デスゲームをクリアした俺。終わった世界で始まったのは、美少女(嫁)とのラブコメでした
デスゲームに関連させたラブコメ書きたくなったので書きました
気軽な気持ちでどうぞ(o^―^o)ニコ
「すべてが終わったら、話したいことがあるんだ」
「聡くん……。実は、私も……」
顔を真っ赤にしてそう言う遥香。
銀髪の長い髪がふわりと揺れ、この上なく愛おしいと思った。
「そうか。じゃあ、絶対に勝とうな」
「はいっ!」
俺たちはいつも通り拳と拳を合わせ、敵と相対する。
大丈夫、心配はない。
俺と遥香なら、きっと幸せな未来に辿り着けるから。
「いくぞッ‼ うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼」
地面を蹴る。
そして俺は、力強く引き金を引いた――
***
「……終わった、のか」
「そう、ですね」
すっかり握り慣れてしまったライフルを投げ捨て、天を仰ぐ。
ある日突然始まったデスゲーム。
それが今ようやく、終わったのだ。
「たくさん、死んだな」
「瑠美も貴子も麻実も。よくしてくれた反乱軍総長の鮫島さんも。みんなみんな、私たちのために……」
隣でガクリと肩を落とし、地面にぽたぽたと涙を落とす遥香。
俺と共に最後まで戦ってくれた遥香は、傷を負って汚れてもなお、荒廃した世界の中で輝いていた。
「うっ……うぐっ」
彼女の傍によって、そっと頭を撫でる。
「もう、終わったんだ。だから、我慢しなくていいよ」
「うぐっ、聡ぐんッ!」
「今だけは、泣いたっていいんだ」
「……うぅ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
彼女は泣いた。
すべてに終わりを告げるように。
「ほんとにやっと、終わったんだな……」
俺は確かにすべての終わりを実感して、涙を流した。
デスゲームは、終わったのだ――
***
「それで、これからどうしますか?」
目を赤く腫らした俺たちは、拠点に戻ってこれからのことを話していた。
というのも、もう周りには俺たちしかいない。
あんなにもいた人類は、絶滅してしまったのだ。
「そうだな……ひとまず、生きよう。死んでしまった人たちの分まで」
「そうですね。どんなに世界が終わっても、私たちだけになっても。生き残った私たちには、生きる義務がありますから」
「だな」
遥香が力強くそう言う。
出会ったころに敵に怯えて失禁していた奴とは思えないほどに、表情は心強かった。
「そ、それで……だな」
「は、はいっ!」
「戦いが始まる前に、話していたことなんだが……」
「あ、あわわわわわわわ……」
プシューと顔から水蒸気を出す遥香。
いや漫画か! とツッコむ余裕は俺にはなく。
俺も同じく顔から火を噴きながらも、男として立ち上がる。
そして遥香に手を伸ばし、はにかんで言った。
「遥香! 俺と結婚してくれ!」
「っ……‼」
驚いたように口を開いて、でもすぐに目を細めて、
「はいっ!」
――かくして、俺と遥香は結婚した。
***
ってなわけで見事に死亡フラグをへし折って結婚した俺たち。
実は17歳なのだが、もはや法律など関係ない。
だってもうこの世界は、俺と遥香しかいないのだから。
……だけど、そこが問題なのである。
「……とりあえず、これからどうする?」
「の、ノープランだったんですか⁈」
「だ、だって……結婚することしか考えてなかったし」
「さ、聡くん……」
なんだその愛おしい表情は。
今すぐにでも抱きしめたくなるだろうが!
ってか、俺たち結婚したんだし抱きしめてもいいのか!
――では。
「ひゃっ! さ、聡くん⁈」
「……しばらくの間、こうさせてくれ」
腕の中で、小さな遥香を抱きしめる。
まるで幸せそのものを抱いているような感覚だった。
「……はい」
遥香が俺の背中に手を回してくる。
幸福度指数が二倍に増加。
「聡くん、ちょっと苦しいですよ」
「わ、悪い」
「……いえ、なんだかそっちの方が、守られてる感じがあってなんというか……気持ちいいです」
……な、なんて破壊力だ。
デスゲームのラスボスって言われても信じるレベルである。
ただ、あの忌々しいデスゲームはもう、終わったのだ。
もう俺たちに、悲しいことなんてない。
「遥香。幸せになろう」
「ふふっ。聡くん、何回言うんですか?」
「何度だって言うよ。だってその方が、幸せになれる気がするから」
出来の悪い頭にそう刷り込んでおけば、きっと無意識のうちに幸せになれる。
バカなりの工夫だ。
「……私は、もう幸せですよ?」
そんなことを、世界一愛してる遥香に言われたら俺は……。
「俺は、幸せじゃないな」
「えぇ⁈」
「幸せじゃなくて……超幸せだ」
「……なんですか、聡くんの……ばか」
その顔が見たくていじわるしてしまった。
許しておくれアーメン。
男とは、愛する女に対する欲望には逆らえないのだ。
罪深い生き物だこと……。
その後、満足するまで抱き合った。
幸せが、飽和するくらいに。
***
「で、俺たちのこれからについて、二つの選択肢があると思う」
「二つの選択肢?」
「あぁそうだ」
ほんとさっき思いついたのだが。
「まず一つ目。このまま二人で仲良く暮らして、生涯を終える」
「なるほど……世界に私と聡くんだけ。ふふっ、笑みが零れてしまいます」
っ……!
