陽だまりからの贈り物 優しさの陽だまりから
「お寝坊さん、起きてくださいね。」
「もう起きろよ。」
「寝坊助だな。」
「気持ちがいい朝ですよ。起きましょうよ。」
う~ん、ほんとだ。気持ちがいい。
優しいお日様。
暖かい土と枯れ葉。
見守るような魔法の力。
そして、喜びの水。
起きなきゃ。
私、起きなきゃ。
朝だ。ようやく来たんだ、朝が。
よし、ぐ~っと背伸びしよう。
んっ、やっぱりちょっと待って、もう少しだけお日様で暖まってからにしようかなぁ。
「お寝坊さん、また寝ちゃだめよ。」
「もう早く起きろ。一緒に散歩しようぜ。お日様が気持ちいいぜ。」
「俺は踊りたい気分だな、だってものすげぇうれしいんだもんな。」
「気持ちがいいのはわかりますが、・・・・・僕も眠くなってきちゃった。・・・・だって、土と枯れ葉のベッドが暖かくて気持ちが良いんだもの。」
「あらあら、せっかく起きたのにまた寝ないでね。
ようやく訪れた朝なのですから。うふふふふっ。」
その声は、お母さん・・・・・・、違うわね。
魔法の力で私をふんわりと包んでくれた方だ。
きっと、私のおばさんね。
「そうですよ、あなたのおばですよ。
早くあなたに朝のご挨拶をしたいの。
だから、お日様に向かって思いっきり伸びをしてごらんなさい。
そうすれば目が覚めますよ。」
うん、わかったわ。
暖かいお日様の方に向かって、思いっきり手を伸ばせばいいのね。
「そうしなさいな。」
「早くして。」
「早くしな。」
「僕も、もう一度お日様に手を伸ばそうかなぁ。」
よし、行くぞ、みんな待っててね。
今、お日様に手を伸ばすから。
いくぞぉ、いくぞぉ、そうおおれ、えいっ。
ぽ~んっ。
「皆、おはよう。」
「おはようございます。私の姉妹。」
「やっと起きたな、俺の姉妹。」
「まったく寝坊助が。もう起きないのかと思ったぜ、俺の友達。」
「僕も背伸びして目が覚めたよ。おはよう、僕の友達。」
「漸く5人、起きたわね。これでみんな揃ったわね。
今日の日差しは暖かくて気持ちがいいわね。
それでは、元気よく朝のご挨拶から始めましょうか。
まずは、私からね。
初めまして、皆の仲間の、そして、親戚のおばちゃんです。」
「おはようございます。おばさま。」
「おはよう、おばちゃん。」
「おばちゃん、おはよう。」
「おばさん、暖かい魔力をありがとう。」
そして、最後に私。
私は木の妖精、そうトレントなの。
今日、この魔の森で生まれたの。
姉妹と友達と一緒にね。
「おはよございます。初めまして、おばさん。これからよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いしますね。
漸く生まれてくれましたね。
私たちの仲間。
ずっとこの日が訪れるのを他の仲間たちと待っていましたよ。
生まれて来てくれてありがとう。
最後の仲間が生まれてからどのくらいの月日が過ぎたのでしょうか。」
「そうなんですか。そんなに長い間、私たちの仲間が生まれてこなかったんですか。」
「そうですね、あなた方の前に生まれた仲間は、え~とっ、・・・・・・、忘れちゃいました。」
「それぐらい昔ということなのですね。」
「そいつは俺たちのねぇちゃんか。」
「俺たちのにぃちゃんだぜきっと。」
「仲良くしてくれるかなぁ。」
「おばさん、どうして私たちの仲間はなかなか生まれてこないの。」
「それはねぇ、私たちの仲間が生まれるためには多くの奇跡、そう贈りものが必要なの。」
「どんな。贈りものが必要なの。」
「一つは、お日様の力。ほらここに陽だまりがあるわ。ここにいると力が湧いて来るでしょ。」
