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第14話 ただし追いかけられている場合は別-1

グレシードの包囲を突破して走り出したランドの後ろに、ストロ君を(かつ)いだドノウも続く。

 周りを囲まれているという最悪の状況からはなんとか抜け出せた……しかし……。


「ちょっ……ランドさん!? どうして私まで!?」


 私を抱えて走るランドに、当然、私はそう問いかける。

 

「あぁ!? あの状況で置いていけるわけねぇだろ!」


「でも、私のことを魔族だと思っているんでしょ? だったら助ける必要なんか……」


「捨てライシードと同じだ! 余計な情が湧いたんだよ!」


「捨てライシード!? 捨てライシードってなんですか!?」


「街とかによくいるだろうが! あの魔獣共を小さくしたようなヤツだよ! 人によく懐くから、ペットとして飼ってる奴も結構いる! だけど無責任な野郎が飼えなくなったからって街に放したりして、野良ライシードになったりするわけだ!」


「なるほど! 走りながら長々と喋らせてごめんなさい! よく分かりました!」


 ……うん。理解できた。

 捨て犬か、要は。


 ……でも、なんにせよ、まさか助けられるなんて思わなかった。私を抱えていれば動きは鈍るのに、それでも助けてくれるなんて。

 根はいい人たちじゃないか。やっぱり。


 ……だけど、助かるかどうかは、まだ分からないな。


 私は首を曲げて後方の状況を確認した。

 グレシードたちはやはり、猛然と追いかけてきている。足元が悪く、直線的な空間が少ない森の中では、奴らはトップスピードで走ることはできないけど、それはこちらも同じ。ストロ君を背負っているドノウはかなり息を切らしていて、私を抱えているランドも、本来の速度では走れていないのだろう。このままでだと、追いつかれるのは時間の問題か。


「……私を抱えたままだと逃げきれませんよ。ドノウさんも辛そうですし、ストロ君をランドさんが背負って逃げた方が……」


「いや! 申し訳ないけど、僕が君を背負って走るのは難しい!」


 と、ランドの横に追いついたドノウが口を挟む。


「どうしてドノウさんが私を担当することになるんですか! そうじゃないでしょ!」


「ああ! 君はランドじゃないと抱えられないからね!」


「その言い方だとまるで私が重いみたいじゃないですか! 私は重くありませんけど!?」


「だったらそのままジッとしてなよ!」


「だからそういう問題じゃなくて! 私を置いていってくださいってば!」


「置いていかねぇって言ってんだろ!」


 呼吸が荒れ、会話が困難になってきたドノウに代わり、ランドが怒鳴った。


「いいか、俺たちがここでお前を切り捨てていくような奴だったら、オークのガキも殺してから街まで運んでるぞ!」


「いい感じに流そうとしてますけど、それとこれとは話が別です! 誘拐しようとしたのは事実でしょ!」


「未遂だからセーフだ! それに、ここでこのガキを助ければチャラになるだろ!」


「なりません! 常識的に考えてアウトです!」


「うるせぇ! 息が切れるからもう話しかけんな!」


 そう言って、走ることに集中するランド。しかし、いくら足を踏み出したところで、いくら腕を振ったところで、自然に生きる狩人から人間が逃げられるはずもない。グレシードはもう、すぐそこまで迫っている。

 ……やはり城までは遠すぎた。どれだけ甘く見積もっても届かない。


「…………」


 霧が、出ればいいのに。

 毎回、毎回、意識しなくても出ていたのに。城から落ちた時も、ストロ君を捕まえた時も、ベルフェの槍に貫かれそうになった時も、出ていたのに……。


 ……いや、まあ、出なかった時もあったか。魔王と魔力噴出の練習をしていた時や、ストロ君を自力で捕まえようとしていた時、そして、ランドとドノウをグレシードから守ろうとした時にいたっては、出現していた霧が突然消えた。


 なんだ? 切羽詰まっていないと出てきてくれないのか? しかし、だとしたら腕を怪我する程度では切羽詰まっていないということになるわけだが、転びそうな時にも出てくる以上、腕の切り傷は十分な危機のはずだ。

 とにかく、どうにかしないと、どうにかして私が全員を助けないと――


 ……あ。


 助けないと――か。

 今、自然にそんな思考が頭をよぎっていた。我ながら傲慢だな、私は今、二人に助けられているというのに。

 ……どうやら、魔王から現実離れした力を預かって感覚がズレていたらしい。修正しなくては。


 人間と魔物の間にある問題を解決する術を、明確な言葉にするのは難しいが、今現在、私がそれを言い表すとしたら――

 ――共存。

 頼って、頼られる。 

 信用して、信用される。

 助けて、助けられる。

 私がこの世界で目指す到達点は――多分そこだ。


 だから、そのために。


 私を信じてもらえるかは分からないけど。

 私なんかに頼ってもらえるかは分からないけど。


 ――まずは私が。


 積極的に人や魔物を信じて――全力で頼らせてもらおうと思う。


「……ランドさん」


「なんだ……?」


 全力疾走により走り疲れているランドは、最低限の言葉で返事をした。

 こちらも簡潔に伝えるとしよう。


「――とっておきの策があるんです。乗りませんか?」

キャラクタプロフィール、及び世界観の補完コーナー

ー14ー

【ランド】

年齢 24歳

身長 182cm

体重 89kg

特技 手先が器用なので細かい作業全般

種族 人間

所属 ギルド

魔力 -


武具や薬品に使用する素材の採集を生業とする大男。幼少期には様々な土地を巡る冒険者を目指していたが、旅をするうえでは避けられない魔物や盗賊との戦闘を嫌い、現在の職に就いた。

普段は安全が保障されている地域でしか仕事をしないのだが、コワモテの大男である彼は、例によって心は優しい系の大男であるため、ある日ギルドで出会った美女の「この仕事を誰かにこなしてもらわないと、私、ひどい目に遭わされるんです」なんていう、見え見えの芝居を真に受け、嫌がるドノウを引き連れ【第三種】の領地へ魔物の生け捕りに来た。

困っている人を放っておけない漢ではあるが、同時に悪人を見抜けない漢でもある。

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