13 じじいの策略…看破!
奴は俺たちの持つ『大陸王の証』
…俺の覇王の長剣、瀧夜叉の破邪の薙刀とあそこにある万感の太鼓を欲しがった。
つまり大義名分のないこの侵略に箔を付けようとしてるってことだ。
美玖は万感の太鼓を叩けるのか?
叩けると思ったから俺を戻して、ここへもう一度連れて来た?
となれば…前の戦いもじじぃの仕込みってことか?
んで、美玖が叩けると確信したから正体を現した……だろうな…
で、この状況だ……
何故、美玖だけ繭に閉じ込めたんだ?
俺たちも同じにすればこういうことにはならず、シャクヤクも縛られることはなく……
美玖を隠したかった?
誰から?……俺たちから?……シャクヤクからも?
どこでじじぃは姿が消えた?
俺に幻術かけて…美玖を繭に包んで…すぐに姿を見せて…それから?どうした?
「タクっ!親父を止めよう!」
瀧夜叉の叫び声で思考が止まっちまったし…
「親父たちの目を覚まして、それから敵を倒そう!」
「ん…」
ん?あれはなんだ?
遠くに土ぼこり…軍旗がある……あれはショウモン王の紋章。
「タクっ!」
桜太夫の声?
視線を反対側に向けると、遠くになんとも怪しげな雲と気配がむくむくと湧き出してるし…
「あそこは…魔物の巣ではありませんか?」
アーネがそっちを見て言う…
「ショウモン王殿を説得して、あっこの魔物の巣を攻撃しましょう!」
彩姫の提案はもっともだ…魔物の巣なんぞ、そのままにしておけない……
「ボクが先乗りして足止めするねっ」
ユミンが走り出そうとするのを、反射的に俺は止めた。
「どうしたの?時間がないよ?うちはもう大丈夫」
美玖が目を覚まして俺を見上げて…立ち上がった。
「ね?大丈夫っしょ?太鼓、叩くよ」
「あ、ミク!シャクヤク見といてね」
「うん!」
なんだ?
話がどんどん先に進むぞ?俺はどうしたんだ?
「タクっ!ぐずぐずすんなよ!」
「卓、頑張ってね♪」
おうおう、ありがたい励ましのお言葉だこと……
ユミンはもうショウモン王の軍隊に走っていった?
しゃあねぇな
たまにはみんなの言うことを聞くか?
万感の太鼓…か
確か幻竜の皮が張ってあるんだよなぁ…
視線を移動させたとき、美玖とシャクヤクがぼやけて見えた。
え?
ぐらっとめまいがしたような感覚…今、なんか変だったような?
「美玖!」
目の前で何かが弾けて…俺は長剣を抜いて美玖へ向かって走った。
美玖と縛られたシャクヤクが並んで立っている。
「美玖!」
俺の呼びかけに今の今までしゃっきりしていたはずの美玖が…焦点のあわない光のない瞳を向けた!
卓…たす…けて……
確かにそれは美玖の声。
俺の愛した…娘なみに年下の最愛の彼女の声!
2年も行方不明になっても待っててくれた…一生一緒にいると信じあってるいとしの美玖!
「じじぃ~~~!!やってくれるなぁっ!」
長剣に気合を注入すると刀身にオーラが現れる!
「覚悟しろぉ!」
一直線に太刀先をシャクヤクめがけて突き出した!
「ほ、ばれたか」
シャクヤクはずるっと縄を落とし、俺の切っ先を紙一重でかわし…
「ぐあっ」
…切れるもんかい!
鮮血が飛び、片腕を押さえたシャクヤク(だったものってのが正解だな)が宙に舞い上がった…じじぃの姿に戻って行く。
ざまぁみろっ!
ったく手が込んでやがる。
二重の幻術で魔物の巣と思わせた隣の国を襲わせようなんざ、いい加減ずる賢こくって腹が立つ!
しかも俺や瀧夜叉、美玖まで人形みたく扱って、先陣にたたせようって魂胆…
あ~~~~腹立つぜぃ!
俺が美玖のそばに駆け寄り、じじぃをにらみつけて彼女を背にかばった。
「卓、ありがと」
小さく彼女の声。
そして静かに深呼吸する気配。
じじぃの顔色が変わったと同時に!
ずどどぉぉぉぉぉんん
美玖の放った太鼓の打撃音が大地と空気を揺るがした!
だぁん!だぁん!
ずどどぉぉん!
彼女の撃ち出す波動と響きと俺の長剣に燃えてるオーラと共鳴する。
どぉぉぉ~~んん
だだぁん、だんだん、だだぁん、どぉんどん
生み出される打撃音!
まわりが粉々に散って、俺たちは奥の院の前庭に立っていた。
「彩姫!」
俺の声に反応した彩姫がそこにいた!
彼女はすばやく反応して呪文をつむいでじじぃを呪縛にかける!
「アーネ!」
銃弾が弾幕になってじじぃの動きを封じる!
「太夫!」
桜太夫が凶悪な爪を輝かせてじじぃを叩き伏せた!
「ユミン!」
落下してくる奴…裏切り者を両刃のナイフでズタズタに切り裂いてゆく!
「美玖っ!瀧夜叉っ!行くぞっ!」
俺と瀧夜叉の持つ武器が、美玖が生み出す太鼓の波動でオーラの色が変わった。
太鼓の打撃が小刻みに、だけど力強く撃ち出され続けた。
俺はジャンプして頭上から、瀧夜叉は姿勢を低くして旋回させた薙刀の刃をじじぃに見舞った!
「ぐあぅっ!」
人間のうめきとは思えない声を発したじじぃは、それでも致命傷だけは避けやがった。
俺は逃がした…と直感した。
セイメイ老師は流血しながらも立ち上がり、印を結んでその場から逃げ去っていった。
追いかけようとした皆を止め、俺はふうっっと大きく息を吐いた。
美玖…
しんと静かになった…太鼓を前に抜け殻のようになった美玖を抱きしめた。
「ありがと」
いとおしくてたまらなくなって、そっと唇を重ねた…
お互いの心に触れ合うような…深くて優しいキス……
ほんのちょっとだけ唇が離れ…話せばその動きが感触でわかるくらい、ほんのちょっとだけ……
「卓……」
「うん」
「美玖、頑張ったし」
「ああ、遅くなってごめんな」
「ん~~ん。ちゃんとわかってくれたし、助けてくれたし」
「美玖の声が聞こえた」
「うん」
「いつでも一緒」
「うん。ずっと一緒」
抱きしめる力を緩めて…彼女への想いで彼女を包んだ。
「愛してる…」
「美玖も…だよ」
決戦が近い。
チリチリとした緊張感と恐怖感が不意に俺を襲ってきた。
けど、抱きしめた美玖の体温と柔らかな身体。
なにより心にじんわりと伝わってくる彼女の俺への想いがそれを追い払って勇気を与えてくれる。
「美玖」
「うん」
俺は美玖を離し、集まってきたみんなに顔を向けた。
「きついぞ」
みんなは頼もしくうなずいた。
「いっちょ、やってやろうぜ」
俺はにやりと笑って見せた。
【続】
亀の甲より年の功…二度あることは三度ある(笑)