「そうですわね。ほんとうに元気が湧いてきます。」
「二つ目は、この大地。」
「土がないとしっかりと立てないもんな。」
「三つ目は私たちの仲間が作っている、私たちの暮らす森を、仲間のまわりを包み込んでくれている魔力。」
「確かになぁ、この魔力があるとお日様の力をもっともっと使うことができそうだぜ。」
「四つ目は私たちの仲間の仲間のからだ。そう、森の木々の木の葉が種となって、私たちは生まれてくるの。」
「そうなんだ、僕のからだの種は向こうに居る私たちの仲間の仲間の方の葉っぱですかね。」
「そうですね。私が彼からもらった体の一部、葉っぱが種となって、あなたとあなたの兄弟が生まれてきたの。だから、彼からの贈り物ね。」
「俺たちの姉妹の種になってくれたのはだれなんだ。もらったお礼を言いたいぜ。」
「それはそっちの方です。」
「ありがとうな。」
「ありがとうございます。」
「ありがとう。」
「そして、5つ目が最も手に入れることが難しい贈り物です。」
「いただくのが難しいんですか。」
「最後の贈り物は水なんです。」
「えっ、お水って、雲で大事なお日様が隠れてしまって、やがて空から落ちてくる、あの水? 」
「確かに私たちの仲間と私たちの仲間の仲間にとっては雨も空からの贈り物ですが、私たちの仲間が生まれるために必要な水とは違うようなんです。」
「じぁあれか、湿っている土の中にあるものか。」
「それも雨が土にしみ込んだものですから、私たちの仲間が生まれるときに必要な水ではないようなんですね。」
「じゃあ、どんな水が必要なんだ。わかんないよ。」
「そうなんです。私たちの仲間でもそれを知っているものはいません。
きっと、神様が気まぐれで、本当にたまにしかくれない神様の水なのではないでしょうか。」
「神様の水ですか。」
「それはくれって言ってもすぐには無理そうだなぁ。」
「だいたい神様ってどこにいんだよ。
神様がくれた水で俺たちが生まれたんなら、神様にもお礼を言わなくっちぁなあ。」
「僕もお礼が言いたいけど、神様がどこに居るか知っていますか、おばさん。」
「私も私たちの仲間も私たちの仲間の仲間の木々も誰も知らないの、神様がどこにいるか。
神様がくれたお水で私や私の仲間が生まれたのであれば、私も是非お礼が言いたいのですけど。」
えっ、ちょっと待ってよ。
それって、喜びの水のことよね。
私と私の仲間たちが生まれるときに必要な5番目の贈り物は喜びの水。
みんな忘れちゃったの。
喜びの水を種に垂らすことによって、私と私たちの仲間が生まれたのよ。
どうして忘れちゃったの。
こんな大事なことを。
ねぇ、みんなぁ。ぐすん。
「神様の水がどこでもらえるのかはわかりません。
でもね、皆は神様からお水をいただいて、今日、生まれた来たのよ。」
そうなのか、喜びの水は神様がくれるのか。
んっ、でもなんか変。
喜びの水は神様にもらったんだっけ。
「おばさま、今日、私たちが生まれたって言うことは、もしかして、今日、私たちはその神様のお水をいただいたということでしょうか。」
「でもよう、今日、神様に会ったり、その上、大事な水をもらった記憶なんてないぞ。」
「俺もねぇな。」
「僕も。神様からもらったならきっといっぱいお礼を言っていたはずだし。お礼を言った記憶はないよ。」
んっ、みんな何を言ってるの、違うわよ。
神様なんかじゃないのよ。覚えていないの。
喜びの水を私たち姉妹にくれたのは、そう・・・・・・・、はっきりとは思い出せないけど、もっともっと身近にいてくれた方で、お日様のような強く、それでいて穏やかで、私たち姉妹や友達を包み込むような優しさで満ちた光を背負った方だったわよ。
