表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

エリクラル魔法学院入学試験

説明回です。

 リンダ達と別れたソラは、エリクラル魔法学院までの道を歩いていた。

 その人差し指の先では、爪の先ほどの大きさをした火の玉を弄んでいる。


 これは決して余裕をかましているわけではなく、ソラなりの緊張ほぐしである。

 これをする事によって今日の調子がわかり、何より落ち着くのだ。


 と、ソラは立ち止まって出していた火の玉を握りつぶすように消し、前を向く。

 その先には、エリクラル魔法学院の門がソラを歓迎していた。



 ここで、エリクラルやカラドーナと言った魔法学院の存在意義について少し話しておこうと思う。


 この世界では、ほとんどの人が体内に魔力を持ち、魔法を行使することができる。

 まあ魔法が使えると言っても、少量の水が出せたり、そよ風を起こせる程度の者が多いのだが。


 だが、初めはその程度のことしかできなくても、鍛錬を重ねる事により、才能を開花させる者もいる。

 魔法学院とは、そういった者達を育成する場所なのだ。


 魔法学院を卒業した後はいろんな進路が用意されている。

 例えば、貴族のお抱えや兵士といった戦闘を生業とする者だったり、自身の魔法を利用して、生産系の職種に就く者もいる。


 しかし多くの者は、ある一つの職種に憧れて魔法学院の門を叩く。


 それが、PMBP(プロマジック・バトル・プレイヤー)である。


 PMBPとは、世界でもトップクラスの実力を持ち、プロとしてMB(マジック・バトル)と呼ばれるルールありでの一対一の決闘を行う者達の事である。


 名のある貴族、国有数の商会、時には国そのものがスポンサーとなり、大きなコロシアムで大観衆に囲まれて大迫力の試合を行うのだ。


 飛び交うド派手な魔法、高次元な駆け引き。

 それらは暴力的なまでの魅力で見る者達をことごとく虜にする。


 ソラも幼い頃に一度見に行ったことがあるが、この世の興奮が全てここに集まっているのではないかと思うほどに熱狂的な場所だった。


 また、生で見るほどの迫力はないが、この闘いはテレビ中継もされているため、テレビに映る選手達に憧れを抱く少年少女は多い。


 さらに、MBはプロ同士だけで行われるのではなく、学生同士でも行われる。


 その際たるものが、毎年一回開催される五芒星祭(ペンタグラム・フェスティバル)だ。

 今ソラが暮らしているのはリンドヘルム王国という国なのだが、五芒星祭とはこの国を含む5ヶ国にある魔法学院に所属する生徒の中で最も強い者を決める大会である。


 それぞれの国は、魔法学院を二つずつ所有しており、まず各学院内で代表者を選び、選ばれた代表者が五芒星祭に出場できるのだ。

 そしてその最強の名を勝ち取った優勝者は、本来受けなければならない厳しい試験を受けずとも、PMBPになれる資格を与えられる。


 つまり、自分がPMBPとして将来華々しく活躍している姿を思い描く者達は、皆必死に五芒星祭優勝を目指す。

 たとえそれが、長く険しい道であったとしても。


 それほどに、PMBP達は人々を魅了してやまないのだ。


 実は、ソラもこの夢を思い描いている一人であった。


 エンドール家を追い出されたからというもの、ソラは自身の内に燻っているナニかをずっと感じていた。


 仕方のない事だと理解する反面、自分の力はこの程度ではないと。

 自分を捨てた人達を見返してやりたいと。


 これがエンドール家の血なのだろうか。


 そのナニカは最初小さな種火程度だったが、日を追うごとにメラメラとソラの内で燃え上がっていた。

 そんな時にエリクラル魔法学院を知ったソラは決意する。



 代表を勝ち取り、五芒星祭で優勝する事を。



 ソラは逸る心のままに足を動かし門をくぐり、その先にいた人にはっきりとした声で言い放った。


「入学試験を受けに来ました!」


「えっと……ここは裏口だから、正門の方へ回って頂けますか?」


「……はい」


 走って正門の方に回るソラの顔は、茹で蛸のように真っ赤だった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 正門の方までやってきたソラは、他の受験生と共に列に並んでいた。

 前方では、同い年くらいの人達が的に向かって何やら魔法を放っているのが見える。


 恐らくあれが入学試験なのだろう。


 殆どの人は、的まで届かなかったり、外したりと苦戦しているようだ。


 ここにはソラのように、小さい時から魔法の練習をしてきた者なんてほとんどいないため、魔法を使いなれていないのだろう。

 まあ入学するだけなら、魔法が使える事さえ示せば入学できるのだから、的に当てられなくてもそれほど問題はない。


 では何故、こんな的当てのようなことをしているのかと言うと、入学者の所属するクラスを決めるためである。


 魔法学院では、全ての生徒に対して同じように教えるのは非効率的だという考えから、生徒をその実力でクラス分けしている。


 クラスはSからEまであり、Sが一番優秀なクラスとなっている。

 ただし、入学してすぐの頃は大した差がないので、クラスの変動なんてよくある事だ。

 なので、あまりクラスについて気にする必要はない。


 ……というのが普通の考え方なのだが、ソラにはこれが当てはまらない。


 何故なら、ソラはどうしてもSクラスに入って、ある特典を受けなければならないからだ。


 その特典とは……学費の免除である。

 なんと、Sクラスに所属している生徒は学費が全額免除になるのだ。


 もしAクラス以下になってしまった場合、クラス替えのタイミングは3ヶ月に一度なので、入学してから3ヶ月分の学費を払わなければならず、今のソラの持ち金では少々厳しい。


 学院に入学すれば、お金を稼ぐ時間はあまり取れなくなるため、Sクラスに入っての学費免除はソラにとって必須条件なのである。


「次の方どうぞー」


 試験といっても魔法を一発撃って終わりなので、すぐにソラの順番になった。


 ソラは指定の場所に立ち、的に向き合う。

 そして紙とペンを持った男性がその横に立った。


「一番自信のある魔法を的に向かって撃ってくれ。その結果によって君のクラスを決定する」


「分かりました」


 ふぅっと目を瞑ってソラは大きく深呼吸をした。


 大丈夫、周りの人達を見た限りレベルは高くない。

 十分にSランクを狙えるはずだ。


 ソラはキッと目を見開き、その呪文を唱える。


火球(ファイアーボール)ッ!!」


 ゴォッと頰を焦がす熱と共に打ち出された火球は、寸分狂わずに的を撃ち抜く。

 的を壊すことは叶わなかったが、ソラの火球は大きな焦げ跡を残した。


「ほぉ……。魔法こそ初級火魔法(ファイアーボール)だが命中精度、威力共に素晴らしい。君は将来有望だな。おめでとう、君はSクラスだ」


「ありがとうございます!」


 よしっとソラは小さくガッツポーズする。


 他の生徒達の様子を見て大丈夫だと思ってはいたが、無事に当初の予定通りSクラスに入れた事でソラは安堵の息を漏らした。


「……ソラ?」


 突如後ろから名前を呼ばれて、ソラは振り返る。

 そして声の主と目があい、思わずソラは固まった。


 その時のソラの気持ちを代弁するなら、恐らくこうなるだろう。


 なんでこいつがここにいるんだ?と。

分かりにくいところ、疑問点があれば教えて頂けると助かります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