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02 卓と美玖

長いキスが終わると、俺は彼女に手を引かれて起き上がって無言でベンチに座る。

じっと俺の目を見つめる美玖に照れて、視線を立てかけてあった長剣へそらる。


「それ、なに?コスプレの小道具?」


ほぼノン気の彼女もそれくらいはわかるくらいには成長したらしい。

だけど…これは実は本物の……刃物で、どれだけの魔物の血を吸って来たかわからない。


「まさか…本物?なんてことはあるわけないね」


言いながら真顔になった彼女の視線は……明らかに怒っている。

そりゃそうだ…よな

不可抗力とはいえ、黙って2年も消えてりゃ普通他に彼氏を見つけててもおかしくない。

それを毎日のように返信のないメールを送り続けた彼女の気持ちを考えりゃ、そりゃあ怒って当たり前。

グーパンチが炸裂したって、回し蹴りが延髄に叩き込まれたって文句は言えない…

平手一発で済んだのはラッキー……

いやいや、それじゃ美玖に悪いよなぁ…


「で?どこに行ってたの?会社も退職扱いになってるし、お墓もあるんだけど……」

「墓って、おい!」

「当然でしょ?どっかの海底か山奥から白骨が出てきたっておかしくないよ?」

「うっ」

「2年よ、2年!」

「俺には…」


必死に反論をしようと思ったが…ほぼ間違いなく怒りの火に油を注ぐなぁ…

口ごもる俺に、公園の入り口に投げ捨ててあった美玖自身のバッグをとってきて突き出す。


「?」

「着替え」


あいかわらずぶっきらぼうな口調…照れの裏返しなのは変ってないな…


「あ、さんきゅ」

「ご両親から貴方の物、全部もらったの」

「そか」

「うち、今、隣駅の近くに部屋借りてるの。寝るところあるん?」

「いや、ないな…ってか、なくなってた」


まったくこのおやぢは……と盛大に溜息をついて、美玖は俺の指に指を絡ませた。


「うちの部屋へ来て。ご両親へは…どうせ連絡してないっしょ?明日してよ」

「お世話かけますな」

「まったくだわ。よくもこんなおやぢを2年も待ってたと感謝するように!」

「うん」


そこから美玖の部屋までほぼ無言で歩く。

絡めた指と触れる腕、息遣いで間違いなく俺の世界にいることを実感した……

で、空いた手に握っている長剣の冷ややかな重みが、あれも夢や幻想でない現実だと主張しているんだな…



「入って。初めて男、入れるんだからありがたく思いなさい」

「あ、はいっ!」


背後でドアの閉まる音。


「シャワー浴びよ」

「ああ」


美玖はさっき着替えた俺をまた脱がせ、俺も彼女の服を脱がせる。

鼻腔に彼女の髪の香り…

立ったままお互いを脱がせ、少し汗ばんだ素肌で抱き合う。

狭いユニットバスで美玖は俺の髪を洗ってくれる。

素手に泡立てたボディソープで全身をお互い洗うと、シャワーでそれを落とす…

そして、ベッドへ誘う。



髪に口付けをしてそのまま耳元で愛してる…と囁くと、彼女の吐息が熱くなる。



長いキス…



そして…



甘やかな密度の濃い空気が部屋に満ちている…

片腕に美玖の頭があり、寝息が漏れている。



帰ってきたんだな



満足感と安堵感……

深い眠りが俺を引きずり込む………



長剣の柄にはめられた宝珠が輝いたように見えたのは目の錯覚…か……






がつん!



盛大に頭を殴られて俺は起こされた。


え?え?


この起こし方……


え?



目の前には美玖の寝顔がある…うん、それは間違いない。

首をひねると、俺を覗き込む見慣れた顔……



えええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!






【続】



ちょっと短いですが…

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