なんで俺の嫁はこんなに可愛いんですかね?
さっきあんだけ抱きしめたのに、また抱きしめたくなったよ。
恐ろしいね、これが鬼嫁ってやつかな。
……うん、違うか。
「そしてもう一つは――未来を作ること」
「未来?」
「そう、未来だ」
今、この世界に未来はない。
荒廃した町。誰一人いない世界。
――だが、俺たち二人がいる。
夫婦であり、男女である俺たちが。
「つまり、子作りをするってことだ」
「こ、子作り⁈」
正直、言うのはすごく恥ずかしかった。
結婚したとは言え、まだキスだってしていない。
それに付き合うという段階を踏んでいないから、出来立てほやほやなのである。
すべてのステップを飛び越えて急に子作り。
「別に性欲駄々洩れで言ってるわけじゃないぞ? もちろん段階は踏んでいくべきだと思うし、遥香と話し合っていくつもりだ」
「…………はぅ」
さすがに性に関することは彼女には刺激が強すぎるようだ。
まぁ無理もない。
何せ一度俺の裸を見た時、顔を真っ赤にして叫ぶぐらいだったからな。
そこが遥香の可愛いところなんだけど。
「ほんとに、無理強いはしない。あくまでも遥香の意見を尊重する」
「……こ、心の準備がまだ」
「そ、そうだよな。時期尚早だった。悪い」
「い、いや別に聡くんは悪くないんです! ただ、もう少し時間が欲しいだけで……」
思えば、少し前にデスゲームが終わったばかりだというのに早まりすぎていた。
おそらくすべてが終わった安心感と、遥香と結婚したことからくるリトル聡の起床のせいだろう。
全く……性欲に支配されるんじゃないぞ俺。
洗脳にも耐えたのだから、これくらい余裕だろう。
「そうだな。じゃあこれから、ゆっくり話していこう」
「はい! よろしくお願いしますね……旦那様?」
「…………」
我慢デキナイヨウ……。
俺はまた遥香を抱きしめた。
「もう、聡くんったら……」
可愛すぎたので、その後はずっとイチャイチャしました。
嫁最高。
***
突然ですが、一軒家を購入しました。
……と言っても、この世界に不動産屋はないし、何なら俺たち以外人はいないから無料なんだけどね。
ほんと、平和です。
「ふぅ、ひとまず、綺麗になりましたね」
「だな」
汗を拭って、二人で窓の外を眺める。
視界いっぱいに広がる、青い海。
ナイスオーシャンビュー。
「『すべてが終わったら海に住みたい』って言ってたけど、こりゃいいな」
「でしょう? きっと聡くんに気に入ってもらえると思ったんですよ」
満足げに胸を張る遥香。
わざわざ車で移動してきた甲斐があった。
「ここで、私たち二人で暮らすんですね」
「あぁ」
なんだか感慨深い。
つい最近まで死がすぐ隣にある生活を送っていたのだ。
それが急に終わって、訪れたのは昔よりも平穏な日々。
「……大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。寂しくなんてありません。だって――聡くんがいるんですから」
「……ははっ、そうか」
「はい!」
寂しがり屋の遥香。
人が一人いなくなるごとに涙を流して、夜な夜な俺の手を弱く握ってきたのを思い出す。
その時俺は、確かに思ったんだ。
遥香を幸せな未来に送り届けよう、って。
「もう絶対、一人にしないよ」
「私も、一人にしてあげませんよ?」
「俺こそ、一人にしてやるもんか。お風呂だって、何ならトイレでも……」
「と、トイレはさすがに……」
「……すみません」
ちょっと調子に乗った。
……いや、だいぶ乗った。
「もぅ。聡くんは寂しがり屋ですね」
「お互い様だよ」
「ふふっ。じゃあ二階も掃除しますか」
「だな」
重い腰を持ち上げて二階に上がる。
押しては返す波の音が、この上なく心地よかった。
***
――その日、人類は思い出した。
部屋を掃除しているときに、現れる『奴』の姿を。
「お前……生きていたのか」
終わった世界でもなお、生きているとは。
ほとんどの人類が消えてもなお、お前は息をするんだな……。
まさかコイツに出会って、涙ぐむとはな……。
「久しぶりだな――G」
G、つまりはゴキブリ。
数えきれないほどの人間を恐怖に陥れた、火星にだって住めちゃう強靭な生命体である。
俺もコイツは苦手だ。
……だが、今は危険を共に乗り越えた戦友のように感じる。
「見ろ遥香。コイツ生きてやがったぞ」
「どうしたんですか聡くん――って、ゴキブリ⁈」
「すごいなこの生命力。感心したようんうん……って、遥香どうした?」
気づけば遥香は俺の横から移動して、俺の背後に回っていた。
肩はぷるぷると震えていて、目には薄っすら涙が滲んでいる。
「わ、私虫ダメなんですよ!」
「あぁー確かにそうだったな」
そういえばジャングルに転移されたとき、虫が怖くて俺の背中に張り付いてたっけ。
懐かしいな。
「ど、どうにかしてください聡くん!」
……嫁に頼まれちゃしょうがない。
ほんとなら生き残った者同士、言葉が通じないとは言え称え合おうと思っていたのだが……致し方ない。
俺の優先度の頂点は嫁で決まっている。
俗に言う、嫁コンである。
「遥香、下がってろ。俺がやる」
「お、お願いします……!」
「あぁ」
俺は忍び足で奴に近寄る。
その場にあった雑誌を丸めて、握りしめる。
――すまん、G!
