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最速の世界 8

●「前回のあらすじ」

 初テストで思ったような結果が出ず落ち込む夢兎に対して、英二は容赦のない言葉を浴びせる。

 心が折れそうになる夢兎。そんな自分を救ってくれたシャフイザに、夢兎は昔と変わらぬ絆を感じる。

 自分の不甲斐なさを痛感した夢兎は、気持ちを新たにし、目標達成への歩みを再開した。


「シェッフェル・エッフェル エンストーファクトリー」――メイン・シミュレータールーム。


 飛行機の格納庫を思わせるような、ただっ広い空間に設置された構台。

 その上を縦横無尽に走っていた白銀の球体が、ゆっくりと端へと寄っていく。

 球体が停止すると、その内部で「仮想車両モデルシミュレーター」をドライブしていた夢兎が、タラップを使って降りてきた。


 ヘルメットと防火帽バラフラーバを取って、汗を拭う。

 タラップを降り切ったところで、身体が少しよろけた。


 今日は一日中シミュレーターに乗っていたから、全身に疲労が溜まっている。身体が重い……。

 けれど、こんなことで弱音を吐いてはいられない。

Velo(ベロー) Voiture(ヴォワチュール)のドライビングには慣れてきたけれど、目標の数字タイムにはまだ届いていないのだから。


 初テストから一週間。

「デビュー戦・表彰台登壇」を目指す夢兎は、ドライビングシミュレーター――最新のVR技術によって、視覚、聴覚から得られる情報を完全に現実化リアライズした高性能シミュレーターに可能な限り搭乗し、|RS4/27《アールエスフォートゥエンティ―セブン》に適応したドライビングを学び。テクニカルミーティングを通じて、エンジニアたちとの相互理解も深めてきた。


 マシンセッティングについては、シャフイザがレース本番の練習フリー走行を走り――その程度であれば、古傷も問題ないと聞いている――、操縦性の高いマシンセッティングを出して、対応する予定になっている。

 言うまでもなく、シャフイザのマシンセッティング能力は〝並外れて優れた(メガ)〟。

 ここは、任せて信じる他ない。


 数字的にも感覚的にも、前進できている手応えはある。

 全てが順調…………と言いたいのだけれど、〝改善できていない重要な問題〟が一つだけあるのだ。


 その相談をするために、シャフイザのアパートを訪れたのだけれど……。


 会うなりシャフイザは、こちらの真剣な気持ちを台無しにするようなくだらないお願いをしてきた。

 それは……。


「もう、わかりました! はい、押しました」

「ザンギュ~~~~ッ!! おっし、一発目で来てもいいんだぞ! 来い! 来い! 来い~~~~ッッ!!」


 日本のソーシャルゲームの定番らしい、「ガチャ」と呼ばれるくじ引きを代わりに引くことだった。 


「ギダァァァァンン!! オッシャラッ!! フゥゥッッッッッッ!!」

「ッ! 昼間からなんて声出してるんですか……」

「排出率0.01278%……それを一発で……。日付変わってから、俺があんなに藻掻いてたのを一発で……」

「はいはい、それは良かっ……って、何ですか??」

「ありがとう、夢兎っ!! おまえはガチャの女神だっ! 俺はおまえに一生ついていくからな!!」

「…………はあ。どうでもいいから、あっち行ってください」


 キッチンに立つ夢兎の手を取り、感動にせるシャフイザ。

 そんなシャフイザに対して心底呆れたような表情を向けると、シッシッとシャフイザを追い払い、ランチの準備を続けた。


 ゲームには興味がないのでよくわからないが、シャフイザのハマっているソーシャルゲームはカードゲームみたいなもの? で、いいカードがあればあるほどいいらしい。

 そして、そのカードを「ガチャ」と呼ばれるくじ引きのようなもので集めるらしいのだが……シャフイザはこのくじ運が絶望的に悪いらしく、よく代理で引くことをお願いされる。


(私が押す(タップ)すると、大当たりの確率が天文学的に上昇するみたいだけど……。何かこう、運を無駄遣いしている感じがして、あまりやりたくない……)


