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第26話 城へ帰ろうー1

「――それじゃあ、ちょっとここで待ってなさいよ。すぐに戻ってくるから」


「はい、分かりました」


「まったく、どうして私がこんなことを……ここの魔物たちとは数年間顔も合わせていないっていうのに……気まずいわ……」


 小声で不満を漏らしながら、ストロ君を抱えて城下町(村)に向かっていくベルフェ。

 それを、城下町から少し離れた位置にある木陰から見送る私。


 数分前、ランドたちと別れたあと、お城に戻る前にストロ君を送り届ける必要があったため、一度城下に寄ることになったのだが、私はローブを彼らにあげてしまったので姿を見せることができなかった。


 ……必然的に、ベルフェが向かう事になってしまったのだ。

 

 城下の魔物と会うのには少し抵抗があるようだったが、なんだかんだ言いつつもちゃんと送り届けに行ってくれる辺り、人間が出来ている。

 ……ああ、いや、悪魔が出来ている。


「…………」


 ……グレシードから逃げたり、戦ったりしている時は興奮状態だったので平気だったが、こうして考えが途切れると、傷付いた右腕が痛む。

 お城に帰ったら治してもらおう……。



 それから5分もしない内に、ベルフェは戻ってきた。


「……送ってきたわよ。あのオークの子の家がどこなのか聞いて回ってたら、案の定、注目の的になったわ。『今日はどうしてここにいらしたんですか?』とか『この子がなにか不躾なことをしでかしましたか!?』とか。どうしてあんなに怖がられなきゃいけないのかしら」


「森に大穴を空けたりしてるからですよ……」


「ああ、なるほどね。私はてっきり、丘の周りにとてつもない威力の結界を貼っているからだと思ったわ」


「多分それもです……解除した方がいいですよ」


「セキュリティは保っておきたいわ。まあ、威力は弱めましょうか。さて――野暮用も済んだことだし、城へ行きましょう」


 そう言って、ベルフェは赤いバチバチした魔力を背中に―― 

 ――ん、待てよ。

 私が森でストロ君に、サニールージュさんという方を名乗って【黒い霧の魔力】(デラウェア)を見せた時、ストロ君は確か、サニールージュ様の魔力は赤くてバチバチしてる――って言っていたような。


 そういう視点で考えてみると、ベルフェは私と背格好も近いし、もしかして……。


「あの……ベルフェさん」


「なに?」


「ベルフェさんの以前のお名前って『サニールージュ』だったりしません?」


「違うわよ」


「…………」


 ……違った。


「それは私の妹の名前だけど、どうしてカゼコが知っているの?」


「会ったことはないんですけど、一度サニールージュさんに間違えられたことがあって、それで」


「ああ、そういうことね」


「ベルフェさんの妹さんって、一体どんな方――」

 

 ――なんですか。

 私がベルフェにそう聞こうとした時、一陣の風が吹き抜けた。


 その心地のいい風で私の髪は揺らぎ――そして、ドロッと、制服の一部が溶けた。


「――えっ!? えっ!? 嘘!?」


「カゼコ、アンタ加護は受けてないの?」


「カゴってなんですか!? そんなの受けてません!」


「……ああ、だからあのローブを着てたのね」


 制服は少しづつ、しかし確実に生地を減らし続けている。

 まずい。

 あまりにもまずい。

 このまずさはグレシードの非じゃないぞ。

 いずれは両手だけじゃ隠しきれなくなる。


「どっ、どどどうしましょう!? このままじゃ服が……」


「ここにいたら解けていくだけよ。城に戻るしかないわね」


 ほら、とベルフェは私に手を差し出す。


「この恰好で飛んで帰るんですか!? 誰かに見られたら終わっちゃいません!? それに、この状態で片手をどかすと、色々と(あら)わに……」


「それくらい我慢しなさい。私なんか全裸を見られてるんだから」


「……あ、そうでしたね」


 恥ずかしさのレベルが違った。

 私がベルフェの手を取ると、彼女は羽を拡げて空へ舞い上がった。


「あの! 出来るだけ高く飛んでください!」


「いいの? 怖いんじゃなかったのかしら?」


「……背に腹は代えられません!」 

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