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Holy night

作者: 桃月

今日こそは、今日こそはあの子に告白をするつもりだったのに.....

「ほら!!佐々木君、ボーっとしてないでちゃんとレジについて!!」

なんでこんな目にぃいいいいいいいいいいいいいいいーーーー!!!!!!




――Holy night――




いつも飽き飽きしていた毎日

見慣れた風景

そう、俺は平凡な学生だ。

しかし、そんな平凡学生な俺に天使と思えるような女の子が傍に舞い降りてきた。



―3ヶ月前―



「転入生!?」


「そそ!!噂じゃあとびっきり可愛い美少女らしいぜ?」


この話に大勢のヤロウ共が食いついてきた。


「おい悠、マジか!?」


「ああ、マジマジ!」


教室はその転入生の話で持ちっきりだ。

もちろん俺はデマを流していたつもりだった。

(転入生?転入生が可愛いというのはドラマやアニメの話だろ?実際に転入してきた女の子ってだいたいは期待外れに決まっているぜ)

クラスのヤロウ共はもう俺を信じ込んでいる。


「席に着け!!!!」

っと、ここで学園一の鬼先生(そしてハゲの異名を持つ)、北原が教室に光臨した。


(相変わらず頭が寂しいな、あの先生・・・w)


「よし!!静かになったな!!今日からお前達と一緒に勉強をする転入生を紹介しよう」


「「「「「おぉおおおおおおおお!!!!!」」」」」


ヤロウ共が喚きだした。

もちろん俺もこっそりまざっている.



「静かにしろーーー!!!」


――シーン――


「では紹介しよう。君、さぁ入りたまえ!」


ガララララッ―


ドアがスライドし、皆の目線がそちらに集中している。

周りの奴等全員が息を呑む。

華奢な体、肩にかかるぐらいのストレートな髪、顔は小さく目がくりっとしていて可愛らしい.....。

教卓に向かって歩いているその歩き方がその子の魅力をさらに上げている。

俺はまるでどこかのトップアイドルでも見ているようだった。


「初めまして、青海学園に転入してきた宮下渚です。皆さんよろしくお願いします」


シーンとしていたクラスが一気に盛り上がった


「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」


「「「「「「「「俺達の時代がキターーーーーー!!」」」」」」」」」


「宮下さんって言うんですか!?よろしければ僕にメルアドorケーバンを教えてくれませんか!!?」


「この野郎!!抜け駆けしてるんじゃねーーー!!!!宮下さん!!俺に!!この俺に!!教えてくれないか?」


「俺が先だぁあああああああああ!!!!」


「いや!!!!僕が!!!!!!!!!!!!!!!」


教室は男達の熱意で満たされていた。



ゴクリッ

その仲で俺だけが再び息を呑み込む。

何が期待外れだったんだ?

(めっちゃくちゃ可愛いじゃんか!!!!!!!!!!!!!!)

見事に俺の心にもクリーン・ヒットしていた。

佐々木悠、17歳、夏休み明けの一目惚れだった。



まぁ、それから色々あった。

その子を争って体育の時間にクラスのヤロウ共とグランド12週走るのを競ったり、だれが彼女のメルアドを早くゲットできるか勝負したり・・・。

それは悲惨な闘いだった。

しかーし!!

俺も負けれなかった。

そしてメルアドをゲット!!

そこから俺は他のヤロウ共に負けないと必死でメールをその子に送りまくったよ。

そして、仲良くなり野郎共を抜け駆けをさせてもらったさ!!

その後、俺は宮下さん・・・・もとい渚(苗字じゃなくて名前だぜ?他のヤロウ共、羨ましいか!?)と親密な関係になったんだ。



俺の時代キターーーー!!!




で、今に至るわけだ。

今・・・?


「そーだよな.....。俺、今日渚に告白する予定だったんだよな〜」


その俺は今バイト先のコンビニでレジを勤めている始末。


「“クリスマス・イブ”っていうのに・・・・こんなのありかーーー!?」


(くそー!!店長め!!いくらクリスマス・イブに客がたくさん来るとは言え、俺だけにこんな仕打ちはありなのかよ!)


―――ブー!ブー!―――


(メールか?渚からか!?)

ズボンのポケットから店長に見えないように携帯を取り出した。

俺は素早く確認した。

(おっ!!渚からだぁ!!!)