どうして、覚えていないの皆。
どうして、その光を背負った方を覚えていないの。ぐすん。
「皆さん、今日生まれてきた私の仲間たちよ、落ち着いて聞いてくださいな。
いいですか。
あなた方が生まれるために必要だった種、木の葉は、実はそことあそこにいる私たちの仲間の仲間の方々から、昨日、枝ごといただいたの。
そして、木の葉が付いたまま枝を編んで首飾りにしたの。
その首飾りは二本足で歩く種族、人族とエルフ族の2人にそれぞれ一個づつ差し上げたの。
彼らはこの魔の森があるエルフたちが住んでいる森から、人族の住んでいる森に、誰にも気づかれずに逃げて行きたかったの。
私が作った首飾りには、身に着けた者の姿が見えなくなるという妖精の魔法を掛けてあったの。
彼らが人族の住んでいる森に逃げるための手助けに、私は首飾りを作って、そして、それを彼らに贈ったの。
彼らは何とか昨日のうちに人族の森に逃げ込むことができの。
実は逃げ込みたかったのは若い男のエルフの方だけだったの。
若い男のエルフが逃げるのを手伝った若い人族の女の子の方は先ほどここに戻って来たの。
もう姿を隠す必要がなくなったからと、差し上げた首飾りを、エルフの若い男の分も一緒に返しに来たの。
その女の子はそこの陽だまり、枯れ葉のベッドで覆われた土の上に首飾りを二つ置いてエルフの暮らす森に帰って行ったの。
帰って来た首飾りは、陽だまりでお日様を一杯に浴びて、私たちの仲間が放った魔力で包まれて、そうしてさっきあなたたちが生まれたのよ。
人族の女の子に差し上げた首飾りに付いていた葉っぱからはあなた方3姉妹が。
エルフの若い男に差し上げた首飾りに付いていた葉っぱからはあなた方兄弟が、今日、ここで生まれたの。
そう言う訳で、私が差し上げた首飾りを着けて、この魔の森から人族の森に行って、人族の女の子が帰ってくるまでの間のどこかで、首飾りについた葉っぱが神様からお水をいただいたことになりますね。」
私たちの仲間のおばさん、違うの、それは神様がくれたお水じゃないの。
おばさんが作った首飾りを着けた人族の女の子が喜びの水をくれたのよ。
きっと、エルフの若い男の人も首飾りに喜びの水を上げたのよ。
喜びの水、ちょっと、しょぱいけど、喜びにあふれた水なの。
喜びに心が満たされると現れるお水なの。
そのお水が首飾りに残っていた私たちの種、葉っぱに付いたの。
今、思い出したわ。
それで5番目の贈り物をもらうことができて、ここに戻ってきたら、さらに1番目から4番目の贈り物をこの陽だまりでもらって、そうして、私たちは目覚めたの、生まれたの。
皆わかって、皆思い出して、ねぇ、お願いよ。
覚えているでしょう、喜びのお水をもらった瞬間はエルフの若い男と人族の女の子が喜びで満たされていたことを。
その喜びがあふれ出て、喜びのお水として、私たちの種に降りかかったのを。
ねぇ、思い出してよ~ぉっ。お願いよ。
ぐすん。ぐすん。
「あらあら、どうしたの一番のお寝坊さん。
突然涙ぐんじゃって。」
「だって、だって。」
「うふふふっ、何か哀しいことを思い出したのね。
それじゃぁ、あなたが喜ぶようなとっておきのご褒美を、私たちの仲間として生まれてきたくれたご褒美をあげちゃおうかなぁ。」
「ご褒美ですか、何でしょう。」
「お日様とお水、そして魔の力をいっぱい注いでくれるのか。」
「俺は倒れないようにそばで支えてくれる杭が欲しいなぁ。」
「僕は、僕は・・・・・・・、葉っぱのベッドでお昼寝。」
「うふふふふっ、残念ねぇ、どれも違いますわよ。」
「じゃ何。教えてよ。」
