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第20話 覚醒 黒い霧の魔力ー5

「……まあ、俺の重量については否定しねぇけどな、文句は言うぜ」


 そう静かに前置くと、ランドは大きく息を吸い込み、言った。


「この場合はお前の魔力が貧弱なんだよ! 黒い魔力で造った腕で人間一人持てねぇのか!」


「否定します! この魔力は本来とてつもなく強力なはずです! まあでも、肯定もしておきましょうか! ええ、貧弱ですとも! だって使い慣れていませんから! 勝手にフワフワ出てた頃の方がずっと強力でしたよ!」


「逆ギレかよ! とりあえず宙吊りにしてるコイツを放せ! そうすりゃ魔獣二匹に腕が二本で対等になる!」


「そんなことできるわけないでしょ! 放したら落っこちます!」


「落っことすしかねぇだろ!」


「駄目です! たとえエゴだろうとワガママだろうと――奪う必要のない命をないがしろにするのは、一回たりとも許されることではないんです!」


「それでお前が死んだら本末転倒だろうが!」


「……反論できません!」


「ハハッ! いっそ清々しいな! いいぜ、お前がいなきゃ俺たちはとっくに魔獣に食われてただろうし、好きにしろ! これで万が一生き残れたら【第三種】の魔物への考え方も変えてやるよ!」


「あ、言いましたね! その言葉忘れないでくださいよ!」


 残った一本の触手を近くに戻し、私はグレシードたちへと向き直る。

 もう、いつ飛びかかられてもおかしくない距離だ。


「…………」


 さて、威勢よく仕切り直したはいいが……勝てそうにないな。やっぱりあれは慢心だったようだ。触手も一本しか残ってないし、おまけに柔らかい。タコやイカくらいの数が出せればよかったんだけど、今は四本が限界らしい。

 せめて弓があればなぁ。いくらか経験がある分、剣や槍よりは武器として扱えると思う。もし使えていたら有効な牽制になったかもしれない。とはいえ、生き物を撃った事はないのでなんの役にも立たなかった可能性も大いにある。


「グウゥ……!」


 ――グレシードは既に、触手の射程距離内に入っている。

 勝ち筋があるとすれば、先手を取るしかない。


「とうっ!」


 渾身の力で振るった触手はあっさりと避けられた。今回は、そこを狙う二本目もない。着地したグレシードにダッシュで距離を詰められる。触手の回収も間に合いそうにない。


 あぁ、私がもっと【黒い霧の魔力】(デラウェア)をうまく操れればなぁ。ただ触手を振るだけじゃなくて、脚とかに巻き付けて体勢を崩したりできていれば……。

 反省しよう。それを活かす次の機会は――もう訪れないんだろうけど。


 グレシードは大きく口を開け、その鋭利な牙を私に突き立て――


 ――バチィッ!


「……ッ!」


 乾いた破裂音と共に、私とグレシードの間に赤い雷が落ちた。

 それだけで何かを察し、その場で姿勢を低くするグレシード。


 ……上。上から落ちてきた。

 私はおもむろに空を見上げる。


 その視線の先――空中に、鮮やかな紅い羽を拡げた少女がいた。

 

「――アンタたち、今回はここまでよ。仲間を助けてもらったのに、それに気付かずに狩りを続けるようじゃお里が知れるわ。……まあ、アンタたちの故郷はここなんだけど」


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