16 反撃そして最終形態
あれだけの大ダメージ与えたんだから…
敵の正体も明らかになって、今度はこっちから攻撃する番だぜっっと、結局それが俺たちの未熟さってか油断だったわけだ。
花に囚われた俺たち…
「んにゃろっ!」
もがいてみても無理だってことは百も承知。んでもやってみきゃあわからねぇ。
「ほう…それだけ強力な呪術で縛っても、おぬし、気づきおったか…」
「じじぃ!」
セイメイはじっと俺を見つめている。
「!」
空気を切り裂く細い鋭い音が、糸お引くような白銀の光跡とともに向こう側の花を目がけて飛んできた。
破邪の薙刀!
「瀧夜叉も起きておるのかっ」
光のないセイメイの暗黒の瞳がぐりっと動いた隙に俺も精神集中、気合一発っ!
心の奥底から覇王の長剣をこの手に呼び出した。
「貴様らには…すでに通用せんようになったようじゃ…成長したようじゃの」
「お褒めにあずかり、光栄のぉ…」
ズバッと内側から俺を包み込んでいた花弁を叩き斬った!
「至りぃ!」
地に降り立つと瀧夜叉も脱出を果たしていた。
「くく…貴様らは武器があるが、さぁて、ミクはどうするかの?」
憎々しげにセイメイのじじぃ、おそらくそこに美玖が囚われていると思われる花へゆっくりと視線をいどうさせ…余裕たっぷり表情が驚きで歪み、細い目が見開かれた。
「な、なんじゃと!」
喉からかすれた声が絞りだされる。
美玖の花は最初はかすかに振動し、やがて花を支える茎が揺れ踊りだし…
たぁああん
という美玖の声音で花弁が四方へ見事に開ききった!
とんっと地上に立つ美玖…リズムを……太鼓のリズムを口ずさんでいる。
「許さないし」
ぷつりとそう言うと、美玖はさっと両手を頭上に!
「なんとっ!」
じじぃは一歩退く。
美玖の手に長いバチが握られていた…彼女は口ずさんでいるリズムに合わせてバチを振るいだした!
たぁ~ん、たたんったんたんたんたん、たぁ~ん、たたんったんたんたんたん……
「おおっ」
「わぁお」
俺と瀧夜叉は同時に感嘆の吐息を漏らした。
美玖は最初、虚空を叩いていた…そこに四尺はあろうかという巨大な大太鼓…
万感の太鼓が現れて幻龍の皮が張ってあると言う打面にバチを受けた!
どぁあ~ん、どぉんどぉん、だだだだだだだん…
彼女の重心が低くなり、バチを振るう腕がフル回転する。
重厚な一心不乱な叩き方から、やがて踊るような躍動感のある動きへ変化する。
「くっ!」
セイメイのじじぃ…美玖の太鼓で金縛りにあってる!
「せぇ~~~いぃ…やぁあっ!」
彼女から発せられた気合と、同時に打ち出された波動!
パァアアアアァァァァンン
ユミンや桜太夫、彩姫、アーネを取り込んでいた花の花弁が弾け、みんなが正気に返って着地した!
俺たちの周りにあったセイメイのじじぃが作った異空間も一緒にぶっ壊れた…すげぇ♪
「じじぃ、覚悟しやがれっ!」
じじぃを6人で取り囲む。
美玖は万感の大太鼓を叩き続け、戦鼓隊は俺たちの外側にまわって担ぎ桶を叩きつつ結界を張った!
「逃がさないし」
瀧夜叉が薙刀を持ち直しながら、指先ひとつ分だけ間合いを詰める…
「おぬしらの弱点は、ほれ、そこのミクじゃ」
じじぃがくいっと顎を動かすと、ひとり結界の外で叩き続ける美玖に魔物が殺到した!
「美玖っ!」
ずっだぁぁぁぁああああああん
ひときわ大きく音を響かせ、打った勢いそのままに長いバチを舞わせる美玖。
響刃とバチが魔物を粉砕してゆく!
「やるねぇ♪」
思わず桜太夫が嬉しそうにつぶやく。
美玖はちらっと俺に視線を飛ばして口元を一瞬ほころばせ、次の瞬間からは更に気高く勇壮な叩き方に変化していった。
俺たちは太鼓のリズムに乗って続けざまに攻撃をしかけた…
が、やっぱりなんだかんだ言ってもじじぃは強ぇな……
なかなか有効なダメージにつながらない…
髪の毛一本分ほどのあせりが、リズミカルな攻撃パターンを乱してしまった!
「未熟っ!」
そう叫ぶと軽く跳躍…って、そこまで飛ぶのか!ってほど高くジャンプし、結界をこじ開けて逃走しやがった。
そこからは俺たちと、魔物を従えたセイメイのじじぃとの果てしない戦いが続いた。
気を抜けば奴のすけべぇな幻術が俺たちを悩ませる……
ったく、じじぃめ…てめぇ、実は欲求不満なんだろっ
俺たちはそれでも奴を一度倒し…魔物と同化して化け物になった、いわるゆ第二形態の奴を追い詰めた。
完全に自分のモノにした万感の太鼓を美玖は叩き続ける。
幻龍の響刃となって俺たちの周囲を覆ってじじぃの攻撃を防ぎつつ、彼女の叩きかたひとつで形を変え、無数の真空の刃となってじじぃ第二形態へ襲いかかった!
アーネの重火器、桜太夫の爪、ユミンの両刃の短剣…傷つき肩で呼吸する俺たちを彩姫の回復魔法が癒してくれる。
「とりゃっ!」
覇王の長剣、渾身の打突!
「いやぁああああっ!」
破邪の薙刀、颯爽の一閃!
「てりゃあああっ!」
万感の太鼓、驚異の烈風!
まぁだ、まぁだぁあああああ……
致命傷を受けたセイメイが崩れ落ちた……てよぉ…お約束かな?
ぴくっ
お約束なわけね…
ひくひくっ
三度よみがえったセイメイ…すでに人の形はなくなって、そりゃもう醜いのひとことだね、こりゃ…
ふっと呼吸を整え、彩姫の回復魔法を受けている間が……ある意味俺たちの一番やばい時間帯………
「美玖、だいじょう……」
振り返って美玖を見たその時、彼女の足元…でっけぇゼリーみたいな触手がにょきにょき生えてきて美玖と太鼓は一緒に呑み込まれちまった!
…戦鼓隊の方も大事な太鼓や銅鑼を奪われ、弾き飛ばされちまってずたずた……
俺たちは散開して大きく後退する。
うわっ
セイメイのじじぃ……の痕跡は獣のような頭の眉間にある顔だけ。
腹から下はさっきのゼリーみたいなぐにゃぐにゃの触手をはやした軟体動物。
美玖と太鼓は半透明の奴の腹の中に浮いている。
万感の太鼓なしで…わしを……倒せるか?
奴のあざ笑うような嫌なトーンの声が直接俺たちの頭の中に響いた。
「どこまでも…やな奴だな」
唇を噛んだおれに、更に奴の声。
10分で死ぬぞ……15分でわしに吸収される………
「っの野郎!」
だがの…わしが死ねば、その場でこの身体は全身毒に変化する……ミクは救えぬ
「じじぃ!」
吠えろ……吠えたところでどうにもならん………無力を知って、このままわしに食われてしまえ
「っ!」
覇王の長剣と破邪の薙刀だけでも倒せる…そう直感できた敵。
だが倒せば美玖まで道連れにされちまう…
俺たちはぎりっと歯を食いしばって、奴をにらみつけた。
【続】
いくつになっても男は厨二でスケベ(笑)
ブーメラン♪