「今、その人族の女の子をここにお呼びします。
そして、あなた方が生まれたことを知っていただきます。」
「えっ、お母様にここに来ていただけるのですか。」
「母ちゃんがここに来るのか。」
「俺たちの父ちゃんは来んのか。」
「お父さんに会いたいなぁ。」
「ごめんなさいね。あなた方兄弟のお父様は人族の森から離れられないようなの。
だから今日はここに来れないの。
人族の女の子はあなた方が生まれる寸前までここに居たし、今は近くのエルフの森に居るので呼べばきっと大急ぎで会いに来てくれると思うわ。」
「私、母さんに会いたい。
会ってお礼が言いたい。
私に喜びのお水を掛けてくれてありがとうって。」
「喜びのお水ですか、確かに神様の水よりも、贈り物として、身近に聞こえますね。
いい言葉ですね。
それと人族の女の子はまだお母様というお年ではないんです。
確かに、喜びのお水を神様から頂いて、あなた方の種に掛けたということから思うとお母様と言ってもいいのでしょう。
でもね、一応はお若い方ですから、お姉さまとお呼びした方が良いのではないのでしょうか。」
「お姉様。」
「ねぇちゃん。」
「姉さん、お姉さん、お姉ちゃん。う~んっ、お姉ちゃんと呼ぼう。」
「それでは呼んできますね。」
「お姉様にお礼を差し上げたいわ。5番目の贈り物をありがとうって。」
「ありがとうを言うだけじゃダメなのか。」
「生まれたばっかりで、まだ、いろんな事はできねぇなあ。」
「何をしてあげたら喜ぶかなぁ。」
「元気なところを見せてあげるのはどうかしら。」
「無事に生まれて来たことを知っていただきたいわ。」
「元気に大きくなっていることをわかってほしいぜ。」
「生まれて来て、うれしいってことを知ってほしいなぁ。」
「皆が仲が良いってところを見てほしいと思うんだ。」
「心が弾み、体が躍り出すほどの喜びをみてほしいの。」
「無事に生まれて、だんだん大きくなって、皆仲が良くて、それがうれしすぎて心が弾んで、体が自然に踊り出してしまったところを見てほしいんですね。
どうするのが良いのでしょうか。
う~んっ。」
「おばさま、何か良い考えはありませんかね。」
「あなたたちはまだ生まれて来たばかりで、トレントとしての種族のお勉強も、妖精としての魔法のお勉強も、魔法使いとしての水と土と風の魔法のお勉強もこれからですからねぇ。
う~んっ。」
「おばちゃん何かないのか。」
「あっ、そう言えばトレントの若木は根っこを土から出して、自由に動けるはずです。100歳ぐらいまでは自由に動き回れるのです。
無事に生まれて、だんだん大きくなって、皆仲が良くて、それがうれしすぎて心が弾んで、体が自然に踊り出してしまった・・・・・か。
そうだわ、皆で手を繋いで踊ったらどうでしょう。
これから来るお姉さまのために元気よく、心を弾ませながら踊ったらどうでしょう。」
「お姉様に、踊りのプレゼントですわ。」
「俺の元気な姿をみてもらえるなぁ。」
「俺の喜んでいるところをわかってもらえるぞ。」
「うまく踊れるか心配なんだけど。」
「じゃぁ、今から皆で練習をしようよ。」
「そうしましょう。」
「そうだな。」
「よし、兄弟、手?、枝を出せ。」
「あっ、あんまり引っ張んないでよ。」
「皆、手を繋いだわね。じゃ、いくよ。
弾んだ心のままに体を動かすのよ。声も出してね。」
「うれしいなぁ~♪、うれしいなぁ~♪、ありがとう、お姉ちゃん♪、うれしいなぁ~♪、うれしいなぁ~♪」
「皆、息が合って、大変上手ですよ。
それであればみんなの気持ちが伝わると思いますよ。」
「おばさまが上手だって。」
「まっ、こんなもんだな。」