ガッツポーズを決める。

もちろん心の中でだが......。


「何々?今日会えないか?・・・・・・ってええぇええええ!?マジ!?」


店内に俺の驚愕した声が響く。


「こら!!!!!!佐々木君!!静かにしないか!!」


「す・・・すみません(汗)」


いや・・・でも渚からこんなメールがくるとは流石に思ってなかった。

そりゃ叫びたくなるぜ!

つかやっぱりイブの日にこんなメール来るって事はやっぱり・・・!!

(告白か!?)

俺にはそれしか思い浮かべることができない。

(OK、渚!!俺も君と会うことを望むぜ!)

すぐに返信を打つ。


[今日?・・・・会えるよ!待ち合わせ場所と時間は?]

[えーと・・・、9時に○○公園の噴水広場で待ってるね(笑)]

[わかった!!それじゃ俺も9時にはそっちにつくようにするよ]

[うん、りょ〜かい(笑)それじゃ、バイト頑張ってね^^]


渚の一言一言が心に広がっていった。


『バイト頑張ってね』


「くぅううううううう!!!!たまらん!!!」


今度はもちろん小声で言ったぜ?


「店長!!!店長!!!俺今日8時ぐらいに上がっていいですか?」


「8時か〜・・・まぁ、君次第だね〜!」


「俺次第だって?・・・店長、その言葉ちゃんと覚えていてくださいね?」


「わかった、わかった!ちゃんと覚えておくよ」


よしゃああああーーーーーーーーーー!!!

レジを素早く打ち、相手に商品を渡す!

これぞレジの必勝法だ!!(多分だけどな・・・w)




―――――――――――――――――――――



――――――――――



――――




「はぁ・・・はぁ・・・くそー!」

少し息が荒くなってきた。

やっぱり前半飛ばしすぎた所為だろうか?

今何時か知りたくて携帯を取り出してみる。


「もう8時か!?」


そろそろ上がらせてもらうか!


「店長!!俺、もうあがりますよ?」


「あーごめん、佐々木君!!畑野さんがもう少し遅れるらしいからもう少しだけ働いてもらえないかな?」


「えーーーー!?マジですか…」


ここはやっぱり渚を優先するべき・・・・・・なんだけどな。

やっぱり店長には今までこのバイトでなんだかんだ世話をかかせてしまっているんだ。


「・・・はぁ〜、わかりました」


「ごめんね!!すぐに畑野さん、来ると思うからね!」


店長のフォロー等もちろん宛にならないと俺は期待した。

とりあえず渚にメールを入れておく。


[ごめん!今日少し遅れる!]

[何かあったの?]

[同じ同僚の人が少し遅れるらしいんだ。だからその人が来るまで俺が代わりにしとかなきゃいけなくて・・・・(汗)]

[・・・・・そっか〜。わかった、なら仕方ないよ(笑)]

[ほんとごめん!!]


「はぁ〜〜〜〜〜〜」


渚になんて申し訳ない…。

自分はいつから女の子を待たすくらい偉くなったんだろう?


「はぁ〜〜〜〜〜〜」


もう一度ため息がこぼれる。

(とりあえず・・・代役が来るまで頑張るか!)






―――1時間後。


「ごめん!!ホントごめん!!」


「ああ、別に気にしてないですよw!」


あれから一時間後、ようやく畑野さんが来てくれた。

どうやら畑野さんの弟が風邪らしく、看病をしていたらしい。

それで弟が少し落ち着いたので急いで来たと言う。


「ホントごめんなさい!!」


「いえ、もう大丈夫ですよ!だから気にしないでください」


畑野さんが必死に謝ってくるのだ。

そこは男として・・・・もとい“漢”として許すべきだろう?


「ところで佐々木君」


「店長、何ですか?」


「時間は大丈夫なの?」


「え・・・・?」


携帯を取り出し時間を見てみる。


―9:30―


「・・・・・・・・・・」


えーと・・・つまり?


「しまったぁあああああああああああああああああああああああ!!!!」


俺の声が店内に響く!!

今更だが轟音だ!!

店長に怒鳴られているのを無視し、携帯を出す。

メールが1件きている。

もちろん渚からだ!!


[ごめん、もう公園に着いちゃった(笑)悠はバイト何時ぐらいに終わるの?]


(やばい・・・このメール来たの8時40分ってことは50分も放置してたのか?)

くそ!!気づけよ俺!!

急いで私服に着替え、コンビニを出た。




「ッ!!!外かなり寒いじゃんか!!」


外は雪が結構降っていて、どこかの北国のような寒さと思えた。

(渚・・・あいつこんな寒いなか約束の時間の20分前から待ってたのか?)