 というか、ゲームに夢中になって発狂しているシャフイザは、正直気持ち悪いのでゲーム自体やめて欲しいと内心では思っている。


「ゲームをするなとは言わないけれど、いい大人なんだからもう少しなんとかならないのかしら……アレは」


 切った野菜を洗い、エプロンでサッと手を拭って冷蔵庫を開けてぼやくと、キッチンカウンターの上に置かれた夢兎の携帯が幾化学模様の渦を画面に表示プライズした。


「アア、全ク同感ダ。イツ見テモ、アノgameヲヤッテイルシャフイザハ見ルニ耐エナイ。末期ノgamble(ギャンブル)中毒者ハ、イツノ世モ哀レナモノダ」


 夢兎の携帯に「降りてきている」シェステナーゼが、いつもの硬質な音声で呆れたようにそう言うと、夢兎は口元を綻ばせて肩を竦めた。


 夢兎の携帯には、遠隔補助リモートサポート機能を利用した専用アプリがインストールされており、マシンに搭乗していなくてもシェステナーゼとコミュニケーションを取ることができるようになっている。

 ドライバーの性格を学習するために、シェッフェル・エッフェルの技術パートナーであるネリィ・プライドが開発した試作技術であり、専用の携帯でないと使えないものだが。

 この近未来的な機能のおかげで、シェステナーゼともだいぶ打ち解けることができた。


「デュフフフフフ……強い! 強すぎるっ! これが人権やっ!」 

「…………はあ」


 変態じみた恍惚顔で熱中しているシャフイザに、ついため息が漏れる。 

 この人は基本的には、日本のヘンタイ文化を愛するちゃらんぽらんなダメ人間だ……。

 でも、レースのことだけはそうではない。


〝改善できていない、重要な問題〟

 それを頭の中に思い浮かべると、夢兎はレースに赴く前のように表情を引き締め直し、ランチの準備を進める手を早めた。


 * * *


「おまえ、相変わらず料理上手いな」

「ありがとうございます。でも、先生がいいんだと思います。前に料理好きの同級生の子がいるって話しましたよね? その子にいろいろ教えてもらってるんです」

「ああ、そういえばそんなこと言ってたな。……ん、ん、んんっ! このホワイトソースのついた魚料理もいけるな!」


 二十分後。

 素朴だが手間のかかった和洋折衷料理がテーブルに並ぶと――二人とも体重のことを考えなくてはいけないので、当然量は少なめ――、シャフイザは「待ってました!」と言わんばかりに箸をつけ、何度も舌鼓を打った。


 もぐもぐ美味しそうに食べているシャフイザを見ていると、つい頬が緩んでしまう。

 それを隠すように水を一杯飲むと、料理に箸を進めた。

 ……美味しい。我ながらいいデキだ。

 でも、味わって食べていたのは、最初の数分のことで。気が付けばレースのことが、頭に浮かび始めた。


「ふっ、お得意の悩み顔だな。んじゃ、そろそろ本題の……《フェノーメノ》の話っスか」

「……はい」

 

 こちらの内心を察して水を向けてきたシャフイザに対して、短く答えると。

 箸を置いて、太ももの上で両拳を握り込み、〝改善できていない〝重要な問題〟《フェノーメノ》について、考えた。


《フェノーメノ》とは――――、シャフイザとシェステナーゼが生み出した、超人的コーナリング・テクニックの呼び名だ。

 それは、超常現象フェノーメノという名のとおり、技術テクニックというよりほぼ奇跡マジックに近い。

 ブレーキング時に通常よりもスピードを殺さずにターンインし、シェステナーゼによる緻密な車体制御によって鋭角的にフロントの向きを変え、物理法則を無視したかのようなポイントで加速に入る――強力無比な最速最短突破走法。


 これが決まれば、異次元のコーナリングスピードとトラクションパワーで、どんなライバルでも追い抜く(オーバーテイク)することができる。

 しかし、極度のオーバースピードでフロント、リヤ、両タイヤをスライド&パワー・オンさせるため、ドライバーがシェステナーゼの想定した入力を行えなかった時は一瞬でタイヤを壊すことになる。