「本番ではもっとうまく踊るぜ。」
「僕、ちゃんと踊れてた? 」
「うまく踊れていたよ。とっても上手だったわ。」
「そうかなぁ、えへへへっ。」
「あっ、もうすぐお呼びしたお姉さまがいらっしゃいますよ。用意をお願いしますね。」
「は~いっ。」
「みんな声をそろえた元気なお返事ね。」
*
*
*
*
*
森の向こうから、女の子が二本足で歩いてやってきた。
この方が私たち姉妹のお姉ちゃん。
「エリナさん、お呼び立てして申し訳ありません。
是非に見ていただきたいことがございまして。」
もう我慢できない、お姉ちゃんに会えた喜びで心がはちきれそうだ。
はちきれた心で地面から私の根っこが抜けちゃった。
あっ、私の姉妹、私のお友達もそうなのね。
もうっ、このまま踊っちゃえ。
私は姉妹と手を繋いで踊り出した。うれしい気持ちとありがとうの気持ちを伝えるために。
「うれしいなぁ~♪、うれしいなぁ~♪、ありがとう、お姉ちゃん♪、うれしいなぁ~♪、うれしいなぁ~♪」
「あらあら、エリナさんに会えて本当にうれしいのね。
あなた方の母親、いえ、お姉さまですものね。」
「えっ、私がこの子たち、この根っこが抜けて踊り出した若木の親だというの。」
「正確には親ではないのですが、この子たちが生まれるきっかけとなったのはエリナさんで間違いなさそうです。」
「私たちがこの子たちの生まれるきっかけ。」
「そう、この子たちはトレントの子供なんです。
ここに何があったか、覚えていませんか。」
お姉ちゃんはおばさんの周りをきょろきょろ見渡して、そして、おばさんが作った首飾りが落ちていることに気が付いたみたい。
「首飾りに付いていた、その葉っぱからこの子たちが生まれたんです。」
お姉ちゃん、本当にびっくりしているみたい。
「トレント族って、こんなに早く成長するものなんですか。」
「はい、森に魔力が満ちていればいるほど早く成長するようです。」
あっ、ちゃんとお礼を言わなきゃね。
でもこのうれしい気持ちを抑えきれないわ。
踊りながらでもいいよね、お礼を言うのは。
「ありがとう、エリナさん。私のお姉様。
私は私が生まれるきっかけとなった人族の森で暮らしたいわ。」
「ありがとう、エリナん。俺の母ちゃん。
この森で大きくなって、きっと役に立って見せるぜ。」
「ありがとう、エリナさん。
私の大事なお姉ちゃん。どこまでもついて行くわ。」
「トレントさん、これはどうしたことなの。」
お姉ちゃんは私たちの言葉にびっくりしているみたい。
「みんな、それぞれやりたいことがあるみたいですね。
トレント族は100歳ぐらいまでは自由に動けるし、妖精の魔法で人族にも化けられるわ。
何といっても、人族で言う風、水、土の魔法が上手なんです。
魔力もあふれるほどいっぱい持っているし。」
「私はお姉さまが暮らしていた人族の森に行くの。そこで根を張りたいわ。」
「俺はここに居るぜ。いつでも母ちゃんがここに戻ってこれるように、魔の森を大切にするんだ。」
「私は大事なお姉ちゃんにどこまでもついて行くわ、そして、お姉ちゃんの手伝いをするの。」
「あっ、俺も父ちゃんのそばに行くぜ。
エルフがひとり人族の森に居るのは寂しいだろうし。
時々励ましてやんねぇとな。」
「僕はここに残るよ。
お父さんがこの森に帰って来た時に誰の出迎えもないとかわいそうだもんね。」
「うふふふふっ、皆さんはもう将来にやりたいことが決まっちゃったのね。
好きにして良いんですよ。
エリナさん、人族の森に行きたいトレントを送り届けてもらえますか。その後は好きに生きていくでしょう。
それとあなたと一緒に居たい者はそのように希望をかなえてあげてくれませんか。
