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第三十六話:偽りの恋人ゲーム

鍵のかかった部室の中で、僕とナツだけの、初めての作戦会議が、静かに始まろうとしていた。

僕が彼女に全てを打ち明けた後、ナツはまるで優秀な軍師のように、冷静に状況を分析し始めた。


「……なるほど。つまり、アオイ先輩とミサキ先輩は『共有ルール』を主張していて、ほむら先輩は『偽りの恋人』としてハルキ君を独占しようとしてる、ってことだね」

「う、うん。そんな感じ」

「だとしたら、まず最初に落とすべきは、ほむら先輩だね」

「えっ!?」

予想外の言葉に、僕は素っ頓狂な声を上げる。

「だって、その人が一番の協力者になる可能性があるんでしょ?だったら、今の『偽りの恋人』っていう関係を、本物にしちゃえばいいんだよ。ハルキ君が、完全に主導権を握る形でね」

ナツの瞳は、ゲームの攻略法を語る時と同じように、きらきらと輝いていた。

僕たちの、最初の作戦が決まった。


その日の夜、僕は意を決して、ほむら先輩に電話をかけた。

『もしもし、ハル?どうしたの、こんな時間に』

聞こえてきたのは、少しだけ甘さの残る、機嫌の良さそうな声だった。

「あ、あの、先輩。相談したいことがあるんですけど……。明日、僕の部屋に来てもらえませんか?」

『……へえ。あんたから誘ってくるなんて、珍しいじゃん。いいよ、行ってあげる』

その声は、僕が自分の手のひらの上で転がされていると、まだ信じて疑っていない声だった。


そして、翌日の昼下がり。

インターホンが鳴り、僕は少しだけ緊張しながら、ドアを開けた。

そこに立っていたのは、ラフな私服姿のほむら先輩だった。


「おじゃましまーす。……へえ、あんた、意外と綺麗な部屋住んでんじゃん」

先輩は、部屋の中をきょろきょろと見回しながら、遠慮なくソファに腰掛ける。

「で?相談って何よ」

その態度は、完全に僕を下に見ていた。

僕は何も言わずに、ソファの後ろに回り込んだ。


「な、何よ、いきなり……!」

背後から、僕が彼女の華奢な肩をそっと掴むと、先輩の身体がびくりと震えた。

「練習です。いつ、あっちの先輩たちに見られても、おかしくないように」

完璧な言い訳だった。

先輩は、何も言い返せない。

その耳が、ほんのりと赤く染まっているのが見えた。


僕は、彼女の耳元に、そっと顔を寄せる。

甘い、ベリーの香りがした。

「……先輩、いい匂いしますね」

僕は、わざと、ゆっくりとした口調で言った。

そして、その白い首筋に、吸付くように、優しくキスを落とす。


「……んっ……!」

先輩から、甘い声が漏れる。

僕は、そのまま彼女を後ろから抱きしめると、その小さな身体を自分の胸に引き寄せた。

「……調子に、乗ってんじゃないわよ……」

強がるような声だったが、その声は微かに震えている。


僕は、その言葉を無視して、彼女の髪を優しく撫でた。

どれくらいの時間が経っただろうか。

僕は、彼女の唇を焦らし、その白い肌を指でなぞり、決して決定的な場所には触れずに、ただひたすら彼女を翻弄し続けた。

最初は強がっていた先輩の声も、やがて甘い喘ぎに変わり、僕の名前を呼ぶだけになる。

その身体は、僕の指が触れるたびに、びくびくと愛らしく反応した。

もう、彼女の息は完全に上がっていた。


「……はぁっ……はぁ……はる……」

懇願するような、蕩けた声が、僕の名前を呼ぶ。

ここだ。

僕は、わざと、そこでぴたりと動きを止めた。


「え……?」

突然のことに、先輩は戸惑いの声を上げる。

僕は、彼女の身体からゆっくりと離れると、何事もなかったかのように、キッチンでお茶を淹れ始めた。


「……な、何してんのよ……あんた」

ソファから振り返った先輩の声は、怒りと、それ以上の混乱に満ちていた。

その瞳は熱っぽく潤み、頬は朱に染まっている。

身体は、まだ僕の感触を求めているのが、手に取るように分かった。


「練習ですよ。……今日は、もう終わりです」

僕は、悪戯っぽく笑いかける。

「……喉、乾いたでしょ?お茶、飲みますか?」

その言葉に、彼女は何も言い返せなかった。

ただ、悔しそうに、そして、どこか寂しそうに、唇を噛み締めている。

僕は、目の前の小悪魔が、僕の与える快感なしではいられないように、ゆっくりと、しかし確実に、その心を支配していくことを決意した。

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