 最悪の場合、コース外に飛んでいってしまう可能性もある…………まさに諸刃の剣。


 Velo Trophy史上 《最速》と謳われるシャフイザ・クライ以外には、何人なんぴとたりとも成し得ることはできないといわれる、神の御業みわざ――――それが《フェノーメノ》だ。


 当然だが、新人ルーキーの自分がいきなりそんな武器を使いこなすのは不可能だ。

 しかし、シャフイザが使っている《完成型 フェノーメノ》ではなく、パフォーマンスを抑えた《簡易型 フェノーメノ》であれば、理論上は自分にも使いこなせるはず。

 はずなのだが……。


「先日行ったシミュレーターテストでも、《フェノーメノ》の練習はしたのですが……成功率は20%以下でした」

「ん…………。おまえがデビュー戦で走る『スズカ・サーキット』は、抜けるポイントが少ない。そういう場面でこそ、《フェノーメノ》はとっておきの飛び道具として役に立つんだが」

「でも、《フェノーメノ》は失敗すれば……」

「まぁー、お察しのとおり……ってこった」

「ッ……」


 シャフイザとシェステナーゼの得意手フェイバリット――――《フェノーメノ》を使いこなすことができれば、目標である「デビュー戦・表彰台」達成に向けて大きく前進することができる。

 けれど、リスクの高さと成功率の低さ。それを考えると……胸に不安が広がる。


 改めて考えてみても、自分では決断できそうにない。

 なので、シャフイザに判断を仰いだのだが……。


「そりゃあ、自分で決めるべきだ」


 それは甘えだ、と言わんばかりにきっぱりと言葉を突き返された。

 シャフイザの強い反応に気圧されて、こくんと喉が鳴った。


(それができないから訊いたのに……)


 自分の中で、甘えが重なる。

 自然と視線が落ちて、胸の中に弱気がやってき――――かけたが、その時にふいに。


 ――――約束が、あるから……


 テストの後、シャフイザが英二に対して発した言葉が脳裏を走った。

 あの時、シャフイザが見せてくれた芯の通った、本当の意味での強い気持ち。

 あの、どんな苦境にも屈しない姿勢を見て、「私も、ああならなくてはいけない。それができなければ、いつまでも「グッドれた敗者ルーザー」のままだ」と、心底思い知った。

 

(それなのに私は…………ここで逃げてはダメだ! 自分を変えることは、誰にも頼めない! 自分は自分で変えるしかない! 強くなるんだ! 私のレースは、私が決めるんだ!)


 そう自分に言い聞かせ、倒れかかった闘志をなんとか首根っこを掴んで起こすと、気を入れ直すように大きく息を吸った。

 そうして意を決したように視線を上げると、シャフイザの目をしっかりと見据えて言った。


「次のレース……私は、《フェノーメノ》を使って勝負します」  

「ン、夢兎!? ダガ、君ハ――」

「リスクは馬鹿デカいぞ? これだけのレースを自滅して終わったら、後悔は量り知れねえ。二度と立ち直れないかもしれないぞ?」


「!!」のマークを携帯の画面に表示プライズしたシェステナーゼが、心配気な音声を発したが。

 続きを制すると、シャフイザが再び厳しい言葉を圧してきた。


 この一戦は、自分のレースキャリアを決めるレースと言って過言ない大一番。

 それを考えれば、シャフイザの言葉は大袈裟でもなんでもない。


 でも、もう覚悟は決まっている。


「それでも、やります……! 『デビュー戦・表彰台』という大それた目標を、ノーリスクで達成できるほどVeloは甘くないですよね? それなら、やれることは全てやり切りたいんです!」

「夢兎、君ノ主張ニハ賛成デキナイ。君ハ順調ニVelo(ベロー) Voiture(ヴォワチュール)ヲ学習シテイッテイルガ、マダmachine(マシン)ヲ自在ニcontrol(コントロール)デキテイルトハ言イ難イ。ソンナ状況デ《Fenomeno(フェノーメノ)》ヲ使エバ、raceヲ失ウドコロカ大怪我ヲ負ウ危険性モアル」