残りのトレントはこの森で預かります。時々は会い来てやってくださいね。」
「どうしようか、皆の希望はかなえてあげたいけど。
まだ生まれたばっかりの若木だし。
そっちこっちに連れまわすのはかわいそうな気がするわ。」
お姉ちゃん、私を連れてって。
絶対迷惑は掛けないし、一杯お手伝いもするから。
「希望を持って、前に進もうとする者がいるのです。
その希望をできるだけかなえてあげるのも、また、この子たちのお姉さまの役割ではないでしょうか。」
「そうよねぇ。わかったわ、皆の希望をかなえましょう。」
「やったぁぁぁ。ありがとう、お姉ちゃん。」
と、皆でお礼を言った。
うれしい、一緒に行ける。うれしい、ずっと一緒だ。
「それじゃ、私から誕生した記念の贈り物をします。受け取ってもらえますか。」
「お姉ちゃんからの贈り物? 」
もう、もらったよ。喜びの水を。
それで私たち姉妹が生まれてきたんだもの。
お姉ちゃんはさらに何かくれるというの。
「皆がトレントさんじゃわからないから、名前を差し上げます。
気に入らなかったら、言ってね。別のを考えるから。」
「えっ、名前がもらえるの。私たちだけの。
本当に? トレント族としては初めての名誉よね。
今のところ、ひとまとめでトレントだものね。なんかすごいうれしい。
生まれてきてよかった。ありがとう、エリナさん。お姉ちゃん。」
「まずは、エルフの彼から生まれた君たちからね。
人族の森に来るのはセルシオ君。」
「セルシオかぁ、まあ、いい名だな。ありがとう。」
「ここに残るのはクルロ君。」
「エリナさん、ありがとう。
クルロか。行くろ、来るろ。訳が分からなくなっちゃった。」
「次は私のトレントさんたちね。
人族の森に行くのはブリアンダちゃん」
「私がブリアンダね。ありがとうございます、お姉様。」
「魔の森に残るのがデルフィナちゃん。」
「俺がデルフィナだぜ、皆よろしくな。」
「最後に、私に付いて来てくれるのがカタリナちゃん。」
「私がカタリナね。良い響きね。カタリナ。
ありがとう、エリナさん、私のお姉ちゃん。」
「一杯楽しいことをしようね、カタリナちゃん。」
「はい、お姉ちゃん。
一杯、贈り物をありがとう、本当にありがとう。
次は私たちがお姉ちゃんに何か贈らなきゃね。」
「うふふふっ、私はすでにもらっているわよ。
一人っ子の私がどうしても欲しかったもの。
そう、3人の妹たちを。
皆、贈り物をありがとう、本当にうれしいわ。ありがとうね。」
おわり
本編の「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」は1/27公開分より3つのパーティに分かれて行動することになりました。
「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」(公開継続中)の本編はシュウを中心として、月の女王に会いに行きます。
「優しさの陽だまり」(1/27より公開予定、執筆は終了済み)はエリナを隊長としてエルフ王族の寿命の調査にエルフの王都に行きます。
もう一つ「アラナの細腕繁盛記 越後屋の守銭奴教繁盛記」(1/27より公開予定、執筆は終了済み)は駄女神さんを中心とした風の聖地の運営に奔走します。
また、「死神さんが死を迎えるとき」という物語を公開しています。
この物語も「聖戦士のため息」本編の別伝になります。
本物語や「優しさの陽だまり」の前提ともなっていますので、お読みいただけたらと思います。
本物語をシュウとエリナのサーガの一遍としてお楽しみいただけたら幸いです。