急いでいるつもりなんだが降ってくる雪と風がジャマをしてくる。

コンビニから公園までだいたい歩いて30分ぐらいの距離だ。

それが雪と風がジャマをするので50分はかかりそうな勢いだ。

俺は携帯を手に取り、渚に電話を入れてみた。


プルルルル、プルルルル、プツ!


「渚!!ごめん、俺バイト遅くなって―――」


「おかけになった電話番号は――――」


「・・・くそ!!」


やっぱり怒って帰ったんだろうか?


「そりゃ・・・そっか」


短かった青春だな〜と思いながら、俺は希望を捨て公園へ向かった。



―10:30―


「・・・・やっぱりな」


思ったとおりだ。

公園には誰もいない。

俺は噴水近くまで行ってみた。

(確か・・・この辺が待ち合わせ場所だったよな?)

俺は噴水近くにあったベンチに座り込みながら、ここに着く前に買っておいたコーヒーを開け、ぐいっと口に入れた。


「くそ、なんでこう俺って決める時に決めずにいるんだろうな」


自分を責めても何も出てこないのは知っている。

だけど・・・


ポタッ!!


「あッ・・・」


俺の目蓋からキラっと光るモノが雪の地面に落ちた。

それは暑くて少ししょっぱい水。


「くそ・・・くそ・・・・・ッ!」


後悔だけがだんだんと広がってくる。

馬鹿だなぁ、俺。




―――どうしたの?―――




「ぇ......?」


後ろから彼女の声が・・・・渚の声が聞こえてくる。

だけど、俺は振り向かなかった。

(きっと幻聴だよな。・・・渚がこんな時間まで待っていてくれるはずが―――)

ギュッ!

俺を後ろから抱きしめた。

誰が?


「・・・渚?」


「遅すぎだよ?この2時間ずっと1人っきりで待っていたんだよ?」


「ごめん」


後ろへは振り向けない。

今の俺は泣いてるから。

どうしようもない罪悪感でいっぱいで、

でも渚がいる事に嬉しくて・・・。


「不安で、メール帰ってこなかったから、帰ろっかな?って思ったりもしたよ?」


「・・・ああ」


「でも“帰れなかった”。悠が来るのをずっと信じてた」


「・・・・・・」


「私ね、実を言うと転入してきた当初、悠の事あんまり好きじゃなかったんだよ?」


「・・・そうなんだ」


「だってさ〜、いきなり“美少女転入生”で噂を広めたんだもん、周りの目線とかで凄く辛かった」


ちょいと凹んだ。

確かにあれは俺の責任・・・というか明らかに俺が悪いだろう。


「でもね」


「?」


「でもね、悠がしつこいくらいアプローチしてくるからね、その内に悠を知っていく内にだんだんと私も悠と一緒にいて楽しいって、もっとこの人を知りたいな〜ってそう思った」


「・・・それってどういう意味なんだ?」


「はぁ〜!ここまで言えばわかるよ?」


振り返ってみると、

そこには俺の愛しい人の顔が・・・そう、俺の目の前で

二人の唇が重なり合った。


「ん・・・」


数秒間だけだった。

その数秒間がとても長く感じていたのは俺だけだろうか?

いや・・・多分渚も俺と同じだっただろう


「これが私の気持ちだよ」


よく見てみると彼女の顔が真っ赤になっている(これはもちろん俺もだが・・・・)


「俺・・・俺も!!!――――」


その続きを言おうとした時、渚からの二回目の奇襲が俺を襲う。

今度は地面へと俺を押し倒して、抱き合い・・・長かった時間を思いながら、ようやく二人が繋がった気持ちを確かめ合いながら

俺達はクリスマス・イブ・・・・・・“恋人達の聖なる夜”を過ごした



日付は既に25日、クリスマス。

でも、”俺達のクリスマス・イブ”・・・恋人達の夜はまだ終わらない。


「ねぇ?」


「ん?」


ベンチに座りながら抱き合う二人、俺・・・そして渚。

 


俺はこの日を忘れない。


   絶対にこの日を忘れないだろう。


   これから先俺たちに何かあっても・・・


     俺はそれから逃げない。


     だってこの聖なる夜に俺達は結ばれたのだから


     だからこれはきっと神様の贈り物だろ?


          そうだろ?渚








            『私達・・・・出会えて良かったね!』







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