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聖域ー星を探してー  作者: 風橋凪十


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5/8

Wishing you were somehow here again

星は、まだ消えていない――。


この物語は、作者が「こんな子と友だちになれたら」と思って書きました。

子供の頃に夢を諦めかけた人、そして今も何かに立ち向かっている人たちへ。

主人公の十和と一緒に、霧の中を進み、”北”を探す旅へ出てください。

迷っても、立ち止まっても、北は必ず教えてくれる――。

彼女が最後に見つけるものを、あなたもいつか手にできますように――。

※ AIによる補助で制作した作品です。

第5話、真実の先に待ち受ける未来とはー

暗い部屋。

モニターだけが光を放ち、沈黙が広がる。

音華の顔が青白く染まる。

画面の向こうに漂う霧――その中央に、十和がいた。

「……十和ちゃん……?」

音華の声は、誰に届くこともなく空気に溶ける。

十和は座り込んでいた。前髪で表情は見えない。

けれどそれ以上に、心の奥の何かが削られていくのが伝わった。

「どうして、こんなことに……」

その時、画面の端にマリアが姿を現した。

白いドレスをまとい、まるで聖女のような微笑を浮かべて。

『やっと“二人”を分ける時が来たのね。』

「……マリア……!」

音華の手が無意識に拳を作る。

けれどガラス越しの彼女には、届かない。

十和が顔を上げた。

その瞳に、まだわずかに“意志の光”が残っている。

「……やっぱり…“私”が…狙いだったの……?」

『そう、あなたが邪魔だから。

 私の大切な人に影を落としているから。

 音華はただの囮、傷一つつけていないわ』

「やめて……十和ちゃんはそんなの関係ない!」

『あなたを監視していたけど、洗脳よりこっちの方が良いみたい。』

『見なさい。あなたが信じた人が、どう“利用”されたのか。』

その言葉の直後 -画面が切り替わった。

十和の前に、映像が投影される。

十和がよく話していた”先輩”だ。

だがすぐに、その表情が冷たい機械のように変わっていく。

「や……めて……!」

十和の声が震える。

「違う……そんなはずない……!」

「マリアっ!!」

音華が叫ぶ。拳でモニターを叩く。

でも、ただノイズが走るだけだった。

マリアが十和の肩に手を置く。

十和の背中が小さく震えた。

その指先は優しげに、しかし冷たく首筋をなぞる。

『あなたの“信じる力”が一番美しいの。

 だからこそ、それが壊れる瞬間を見たいのよ。

 知ってる? ―人が壊れていく過程ほど、美しいものはないの。』

十和の表情が崩れた。

呼吸が乱れ、声にならない声が喉を掠める。

「……音華……。ごめん……。守れなかった……」

「十和ちゃん! やめて、そんなこと言わないで!」

でも音華の声は、もう届かない。

十和の瞳から光が消えていく。

それは、強く優しい人ほど壊れやすいという、残酷な真実。

マリアが小さく息を吐く。

『綺麗……。』

ヒールの音が遠ざかるたび、音華の心拍が痛みと一緒に鳴った。

「……十和ちゃん……」

画面の中で、十和の唇が微かに動く。

「……もう……いらない……」

音華の世界が崩れた。

膝をつき、止まらない涙が床に落ちて音を立てる。

「違う……そんなの十和ちゃんじゃない……!」

モニターの明かりが消える瞬間、音華は震える手を胸に当てた。

「お願い……戻ってきてよ……

 私、まだ十和ちゃんと一緒にいたい。

 何度だって、立ち上がれるって知ってる。

 だから――帰ってきて」

無音。

世界が息を潜める。

その祈りは、誰も気づかなかったが、

かすかに残ったノイズの中で、

十和の瞳の奥に一瞬だけ光を取り戻させた。

霧の中。

指先が、―わずかに動いた。

―――――――――――

どれくらいの時間が経ったのだろう。

誰かの声がした。

「戻ってきて」って。

心が押し潰されそうな暗闇の中、十和はかすれた声を漏らす。

「……音華ちゃん……先輩……助けられなくてごめん…なさい……」


涙で視界が揺れ、手足の力もない。

体が呼吸することを拒否している。


そのとき―霧の向こうから、足音が響く。

柔らかく、けれど確かなリズム。

1人の少女の輪郭が浮かび上がる。

髪を後ろで束ね、制服のリボンが風に揺れている。

高校時代の十和―。


差別も後悔も知らず、真っ直ぐに誰かを信じていた頃の、自分。

過去に置いてきた自分。今1番会いたくない。


「……負けないで」

静かな声。けれど、その言葉は鋭く心を貫いた。

十和は震えながら顔を上げる。

「無理だよ……もう何も残ってない……

 守りたかったもの、全部……

 私に生きている意味なんて無……」

若い十和が駆け寄り、勢いそのままに抱きしめた。

「やめてよ……二度とそんなこと言わないで!」

その声は震えていた。怒鳴るようで、泣き出すようで。

痛いほどに温かかった。

「…私ね、怖かったよ。泣いて、逃げたくて、何度も諦めかけた。

 でも、それでも立ち向かったし、負けなかった。

 “未来のあなた”のために!」


涙の音が、霧の中に落ちていく。

「あなたがここで諦めたら、何のために私は努力したの?