「ッ……!」

「君ガFullフル performanceパフォーマンスヲ発揮デキルmachineマシン settingセッティングヲ、私トシャフイザガ必ズ見ツケ出ス。焦ル気持チハ理解スルガ、ソノ選択肢ハ賢明デハナイ」


 シェステナーゼが現状を踏まえ、再考を促してきた。

 経験者から言えば、今の自分が《フェノーメノ》を使うことは、無謀以外の何ものでもないのだろう。


 自分の意志を貫く気持ちに、激しい向かい風が吹いてくる。

 でも、歯をぐっと噛み締めてその向かい風を耐えきると、心で燃え盛る炎の勢いそのままに言葉を継いだ。


「シャフイザさんとシェステナーゼなら、私のマシンのベストセッティングを出してくれるって信じてます。……でも、それで思いどおりにレースが展開したとしても、Veloの海千山千のライバルたちがすんなりと表彰台を獲らせてくれるとは思えません。最後は絶対、激しい接近戦バトルになるはずです。でも、私は……」


 英二に指摘されたこと。

 ここ数年、参戦してきた選手権シリーズの勝負どころといえるレースで、ライバルたちに競り負け続けていることを思い出す。

 それは、隠しようもない事実だ。


 しかし……!


「ここ数年、私はそういった最後の競り合いでライバルに敗北し続けてきました……。でも、次のレースでは絶対にそうなるわけにはいきません! そうならないためにも、《フェノーメノ》という切り札が必要なんです! ……だから、挑戦させてください!」

「シカシ、夢兎……」

「このチャンスを逃したら、次はいつVeloに昇格するチャンスが来るかわからない……。もしこのチャンスを逃して、シェッフェル・エッフェルが撤退するようなことになったら、これまでのレースキャリアをサポートしてきてくれたシャフイザさんやチームのみんなに対して申し訳が立たない……。お婆さまに恩返しするためにも、私は絶対にシェッフェル・エッフェルの撤退を阻止したい! 次のレースは、自分のレースキャリアの全てを賭けて勝負しないといけないレースなんです! だから、無茶なのは承知の上で、それでも挑戦したいんです。だから…………お願いします!!」


 勢いに任せて思いの丈を全部吐き出すと、テーブルに両手をついて深く頭を下げた。

 シャフイザとシェステナーゼの負担を考えると胸が痛む。でも、今は「結果を出す」ことが最優先だから。

 面倒をかけて申し訳ないという気持ちをぐっと飲み込んで、自分の主張を押し通す。


 そうして頭を下げたままでいると。

 向かいの席から、大きく息をつく音が聞こえてきた。


「わかった。んじゃ、それで行くか」

「!? シャフイザッ!?」

「ん? なんだ? 俺は別に反対してたわけじゃないぞ。表彰台争いをするためには、現状の戦力じゃどうしようもない。リスクを負ってでも、戦力アップしなくちゃならないってのは事実だからな」

「シカシ……!」

「本人の覚悟も見たし。おまえが心配するのは十分理解できるけど……ここはやるしかない」

「……あの、それじゃ……」

      

 先ほどの言葉からして、シャフイザはどちらかと言うと反対だと思っていた。

 なので、あっさりとOKが出たことに驚いてしまって。

 目をパチクリさせながら、確認するように訊いた。


「ん? だから、OKだって。おまえがこんな無茶やらなくちゃいけない状況になっちまってるのは、俺が大ポカやったせいだしな……。責任取って、このくらいの無茶は何とかしねえとな」

「……あ、ありがとうございます!! 私、本当に……」


(話が通った。通ってしまった……!!)


