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「ふう、これで携帯は復活したな」
「そうだね。 よかった、陸君とこれでまた連絡取れる」
携帯を買って家に帰り姫花は俺の新しい携帯を見てホッとしたような感じでそう言った。
海と空にも新しく携帯を買ってきたと伝えるとちゃんと安静にしてる? とか姫花と2人きりだからって行き過ぎた行為はしないようにと注意を促された。
「海ちゃんと空ちゃんも喜んでた?」
「ん? ああ、しっかり安静にしてろってさ」
「そうだよ、陸君は怪我人なんだから安静にしてなきゃダメ。 何かあったり、して欲しい事あったら私に言って?」
そうは言われても…… 別に動けないわけじゃないし。 寝たきりだったら何か頼むけど。
ていよりなんか頼まれたいのか姫花はウズウズしているような気がする。
「あのー、姫花?」
「何? 何かあった?」
寝ている俺の横に座ってジッと見てられるとソワソワするんだけど? と言いたかったけど……
「ええと…… とりあえずお腹空いたかな?」
「それなら私何か作るよ! あ、キッチン貸してもらえるかな?」
「構わないよ」
朝ご飯抜いていたし母さんは姫花がいるならとどこか出掛けてしまったしな。
「ちょっと待っててね! 今作ってくるから」
姫花はそう言って部屋を出て行った。 食材の場所とかもわかるのかな? 姫花は初めてだろうし。
階段を静かに降りてキッチンをそっと見てみる。 姫花は調味料やら冷蔵庫の中をあれこれ見ていた。 そして何やら探している。
「わッ! 陸君いつからそこに!? 」
姫花に気付かれてしまった。
「今来たとこ。 何か探してるのか?」
「ダメだよ寝てなよ陸君は!」
「いや、風邪とかじゃないからさ。多少は大丈夫だよ。 それで何探してたんだ?」
「あ…… お米はどこかな? と……」
「ああ、それな、ちょっと離れた所に置いてるからわかんないよな。 あっちのデカい引き出しの中に入れてんだよ」
米袋を俺が持ってこようとすると……
「わ、私が持つよ! 陸君は休んでて」
「これ使い始めたばかりで重いんだけど? って、ひ、姫花!?」
「あ、あれ!? きゃッ!」
重いと聞いて姫花が思い切り持ち上げたせいか袋の蓋が開いていたから斜めに傾いてしまい俺が水平にしようとする前に米がバラっと足下に溢れる。
「あわわわわッ、ご、ごめんなさい! 私なんて事を」
「あ、あはは…… いや、大丈夫。 とりあえず落ちた米から使っちゃおう、洗えばなんて事ないからさ」
「ごめんなさい……」
「そんな気張らなくてもいいからさ、いつも通りでいいよ。 俺の事重病人と勘違いしてないか?」
看病するって気合いが空回り気味の姫花は少しシュンとしながら床に落ちた米を拾う。
「はあ、陸君に失態を見せちゃった。 だけどお料理で汚名返上するから任せて!」
「あ、ありがとう。 じゃあ俺はリビングで待ってるよ」
姫花のやる気に少し圧倒されたが海と空とは違い慣れていないので近くにいる事にした。 そうしているといい匂いが漂ってきた。
姫花は俺の所へニコニコとしながら料理を運んできた。
「どうぞ! おじや作ってみたけど。 薄味でスッキリ出来るようにしたから風邪でも食べやすいよ! 風邪じゃないけどね、あはは」
姫花は少しテンパり気味だったので風邪用のご飯でも作っちゃったのかな? とか思ったけどなんか美味しそうだし食べてみよう。
「じゃあいただきます」
スプーンですくい一口食べると美味しい。いろいろ具材が入っているけどどれもくどくなくスッキリした味付けだ。
「美味しい……」
「本当? よ、良かったぁ」
俺から美味しいを聞いた姫花は安心したのか満足したのか変にさっきまでの落ち着きのなさは収まったようだ。
「姫花は食べないの?」
「私胸がいっぱいで…… じゃなくてお腹空いてなくて。 あ、お弁当は作ってきたんだった! 陸君にこれ食べて貰えば良かったんだった」
「あ、弁当持って来てたのか」
「作らなくても良かったよね…… 私陸君の役に立ちたいって思ってるのに空回りだ」
はぁ〜と姫花は溜め息を吐いた、でも姫花が一生懸命看病してくれた事はわかる。
「でもさ、姫花の出来立ての手料理食べれて良かったよ。 それとその弁当一緒に食べないか?」
「え…… うん! やっぱり私ってチョロいね。陸君にそう言われただけでもうモヤモヤ吹き飛んじゃったよ」
パァッと笑顔になり姫花は弁当を広げ俺に食べさせた。




