第二十四話:逆襲の狼煙
僕は、目の前の小悪魔の挑戦に、静かに応えることを決意した。
もう、流されるだけじゃない。
「……いいですよ」
僕の声は、自分でも驚くほど、落ち着いていた。
「え?」
予想外の返答に、鴻上先輩の瞳が、きょとんと丸くなる。
その一瞬の隙を、僕は見逃さなかった。
僕は、彼女の腕を掴むと、体勢を入れ替えるようにして、ソファへと押し倒した。
「きゃっ!?」
突然のことに、先輩は驚きの声を上げる。
さっきまでの余裕の表情は、どこにもない。
その瞳が、信じられないものを見るように、僕を映していた。
「な、何すんのよ、いきなり……!」
「襲ってほしいんですよね?」
僕は、彼女の耳元で、囁くように言った。
先輩の身体が、びくりと震える。
その反応が、僕の中の何かを、さらに煽った。
僕は、彼女の唇を求めなかった。
代わりに、その白い首筋に、顔をうずめる。
甘い、ベリーのような香りが、僕の理性をさらに麻痺させていく。
僕は、そこに、吸いつくように、優しくキスを落とした。
「……んっ……!」
先輩から、甘い声が漏れる。
「……先輩、いい匂いしますね」
僕は、わざと、ゆっくりとした口調で言った。
そして、今度はその耳たぶに、そっと歯を立てる。
「ひゃっ……!?」
先輩の身体が、大きく跳ねた。
その反応が、たまらなく愛おしい。
「ちょ、ちょっと、あんた……!どこで、そんなこと……!」
先輩の声は、震えていた。
さっきまでの、僕をからかうような余裕は、もうどこにもない。
ただ、一人の女の子が、僕の下で、翻弄されているだけだった。
僕は、その様子を、心から楽しんでいた。
これが、僕の反撃だ。
僕は彼女の唇を焦らすように、その輪郭を舌でなぞる。
そして、キスをする寸前で離れ、今度はその鎖骨に顔をうずめた。
「……っ、あんた、ほんと、性格悪い……!」
悔しそうな声だったが、その声は熱を帯びて蕩けていた。
僕は、彼女の服の中に、ゆっくりと手を入れる。
その素肌は、驚くほど滑らかで、熱かった。
僕の指が、その肌をなぞるたびに、先輩の身体が、びくびくと反応する。
「……あ……や……まって……」
先輩は、何かを言おうとするが、言葉にならない。
その瞳は、熱っぽく潤んで、僕を捉えていた。
そこには、僕が今まで見たことのない、懇願の色が浮かんでいた。
僕は、わざと、そこで動きを止めた。
そして、彼女の顔を、じっと見つめる。
「……どうしたんですか、先輩?もう、終わりですか?」
僕が、悪戯っぽく笑いかけると、彼女は悔しそうに、唇を噛み締めた。
その瞳から、ぽろり、と一筋の涙がこぼれ落ちる。
でも、それはさっきまでの涙とは、全く違う意味を持っていた。
「……もう、やだ……こんなの……」
か細い、掠れた声だった。
「……意地悪しないで、お願いだから……早く、ちゃんとして……」
その言葉は、僕の完全な勝利宣言のように聞こえた。
僕は、目の前の小悪魔の、甘い降伏を受け入れることにした。




