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対戦開始

「はっ……はっ……はっ」


 広大な敷地を利用して、ソラは朝の日課にしているランニングを行なっていた。


 対戦相手の通知が来てから今日で3日目。

 ソラの頭はランキング戦の事で埋め尽くされていた。


 あのサクヤ・フリージアにどうすれば、今のソラが勝てるのか。


 ランニングのゴールが見えたソラは、恐れを振り切るようにペースを上げた。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「さぁ〜〜〜ッ!!とうとうこの日がやってきましたッ!この人を楽しみにしていた人も多かったでしょう!1年生ながらも2つの上級魔法を操る天才!いや天才という言葉すらも生温いッ!水のフリージアが産み落とした鬼才!サクヤ・フリージアの登場だぁ〜〜ッッ!!!」


 割れんばかりの歓声とともに、サクヤが片方のゲートから姿を見せる。

 観客席はほぼ満員。

 これだけの大観衆から注目されている中、サクヤは少しも気持ちを乱していない。


 このように、注目度の高い試合には実況がつく。

 そして今回注目されているのは誰か、言うまでもない。


「続きまして反対ゲートから登場したのはソラ選手!使える属性は火属性だそうです!水と火……この二つは相対属性ですが、サクヤ選手を相手にソラ選手はどう立ち向かっていくのでしょうか!?まもなく試合が始まりますッ!」


 相対属性というのは、互いに打ち消しあう属性同士の事だ。

 両者の魔法がぶつかり合った場合、同じ威力の魔法ならば相殺され、どちらかの威力が高ければ一方的に打ち勝つ。


 つまり、魔法の力量差がモロに出るという事だ。

 ソラにとっては絶望的とも言える。


 ソラは3日前と同じように開始線に立ち、周囲を見回した。

 目に入る溢れんばかりの観客達。

 彼らはサクヤの実力を見にきたのだろう。


 サクヤが(・・・・)勝つ事を(・・・・)前提(・・)()して(・・)


 もし今この場で賭けをしたなら、ソラの賭け金(オッズ)は凄い事になりそうだ。


「ソラ。前にも言ったけど、私は手加減しない。本気で貴方を倒すわ。例え……ソラが初級火魔法(ファイアーボール)しか使えないのだとしても」


 その言葉を聞いて、ソラは小さく目を見開く。

 そして、自嘲気味に薄く笑った。

 ただ……その笑みは自嘲以外のものも含んでいた。


「なんだ……知ってたのか」


 そこまで知っておきながら、目の前の天才(サクヤ)は手加減しないと言う。

 ソラにはそれが堪らなく嬉しかった(・・・・・)

 エンドール家では、落ちこぼれの出来損ないとして、時にはいない者のような扱いを受けていたソラ。

 対戦相手としてではあるが、サクヤはちゃんとソラを見てくれているのだ。

 これが喜ばずにいられるだろうか。


「だけど、」


 ソラを見てくれたサクヤに対し、ソラもしっかりとサクヤを見据える。

 途方もなく高い……高い壁。

 でも超えるしかないのだ。


「勝負はやってみないと分からない」


 ソラはキッパリと言い放つ。

 強がりでも、自分に言い聞かせるわけでもなく、純然たる事実として。


 サクヤは何も答えず、好戦的な笑みを浮かべた。


「さあさあッ!両者準備が完了したようです!順当にサクヤ選手が叩き潰すのか!はたまたソラ選手が奇跡の勝利を収めるのか!それではカウントダウンッ!3!……2!……1!……試合開始ッ!!!」


 開幕のゴングが鳴り響いた。


火球(ファイアーボール)ッ!」


 それと同時に、ソラは横に走りながら火球(ファイアーボール)を同時に5個撃ち出す。

 魔法の同時発動は、高度な技術である。

 学院でも……ましてや1年生で使える者は僅かであり、ソラの鍛錬の賜物だ。

 だが、高度(・・)程度の技術をサクヤが使えないはずがない。


水球(ウォーターボール)


 ソラが横に走りながら魔法を展開するのを、開始線から一歩も動かず観察していたサクヤも、魔法で応戦する。


 両者の中央で5個の火球と水球がぶつかり合い相殺される。

 その結果、大量に発生した水蒸気がお互いの姿を覆い隠した。

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