 シャフイザの二度目の答えを聞いて、ようやく事実を飲み込むと、嬉しさで胸が一気に一杯になった。

 驚きと歓喜が抑えきれず、食事中にもかかわらず席を立った夢兎は、胸の前で両手をぱんっ! と合わせた。


「私、精一杯頑張ります!」

「おう。……って、落ち着けよ」

「落ち着けませんよ! 今すぐにでも、シミュレータールームに行きたいくらいです」

「おまえな、どんだけだよ……。あーでも、いいか? これだけは約束しろ。パフォーマンスを落とすとはいえ、《フェノーメノ》は今からどれだけ頑張ろうが完全にマスターできる代物じゃない。あくまで奥の手。レース中、チームやシェステナーゼの同意なしには絶対に使うな。それが条件だ……いいな?」

「……はい」


 やや不満を感じたが、ここが妥協点だろう。

 そう判断して頷くと、自分の携帯セルフォンに視線を向け、シェステナーゼにも同意を求めた。


「……ヤレヤレ。変態的カツ無茶苦茶ナdriving(ドライビング)バカリスルpartner(パートナー)カラ解放サレテ、私ノ仕事モ楽ニナルト思ッテイタノダガナ」

「ごめんなさい、シェステナーゼ。でも、私は……」

「冗談ダ、夢兎。君トシャフイザガ実行スルトイウノデアレバ、私二拒否スル権利ハナイ。driver(ドライバー)デアル君ガソコマデシテヤリタイト言ウノナラ、私ハ君ノ可能性ヲ信ジテ、全力デsupport(サポート)スルマデダ。タダシ、成功ノ可能性ガ『0』ダト判断シタ場合ハ、team(チーム)ニ通告スル。ソレダケハ、忘レナイヨウニ」

「うん、わかったわ。ありがとう、シェステナーゼ。頼りにしてるわ」


 意気良くそう返すと、シェステナーゼは携帯セルフォンの画面にサムズアップを表示プライズした。

 それを見て微笑むと、嬉しさに代わって胸に広がってきた闘志をぐっと握りしめるように、胸に拳を当てた。


本番レースまでに私がマシンに対する理解力を高めて、二人がフリー走行でブラッシュアップしたセットアップに適応して、《フェノーメノ》を切り札として使えるようになれば……運に頼らなくても表彰台を狙える……」

「いや、それが全部上手くいったとしても表彰台は厳しいだろう」

「え……?」

「おまえはまだタイヤを上手く使えてないし、Veloのバトルの厳しさもまだ分かってない。実力で表彰台を獲るには、もう一つ大きな一手が必要だろう」

「それは、そうかもしれませんけれど……。何か当てでもあるんですか?」


 盛り上がってきた気持ちに水を差されたので、少し眉をしかめて返す。

 するとシャフイザは、肩をすくめて口元を緩めた。


「まあな。俺もこのままじゃヤベェって思ってたからな。……ちと不安要素もあるが〝《《アイツ》》〟なら多分ノってくれるだろう。まあ、期待して待ってろ」

「……え? 《《アイツ》》って誰のことです?」

「さあ、誰だろうな。……まあメシ食った後、ガチャ引いてくれるって言うなら教えてあげなくもないけど」

「真面目な話です! バカ言ってないで教えてください!」

「ばかやろう、こっちだってマジだよ! 俺はあのゲームに命かけてんだぞ。それなのにおま……あぶぶぶぶぶぶっっやめぺぺぇ……」

「教えなさい!」


 頬を両手で引っ張り回してとっちめると、ようやくシャフイザは「メシのあとにお話しさせていただきます」と言った。


 真面目に感謝してたのに、なんですぐにふざけるんだろう? こっちはレースキャリアの集大成って思うくらい真剣になってるのに……。

 心の中でそんなことをぶつくさ言いながら食事を終えると、シャフイザがもったいぶった「もう一つの一手」を教えてもらった。

 

 それは、夢兎が「《フェノーメノ》を使いたい」と主張したのと同じくらい。

 ……いや。それ以上に「飛んだ話」であり、無茶を通した夢兎もさすがに実現不可能だと思った。


 しかし、シャフイザは「アイツはチョロいからきっと大丈夫」と言い切り、その一手の実行を決めたのだった。


 ドマイナージャンル&低ポイントの拙作をお読みいただきまして、ありがとうございます!

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