表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/19

01 卓は帰還した。

「おっさん勇者」の続編ですwww

…で、ようやくここは俺のいた場所…なんだよな



視線を左右へ振り、踏みしめる地面を確認して空を見上げてみる。

おそらく快晴といわれる東京の薄灰を刷いた様な青空がそこにある。


「はは…この空を懐かしいと思うとは思わなかったな」


俺は片方の口元を苦く歪め(悪い癖なのはわかっているが)て小さく吐息をついた。

砂埃で白くなったジーパンのポケットに手を突っ込み、指先に触ったフィギュアのついた鍵を引っ張り出す。


「よくもなくさなかったもんだなぁ……」


いつ失くしてもおかしくない状況の連続を奇跡的?に潜り抜け、やっと帰ってきた。



まぁ、帰ってきたことが本当に良かったのか…それは、はなはだ疑問だけどなぁ(苦笑)



今ここが現実なのかすら、ちょっと覚束ない感覚。

マンションへ続く蜘蛛の巣のような細い路地を足早にたどる。



深く考えてもしょあないし、ま、ともかくシャワー浴びてぇな…



髪は砂埃と紫外線でぱっさぱさ、顔も鼻の穴の中まで汚れが堆積しているのがわかる。



何時くらいだろう…空気の感じは朝方っぽいな



その方が都合がいい。

おそらく他人様がこの姿をみたらドン引きだろうし…

腰にどっしりと下がっている物体は怪しさ爆発していることは間違いない。

なにしろ黄金作りの長剣だから…



見えた

マンションの裏口



手の中の鍵でそっと開けて、静か過ぎる廊下を歩いて一番奥の自分の部屋へ…



ありゃあ



鍵が合わない。


開かないよ…


どうやら相当長い間ここを留守にしていたんだなと、妙に納得してしまった。



さて、どうする?



尻のポケットの携帯電話をストラップで引っ張り出してみたが、当然のように電池切れ。



だよな…財布財布っと……コンビニで応急処置だな。



電池式の充電器とつぶアンパン、ノンシュガーの炭酸飲料を買って、公園で携帯を充電する。

財布を常に持っていて正解でした(笑)


「ほう…桜、咲きそうだな……」


ん?俺があそこへ行く直前に葉桜になってたから…

なるほど、少なくとも丸っと1年経ってるって訳か……

てことはさ…

充電器を挿したまま携帯電話を起動させた。



まぢか…



ディスプレイに表示されている日付は2年経っている。

と、いきなりメール着信が連続する。

バイブの振動は連続して手の中で絶えることを知らない。

DMも多いが、彼女の美玖みくからのメール、仲間達、勿論会社からのものも連続して入ってくる。



ありえんな…

発信日時は日に2~3回、毎日…あ、メモリーいっぱいだし…



一度受信を中止してDM関係を一気に削除する。



古い順に読んでくか……



じっとディスプレイを見つめて順を追ってメールを読んでゆく。

最初は心配する内容、やがて怒り、諦めへと内容は変る。



ある意味、美玖…お前って凄いな



2年目の分に突入し内容はほぼ彼女の日記になり、日が落ちてくる頃にようやく終わりに近づいた。


「わっ!!」


突然バイブが振動し、最新メールが飛び込んできた。


「美玖……相当しつこいよ…」




泣きながら言っても説得力ねぇなぁ…



どこかで自分にそんな悪態をつく。



Pi



返信メール画面を出す。

ただいまと打ち終わって送信する。



ペットボトルのキャップを開ける間もなく、着信メロディが鳴り出す。


「はやっ」


嬉しさと驚きと…ちょっとだけ呆れながら電話に出る。


「ほい」

『#$%&#$%&』

「んにゃ?」

『いま、どこに…いる、の?』

「あ?ああ、家の近所の…ほら、桜の咲いてた公園」

『なんで?2年もどこにいってた?…と……」

「はい?」

『動かないで!そこにいてっ!』

「いてねって、来る気か?今から」

『当たり前っ!』


あまりの剣幕に正直ビビッた。

彼女の家から片道三十分足らずといえ、即座に来るという彼女の気持ちが嬉しい。



しかし…2年、か

よく毎日メールしたもんだ、な……



改めて胸が熱い。



って、それでも容赦なく腹は減る。今日4回目のコンビニ。

ぼんやりと燈った公園の2基の常夜灯を、俺はおにぎりを口にくわえながらぼーっと見上げた。

夜空も低く星もない…



夜空っても…やっぱ薄明るいなぁ…



たく!!」


名前を呼ばれてベンチから立ち上がると、美玖が……懐かしい眼鏡の彼女が目の前に駆け寄ってくる。


「お、早い…」


な、と言う前にほっぺたに平手が飛び、よろけたところに抱きつかれて尻餅をついた。

当然、彼女もそのまま一緒に倒れ…柔らかい唇の感触で俺の口がふさがれ、眼鏡の縁がわずかに当たった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