表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/19

12 瀧夜叉の想い

目を開けているのに……暗闇がどこまでも広がってる…

全身を心地よく温かいものに包まれてるみたいだし……



そうだわ…うち、蜘蛛の巣に………

卓っ、どこっ?

どこにいったの?

うちを、美玖を守ってくれるの、卓だけなんだよ……



んあっ…足の指になにか触ったぁ……

うっ、くぅん…湿った感触がうちの足の指をいっぽん…いっぽん……這いずってるぅっ

やんっ……指の間をはいまわってるしぃ………なんなのぉ…ぞくぞくするぅ

ふにゃぁあぁぁん…足首にも、太腿にも、しっとりした感触が粘っこく絡みついてくるのぉ…

ひやぁっ……なんなのぉよぉ…今度は耳なのぉ……

ん、んん…はうっ……身体が……


っくうん


や、ちょっと、気持ち…いいのぉっ


!!!!!!





水に浮いてるようだなぁ…ふわふわして、気持ちいいなぁ……

なんだっけ、すげぇ悔しかった気がするんだけどなぁ



んあっ



いくら俺が、我慢強く…ても……これは、き、きくっ



はぁ…はぁ……はぁ


目の、前…真っ白に、なって…き、た……



おおおおっ



っくううううううっ



こきゅ…


「ん」


え?



真っ白な視界が開けてきたぞ……



あっ!

瀧夜叉……お前…



瀧夜叉のとろんとした瞳が動いて……俺を見上げる…


「わたい…タクが、好き」


なんだか、とんでもなく瀧夜叉がいとおしくなった。

上体を起こして裸の彼女を抱きしめた……


「わたいを…抱いて……」


耳元で彼女の囁き。

獣の衝動がつきあがって来た。



「くっ」



ん?

誰か呼んだか?



「たくっ」



呼んでる…俺を……呼んでる?



「卓っ!」



み、美玖?



俺の中に雫が落ち、それが波紋を作り、広がった。



美玖を助けなくちゃ!



「美玖よりも…わたいを、抱いて」


耳元で再び甘いささやき…

思わず俺は更に彼女を強く抱きしめる。

ふたりの喘ぎだけが鼓膜を震わせる…


「あふぅ…」


瀧夜叉の声が高くなる


「い、一緒…にぃっ」

「っく」

「私もぉ」


っっ!




と、世の中が鮮明に……

この髪の香り…

自分を


「私」


って……瀧夜叉?違う?



俺の上で抱かれたまま放心しているのは…シャクヤク!



ん?

ってことは…



両手両足自由になってるし♪



神経を集中して周囲をうかがうと、老師の気配も消えている……油断大敵ですな。



俺はきゅっとシャクヤクを抱きしめ


「つ~かまえたっ」

「なっ!」


素早く体勢を入れ替えて、全裸のシャクヤクを組み敷いて彼女の自由を奪った。

一瞬の精神集中。

手を頭上にかざした。


「我は汝の主っ!来い!覇王の長剣!」


俺の手に長剣が握られた。


「形勢逆転…って所だな」


覇王の長剣を一閃すると、蜘蛛の糸に捕らわれた仲間たちの意識と自由が戻った。


「桜太夫!美玖を!その繭を壊せ!」


喝を入れるように桜太夫を動かした。

なにがなんだかわかっていないながらも、慌てて彼女が美玖を包んだ繭を引き裂いて中から助け出す。

白濁した粘液にまみれた美玖。

ひくひくと痙攣しているのは、おそらく中で…

俺と同様、瀧夜叉が破邪の薙刀を取り返し、シャクヤクの喉元に刃先を突きつけ、


「わたいが代る…美玖を、早く…」


小さな声でそう言った。


「さんくす」


俺は美玖の許に走り、抱きしめ、キスをした。


「ん……」

「美玖?」


うっすらとあけた瞳はぼんやりと俺を見つめ、やがて焦点が合って来る。


「卓?卓なの?本物の卓なの?」

「うん。俺」


美玖の目から涙が溢れ、文字通り手放しで俺に抱きついて…泣いた。

何度も何度も、俺は彼女に叩かれた。



姿を現した本当の敵。

前の戦いのとき…俺たちを導き、助けてくれたセイメイ老師。

まさか老師が俺たちの敵として立ちはだかるとは思いもしなかった…

俺が俺の世界に戻った1年の間に何が彼をそうさせたかなんてわからないし、わかりたくもない。

でもよぉ…強敵だよなぁ……

俺たちに戦い方を教えて鍛えてくれたのは老師なんだからなぁ



俺の胸で泣きじゃくってる美玖の髪をなでると、安心したのか小さな寝息が聞こえてきた。



にしても…

あの油断のならないセイメイのじじぃがこんなへまをするはずねぇ…

これも計算の内なんだ。



確信だな。

奴が俺たちを知っているように、俺たちもじじぃを知ってる。

となりゃ、これは罠かもしれねぇ…

みんなもそれは感じてるんだな…油断なく俺たちと瀧夜叉が縛り上げたシャクヤクを真ん中にして円陣組んで、いつでも戦えるように油断なく備えてる。



ショウモン王が老師の術にかけられたシャクヤクにそそのかされて戦備を整えてる。

それを抑えられるのは瀧夜叉だけだろうな…

だけど、だけどだ。

彼女をショウモン王のところへ行かせたら戦力が落ちる。

老師相手に全員でも勝利は…正直きつい。

んじゃ、ショウモン王の目をさましてから老師を?

いや、だめだ…老師を倒して、はじめてシャクヤクもショウモン王も目が覚めるんだから……



くそっ!

どうする?どうするんだ?


ったく、俺は歳ばっかりくって知恵がないのか?

前の戦いは俺に知恵と勇気をくれたんじゃないんか?


「タク、どうする?」


瀧夜叉がじれて俺に問いかける。


「老師…じじぃがどこいったかわかるか?」


俺は目を閉じて気持ちを静める。

心を研ぎ澄ます………奴は遠くに行っていない。俺たちをじっと見てるはずだ。

美玖が腕の中で動くと、気持ちがそっちへ行っちまう…

ふわりと彼女の髪が香ると心が騒ぐ。



騒ぐ?

美玖の髪の香りで…俺の心が?



繭……万感の太鼓……幻術……髪の香り



ううん…と彼女が身体を動かす…



ざわ



なんだ?この胸騒ぎは?





【続】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