 お願い、立ってよ……生きてよ……!」

「……でも、私がいなくなったって……」

「違う!!」

声が裂けるほどに叫ぶ。

若い十和の目は涙で濡れ、けれどそれが逆に奥の光を輝かせていた。

「私のことを一番理解している“あなた”が、私を否定しないで!」


…静寂。世界から音が消えた。

十和の涙が一瞬止まる。

その手が頬を包む。

指先が―怒りでも悲しみでもない、

―愛しさに震えていた。

「…いいんだよ、ボロボロでも。

 それでも人を想う……それがあなた。

 あの日からずっと、私は信じてる!」

十和の目から、堰を切ったように涙があふれる。


「……どうして、そんなに……」

「だって、大好きだから。

 私が憧れた未来をあなたが生きてくれているから。」

―そうだ、あのとき決めたんだ。

大好きな人たちには辛い思いをさせないって。

私が守る。

だから、科捜研を選んだ。

守りたいものが増えていくのが、幸せだった。

「音華ちゃん……」


中学生の時からずっと一緒。

大学は違ったけど、今でも月に一度は会っている。

大学生の頃、美術館に一緒に行ったとき、

展示品を大学で学んだ知識で解説してくれた。

音華ちゃんも、夢を掴んでるんだなって分かって嬉しかった。

このキラキラした時間が、たくさんの人に届いて欲しいって思った。


若い十和は微笑む。

その笑顔は、飛行機雲のようにまっすぐだった。

「どんなに打ちひしがれてもいい。

 だけど、諦めることは絶対に許さない。」

十和は泣きながら、ゆっくりと頷いた。

右ポケットの中に手を伸ばす。

そこにあった小さな金属の感触 -先輩からもらったコンパス。

「先輩……」


初めて会ったとき、今まで見たことのないぐらい、澄み切った目だと思った。

何かを断ち切るようにまっすぐで、誰かを責めることも、逃げることもしない。

その冷静さが、少し怖いほどに美しくて。

気づいたら、自分もそうなりたいって思っていた。


「……人って、どこまで自分でいられるんでしょうね」

ある日、ふと聞いてみた。

先輩は少し驚いた顔をして、それから笑った。

「どうした、そんな哲学的なこと考えるなんて珍しいな」

「答えを見つけられないんですよ。

 でももし、自分が自分でいられなくなっても……

 それでも“誰かを守りたい”って気持ちは、消えないと思いたい。」

「春木なら……消えないさ。」

その声が、今も耳の奥で響く。


はっきりとした答えじゃなかった。

けれど、その一言が、どんな理屈よりも強く私を支えた。


ー思い出した。

それで、先輩はコンパスをくれたんだ。

“答えが出ないときは、ー北を探せばいい”

―先輩らしい答えだった。

嬉しかった。自分に向き合ってくれたことが。


本当は、先輩に持っていて欲しかった。

その日の先輩の目は少し赤くて、どこか遠くに行ってしまいそうだったから。

でも先輩は、

「もう俺は、北を見つけたから」

と笑った。

言葉を信じた。

だから先輩がいなくなっても、ここまで来れた。


―先輩、コンパスが助けてくれたよ。

壊れそうだった心を、もう一度、立たせてくれました。

「私、守られてばっかりだ……」

“答えが出ないときは北を探せばいい”

その声が、頭の中で優しく響く。

震える手でコンパスを握りしめる。

針が微かに震え、北を指す。

「壊れてなかった……動いてる」

「うん。あなたはまだ動ける。」

若い十和が微笑み、もう一度抱きしめた。

「もう大丈夫。あなたならできる。

 私の“希望”は、今もここにあるんだから。

 私の夢を叶えてくれてありがとう。頑張って。」

十和は深く息を吸う。

涙が、少しだけ温かい。

「……うん。私、行くね。」

霧がゆっくりと晴れていく。


手の中のコンパスが、北を示して止まる。

その先には、まだ見ぬ光が滲んでいた。

もう一度深呼吸してから、手首につけていた予備のゴムで髪を縛る。

昔から、集中したいときはいつもこのスタイルだ。

やっぱり、“これ”が安心する。


ー助けを待ってる人がいる。

左手を目の上にかかげてみる。

深爪ぎみの何の跡もない手がそこにはあった。

ー先輩の左手の指輪。確かめたいんだ。

洗脳で付けさせられているのか、自分の意思でつけているのか―。


「私が――音華ちゃんを、先輩を、守るんだ。」

若い十和は、泣きながら笑った。

「そう、それが“私たち”の答え。みんな待ってるよ。」


白い霧が完全に晴れ、一筋の光が部屋を照らしたとき、

そこにいたのは、もう“過去”ではなく“今”の十和だった。

縛った髪がどこからか吹いた風になびく。

“信じ続ける理由は、ー他者に壊されるものではない。”

―それだけは、絶対に手放さない。

傷だらけでも、瞳はまっすぐに未来を見つめていた。




立ち上がっても受け入れなけばならない真実は残っているー

次回、第6話 駆け上がる

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