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第21話 戦闘終わりのあれこれー1

「ベルフェさん……」


 ……取りに帰ったはずの槍は持っていない。ということは、今の赤い雷はただの魔力噴出なのか。それだけでこんな落雷みたいな電気が発生するなんて……。

 地面が焦げてるぞ……。


 ベルフェが落とした雷に怯えている二匹のグレシードは、森の中に戻ろうと後退を始めた。それを見たベルフェは、二匹を指さして言う。


「まだよ、私がいいと言うまでおとなしく待ってなさい」


「……クゥン」


 ベルフェに咎められ、その場でおすわりをするグレシード。

 ……しょげた犬みたいな鳴き声だった。初めてじゃないか? 濁点の付いていないこの子たちの鳴き声を聞いたのは。


 ベルフェは羽をはばたかせて穴に降りると、気絶したドノウの首元を掴んで持った。そして同じようにランドも掴むと、触手では引き上げられなかった二人を簡単に穴の外まで運び、私の足元に置いた。

 ランドは無言のまま私と目を合わせたので「こっちを見られても、私も状況がよく分かっていないんですよ」と、そんなアイコンタクトを交わす。

 そんな私たちを尻目に、もう一度穴に降りていくベルフェ。今度は触手が巻かれたグレシードの身体を手で支え、持ち上げる。


「……アンタが一番重いわ。そんなんじゃ獲物に追いつけないわよ。もう少し体重を絞りなさい。あとね、ああいう時は鳴き声の一つでもあげて仲間に無事を知らせなきゃダメよ。分かった? 返事は?」


「……ガウ」


「よし。良い子ね。それじゃあ上まで連れて行ってあげる」


 そんな小言を挟んだ後、地上に戻ってきたベルフェはグレシードを地面に降ろした。


「カゼコ、もうほどいていいわよ」


「あっ……はい、分かりました」


 言われた通りに、グレシードに巻き付けていた触手をほどく。


「さてと――アンタたち、もう行っていいわ。食べ物の好き嫌いがないのはいいことだけど、よく分からない人型には手を出すなと普段から言っているでしょ。お腹が空いているんだったらグレモミーでも狩って食べなさい。この森で生きていきたいんだったら、健全な食物連鎖をしなさいよ!」


「キャイン!」


 ベルフェが一喝すると、グレシードは犬というよりも、もはや小型犬のような甲高い鳴き声をあげて、森の中へ一目散に去っていった。

 ……グレモミーってなんだろう、気になるな――というか。


「…………」


 助かった……のか?

 助かったよね? グレシードはもういなくなったわけだし……。


 あぁ――よかった。

 ここまではっきりと安堵の気持ちを感じるのは初めてかもしれない。


 全身の力が抜けていくのを感じる。

 いままで張り詰めていた緊張感が(やわ)らぐのを感じる。


「…………」


 ……なんだろう。この感情は。

 


「おつかれさま、カゼコ」


 赤い魔力で形どった背中の羽を消し、私の元に歩み寄ってくるベルフェ。


「お世辞にも【黒い霧の魔力】(デラウェア)を使いこなしてるとは言えないけど、それでもかなり奮闘したと思うわよ。褒めてあ――」


 この世界における、私の初めての友人がそれを言い終える前に――


「ベルフェさん……!」


 ギュッ――と。


 私は、自分でも不思議なくらい自然に――彼女に抱きついていた。

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