俺は一撃で仕留められるように、目いっぱい力を込めて雑誌を振り下ろした。
見事に命中。
どうやら一発で逝ってくれたらしい。
……よかった。苦しまずにすんだんだな。
「ありがとうございます、聡くん。……聡くん?」
「…………」
「なんで、泣いてるんですか?」
「……う、うるせぇ泣いてねえーし!」
「……そうですか」
遥香はそう言いながら、俺の頭を優しく撫でてくれた。
さよなら、G。
またいつか会おう。
***
ふと思い出す、あの頃のこと。
『ヤバい今すぐ逃げろ! よくわかんねぇけど死ぬぞ!』
教室中に怒号が飛び交う中、背後で何人ものクラスメイト達が死んだ。
俺には親しい奴が一人もいなかったけど、知っている奴が惨殺されていくのを見ると吐き気がした。
俺も逃げようと教室から出ようとしたとき。
『痛い……』
廊下で足を抑える遥香の姿があった。
遥香は俺と違って、クラスで人気者。
だがこの緊急事態において、遥香は誰からも見向きされていなかった。
『だ、誰か……!』
――なぜだろうか。
この時俺は、無意識のうちに遥香の手を取っていた。
「懐かしいな」
「ですね。ほんと、あの時は死んじゃうんだと思ってました」
今でさえ笑って話せるが、あの時の遥香はだいぶふさぎ込んでいたように思える。
「でも聡くんが助けてくれたから、私は今こうして聡くんの隣で寝られるんです」
「遥香……」
「私、幸せです」
遥香が俺の胸に顔を埋めてくる。
俺はそっと抱きしめた。
「……不安か?」
「……少し」
「俺もだ」
「聡くんも?」
「あぁ」
そりゃそうだ。
だってこの世界には、俺と遥香しかいないんだから。
この先生きていけるのか。
遥香を幸せにできるのか。
何が起こるか分からない。
平和が訪れるのか分からない。
分からないことだらけなのだ。
「不安だから、遥香のことを抱きしめたくなるんだ」
「聡くんったら……寂しがり屋ですね」
「お互い様だろ?」
「ウィンウィンです」
「最高だな」
ふふっと笑って、また強く遥香の体を引き寄せる。
ビクンッ、と反応する遥香の体。
「さ、聡くん?」
「大丈夫だよ。襲ったりしないから」
「……は、はい」
耳が真っ赤だ。
全く、可愛い奴め。
「俺たちなら大丈夫だ。大丈夫だ」
「はい……大丈夫です」
「もう怖い夜はないよ」
「はい! 聡くんがいますから」
「俺も、遥香がいるから大丈夫だ」
「ふふっ、やっぱりウィンウィンです」
「超最高だな」
――気づけばそんな会話は終わっていて。
遥香の穏やかな寝息が聞こえてきたところで、俺も目を瞑る。
でも少し何かしたくなって。
遥香の頬にこっそり口づけをし、眠りに落ちた。
***
朝がやってきた。
最高に可愛い嫁が、缶料理を提供。
これは……ミシュ〇ン五つ星だな。
「じゃ、いただきます」
「召し上がれ~」
海を見ながらの朝ごはん。
こんな穏やかな生活は、夢のようだ。
そして目の前にエプロン姿の嫁。
……抱きしめたいが、堪えろ俺!
「そういえば缶が少なくなってきました」
「マジか。じゃあまた取りに行かないとな」
「ですね。あと栽培も、していかないとです」
「だな。まぁ一つ一つやっていこう」
「はい!」
デスゲームをクリアした俺。
終わった世界で始まったのは、美少女(嫁)とのラブコメ。
不安だって、まだまだある。
俺たちに未来があるのか。
遥香を幸せにできるのか。
毎晩明日が来るのかと不安になって。
でもそれを感じているのはお互い様で。
俺たちは抱き合って、終わった世界を生きていく。
幸せに、生きていく。




