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11 思惑

敵の復活…魔人ドーマとの戦いに俺はこの世界に再び呼び戻されたと思ってたんだが……

ドーマはただの餌だったらしいなぁ…

しかし、なんで瀧夜叉のお袋シャクヤクが敵キャラでいきなり登場なんだよ。



「勇者タク」

「なんでしょう?」

「この広大な大陸にいくつ国があるかご存知?」

「35だっけ?」



瀧夜叉の親父さんショウモンが治める国を含めて35の国が大陸にあるらしい。

俺も聞いただけなんだが…

四方を海に囲まれてでっかい大陸があって、そのなかのひとつがこの国ということだ。


「ひとつひとつの国は独立統治しているわ」

「と聞いているけど?」

「大陸王のことはご存知?」

「ん?ああ…国同士の争いがなくなるように…昔どこかの国王が35の国をまとめたって、あれか?」


シャクヤクが唇を舌先で湿らせる…ひいていた紅が艶を増す。


「ご名答♪」

「それがどうしたってんだ?今はいないだろ?」


と、俺の頭にひらめいたものがあった。


「って、まさかショウモン王がそれになろうってか?」

「あら、察しがよろしいこと。それでこそ勇者様だわ」

「てか、それって世界征服ってか?」

「その通りよ」

「無理だろ」

「どうして?」

「国と国の間には山脈とか大河とか氷河とか…自然の境界線があるっていうし、今はどこも平和って聞いてるぞ」

「そうみたいだわ」


シャクヤクはウィンクしてみせた。


「だからよ」

「はい?」

「平和ボケしてるからこそ、手っ取り早く征服できるわ」

「ひでぇな」

「頭がいいと言ってちょうだいね?」

「こそ泥だろ…それにその調子じゃ、宣戦布告もしないでいきなり襲い掛かるって勢いみたいだしなぁ」

「する必要があるの?」

「大義名分…ねぇか…めちゃくちゃ戦争してるわけじゃない……一方的に攻撃するのに確かに必要ねぇな」


会心の笑み…ていうか、こえぇ~~なぁ…


「国王…瀧夜叉の親父殿はそんな野望を抱くようには思えなかったけど?」

「彼は…わたしを愛してるのよ」

「親父をだましてるんだっ!」


瀧夜叉が叫ぶ。


「自分の母親に何てこと言うの?」


シャクヤクは瀧夜叉へ…ほんとに残忍な視線を這わせる……

あっ、そか、この母娘は血がつながってねぇんだっけ…つまり国王の後妻さん…


「シャクヤクっ!前から嫌いだったんだっ」

「あらあらぁ、瀧夜叉さんは反抗期みたいねぇ」


立場が言わせる余裕の言葉と視線。




まぁ、蜘蛛の糸に捕らわれてるンだよなぁ…しかも幻術まで使いやがるし……

とすると俺たちは世界征服を企む国王ショウモンとその妻シャクヤクの野望をつぶさにゃいかんな…

ってこの情けない捕らわれの状況を変えなきゃなんないんだけど…



腕に力を入れてみたが、びくともしやしねぇし…

みんなもそれなりにもがいてるけど……手も足もでねぇって、このことだな…


「口惜しそうね」

「そりゃそうだろ?」

「その顔…そそられるわ」


糸の上を滑ってシャクヤクが俺の横へ立って見下ろしやがる。


「そうやって…動けなくって、歯を食いしばってる姿って、いいわね」


奴の言葉は毒をもってるな。


「やだぁっ!」


美玖の声。シャクヤクが俺の横で、俺を見下ろしながら視線を流して彼女を見る…




って、すげぇ凄味あるな。




「ミク…戦鼓の巫女。ほんとうに都合よく勇者様とご光臨くださいましたわ」


奴は美玖の足元へ……


「それに…あの時の声はうらやましいほど歓喜に満ちて、聞いているこちらまで昇天してしまいそうだわ」

「!」

「そりゃあ…あれだけの声ですもの、屋敷のどこにいても聞こえるのよ」


美玖は首まで真っ赤になって黙っちまった。

恥ずかしさに顔も隠すこともできない美玖…がぁああああ、この野郎っ!


「わたしたちには欲しいものがあるのよ」


シャクヤクは俺をじっとみつめる…黒い瞳に吸い込まれそうだ。


「覇王の長剣、破邪の薙刀…」

「俺と瀧夜叉の…」

「そうよ…そしてね」


奴はまた美玖のほうを思わせぶりに見る。


「ほら、あそこにあるでしょ?万感の太鼓」

「へぇ、んでも使えるのは俺たちだけだし、その太鼓だって打ち手がいなくちゃ、ただの道具だぜ」

「ここにいるじゃない?」

「言うと思った。だけど俺たちは手伝わないぜ」

「誰が味方になれなんて言ったかしら?」

「なにっ!」

「ここにこうして縛りつけてるのは、味方につけるためじゃなく、わたしのお人形になってもらうためよ」



こういう展開かよっ!

思ったより手強い



「他のみんなはどうするつもりだ?」

「そりゃあ、貴方たち次第ね」

「人質ってか?」

「まぁそんなところね。この娘たち、みんな貴方やミクにいろんな感情もってるみたいだし、使い方は…い・ろ・い・ろ♪」



けど、どうも変だな…

シャクヤク…頭も良いし行動力だってある。それは前のときで知ってる。

だけど、だけどだ。

こんな野望を持つようなタイプだったか?

いつも微笑んで控えめで、いざってときはさすが軍人の娘だったって感じだったけど……なんか、これも違和感バリバリだな…

第一、魔性に魂を売ってまでってのが信じられない、な。



なんか変だな……



あそこに美玖、こっちに瀧夜叉、アーネとユミンはあそこで桜太夫と彩姫があっち……



で、ドーマは片付けたけど……ん?

あれ?

老師は?

セイメイ老師はどこだ?俺たちを救おうとしてくれてる…んだろう……きっと……



あ、まずい…また、幻術かぁ?

ぼ~っとしてきやがる……つか………ま…た……



み、美玖っ

こらっ、シャクヤク!

美玖を繭に閉じ込めようとしてやがるっ

何する気だっ



あうぅぅぅ……




「ふむ……」



え?




「タクはまだ抵抗しとるようじゃな…」



な?!



セイメイ…老師の声?



「すぐに気持ちよくなって、桃色の夢に囚われるわ」

「ふふ…40も半ば過ぎて、まだまだ若いのぉ……」



なんだ?

シャクヤクと話して……いる?



「あらぁ?勇者様もだんだん硬くなってきてるわ…」

「ふん、シャクヤク。お前も好きモノじゃな」

「そうしたのは誰でした?」



ぱんっ



きゃっ



「口の利き方、少しは立場をわきまえよ」

「す、すみません…」



なん…だ?…こ、の、会話……は?



俺は必死に視線のピントを合わせる…老師の背がみえた…



ろ、ろう……し……助けに……



こちらを振り返った老師の顔……



老師……あんたが………闇に…た、ましい…もって、行かれたの…かっ……



「ふむ。ま、手の内に入ったからには急ぎはせぬ。シャクヤク、好きに遊んでもよいぞ」



老師の顔はもう俺の知っている、自愛と威厳に満ちた表情ではなくなっていた…





【続】

囚われたタクたちの運命や如何に?(笑)

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