1 二人っきりの文芸部
初投稿になります!
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朔ノ宮学園高等部二年の僕、鷹野 氷冴は幼馴染の一人で生徒会長の高坂 翠に呼び出され空き教室に来ていた。
「さっ、入って?ここが今日から氷冴と私だけの部室よ。」
そう言い放ち奥に設置されたソファに腰掛け、缶コーヒーを啜る彼女は大人の女性のような独特な雰囲気を醸し出していた。
「僕、部活に入るつもりないんだけど…高坂さん?」
「昔は翠って呼んでくれたのに…」
あれ?声が上手く聞こえないな…
ラノベの主人公ってこんな感じなんだ。
と、少し感心していると彼女は話を続けた。
「氷冴に拒否権はないわよ」
「な、なんで!?」
「当たり前じゃない。生徒会長が無理言って作ったんだから、やっぱり必要ありませーん♪なんてできないでしょ?」
「なんで我儘言ってまで作ったんだ…」
「そ、それは…ゴニョニョ…」
「いいわ!もう入部届は提出してあるし!ようこそ朔ノ宮学園高等部文芸部へ!!!」
あぁ…これもう止められないやつだ。
長年の付き合いもあり、心の中で察してしまった。
「さよなら。僕の優雅な放課後のひと時…」
「一応言うけれど、この部活で読みたい本を買うときは言ってね。学校の備品にはなるけど部費で買えるわよ?」
「そ…それは、ラノベも入りますかね…」
「ええ。氷冴が好きなものは知ってるからね。無理は通したわ」
「そんなこともできるんか。生徒会長…」
しまった…つい思った事が口に
「愛の力ね」
「ん?」
えっへん!!とでも言うかのように胸を張る彼女。
主張の少ないむn
「殺すわよ。」
「すみません」
この人には逆らってはいけない。
僕のシックスセンスがそう言っている。
「あの…高坂さん?」
「翠でしょ。なんで呼び方変わってるのよ…」
「い、嫌かな~って思って…」
「今更他人行儀な方が嫌よ。翠でいいわ」
「わかったよ…」
「それと部活のことは、他言無用でよろしく。勿論、桜にもね」
桜とは、僕たちのもう一人の幼馴染、東雲 桜のことだ。
高校に入ってから突如ギャル化してしまった。
未だに何故ギャルになったかは、不明だったりする。
才色兼備の生徒会長、高坂翠とクラスの人気者で明らかにカースト上位の東雲桜に中学まで挟まれていたはずなのに、なんで僕はここまで平凡なんだろう。
こ…これが幼馴染格差ってやつなのか?
でも高校に入ってから僕が徹底的に避けていたのも否めないんだよな…
二人ともあんなに美人になっちゃって…僕じゃ二人の隣には立てないよ。
そんな自虐満載の思考を巡らせていると、翠が口を開いた。
「とりあえず、この入部届と備品申請書に欲しい本を書いて頂戴」
「え、入部届は提出してあるってさっき…」
「あぁ…あれは嘘よ。ああでも言わないと折れないじゃない」
「は、嵌められた…」
「ほら、とっとと書いて」
せかされ僕は書類を書き始めた。
帰宅部エースとして一秒でも早い帰宅を目指していた僕が、遂に部活に入部か。
「そういえば、この間告白されたのは本当?」
なるほど。これが本題か。
「うん。されたよ?」
「な…なんて返したの?」
いつもとは違い、どこか不安そうな声色で翠は問いかけてきた。
「断ったよ。玲さんには僕よりもお似合いでいい人がいるはずだってね。それ以前に僕にはもったいなさすぎるよ…」
島崎 玲
僕と桜と同じクラスのクラス委員で、先週僕に初めて告白してくれた人。
何事にも一生懸命で、僕は彼女の仕事をよく手伝っていた。
まぁ、この状況じゃ面と向かって会話しずらいけど…
因みに、僕目線だと彼女も翠と桜に引けをとらない美人だ。
あれ、僕の周り美人多すぎね?ラブコメか?これ。
「本当、卑屈になっちゃったわね。誰のせいかしら」
「なんでだろうね。あはは…」
こんな愛想笑いしかできないなんて、僕もみっともないなぁ。
でも原因が翠と桜なんて口が裂けても言えない。
「ごめんね…」
僕の思っていることが全て筒向けになっているかのように、翠は呟いていた。
「ううん。僕こそ勝手に避けたりしてごめん。二人が遠くに行っちゃった気がして寂しかったんだと思うよ。二人っきりだけどこれからよろしくお願いします。」
「こちらこそ。末永くよろしくお願いしますっ」
「すっ、末永く!?」
「冗談よ。今はねっ」
海外の父さん、母さん。聞こえますか?
帰宅部のエース、鷹野氷冴。遂に部活に入りました。
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コンスタントに進めていきたいと思ってますので、拙い文ですがお付き合い頂けると幸いです。