあげようと思い、オーケーと送り、携帯を閉じてお風呂へと向かった。返事は見なくても分かるから。


『ありがとう』




それを最後に、彼からのメールは止まった。



今日は、約束した土曜日。赤くなった目元を擦りながら、受信メールを見返す。慣れた手付きで、何度も、何度も。彼の死を信じたくなくて、メールが来ると信じたくて。


でも、来るわけない。彼の命も、メールも、止まったのだから。


不意に、インターホンが鳴る。咄嗟に弱った体で走り出す。


彼が来た。迎えに、来てくれた。悪夢から覚めて楽しい一日を・・


「あ、あの・・宅配便です・・」


そんなこと、あるわけなかった。この目で、確認したのだから。


座り込みたくなるのを堪え、荷物を受け取りベッドへ倒れこむ。涙も枯れ、泣くことすら面倒で、目を開けたら彼がいることを願って。


気づけば、閉め切ったカーテンから光が差し込んでいた。当然、彼は居るはずもなく、あるのは荷物が一つ。差出人の名前が目に入った。彼だった。


それに気づき荷物に駆け寄り、震える手で箱を開ける。中には小さな指輪と一枚のカード。


『大好きです。ずっと』


笑いと、涙が零れた。枯れたと思っていたのに。だって、不器用のくせに、こんな洒落たプロポーズをするなんて、ずるいじゃないか。


『私も、ずっと大好きです』


言葉ではもう届かないから、心の中で最後の返事をする。


涙が、頬を伝ってカードに落ちた。

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